両面神社
 
 
 林道栃本線沿いのこの地点から分岐する登山道を、十文字峠方面に登っていきます。
 
 登山道を10分ほど上ってくると、両面神社の鳥居が現れます。
 
 鳥居をくぐると、社殿とその手前に置かれたお犬様が見えてきます。
 
 社殿に向かって右手に置かれたこちらの像が阿形。
 太目に作られた首や前脚など、全体的に肉付きが良く、どっしりとした印象の造形となっています。
 
 お顔の造形も、凛々しい表情に髭や毛並み、口の中の歯なども精細に施されています。表情、そして体つきなども含め、神獣的な表現に重きを置いた印象となっています。
 
 斜め後ろから。どっしりした造形ではありますが、お犬様像としてよく見られる、脇腹のあばらの造形もしっかりと表現されています。肩甲骨や背骨などもしっかりと作られ、神獣的でありつつも、その体温すら感じさせるようなリアルさも併せ持った造形です。
 尾は狼像によく見られる、後脚に回り込むような形状となっています。
 
 続いて社殿向かって左側のこちらが吽形。
 こちらも阿形同様、筋肉質な首や前脚など、力強い造形が印象的です。
 
 吽形のお顔のアップ。他のお犬様の造形では、口を開いて吠えたような作りの阿形よりも、口を閉じた吽形のほうが穏やかな表情に見えることが多いですが、こちらの吽形は、眉間の造形が阿形よりも深く見えるせいか、阿形よりも険しい表情に見えるのが珍しく感じました。閉じた口から覗く牙も、その印象をより強くしているように思います。
 
 吽形を斜め後ろから。尾の造形は、阿形よりもややうねりが強く見えます。
 
 ちなみにこの吽形の尾の造形ですが、台座から少しはみ出たように造られた尾が、生命感のあるリアルな造形と相まって、まるで本当に生きているお犬様が台座の上に腰掛けているような印象を与える効果があると思っています。このような造形の狼像は他にもいくつか見られますが、実に素晴らしい処理だと思います。
 
 そして、この両面神社のお犬様は、足先に至るまで精細に形づくられています。これは後脚の爪ですが、精密且つ鮮やかに彫り込まれた小指がとても素晴らしいです。
 
 同様に前脚の指もくっきりと彫り込まれています。本当に、惚れ惚れしてしまう造形で、ずっと見ていても見飽きません。
 
 このお犬様は、昭和32年に拝殿の建て替えの際に奉納されたものだそうで、この両面神社の狛犬としては、実は2代目となるのだそうです。
 
 そして、初代となるお犬様が、この社殿の中に納められているそうです。
 
 こちらが阿形。
 細身に造形され、背筋を伸ばしたその姿は、全身を光沢のある黒で覆われています。脇腹には、やはり狼の痩身体形を表現するあばらの造形が見られます。目元は睨みを利かせたシャープな造形が成され、開いた口の中の歯茎と、耳の中に見える赤い色が、黒い全身の中で一際目立っています。存在感のある黒光りする姿からは実に精悍な印象を受け、拝殿前のお犬様とはまた違った迫力を感じさせます。
 
 こちらが吽形。
 痩身体形に表現された精悍な造形は阿形同様ですが、置かれた位置のせいで残念ながら腰より後方を見ることはできませんでした。そして、阿吽ともに使える写真はこれ1枚ずつだったのですが、それには拝殿の中に納められていること以外にも理由がありました。
 
 実は、拝殿の扉の枠には、このように金網が張られていて、その隙間から辛うじて撮ることが出来た写真が上記のものでした。いつかもっと近くで拝んでみたいものです・・・。