狛オオカミを見に行こう!
2018/12/02 埼玉県秩父市・林道粟野山線と長瀞町〜秩父市のオオカミ信仰神社
 
 週間予報を見ていると、今週末は天気も良さそうだし、近場でもいいからどこか走りに行きたいな、なんて思ったものの、さて、どこへ行こう?そんなことを考えていると、ふとアレのことを思い出した。そう、オオカミの狛犬だ。
 県内の秩父方面に多く点在するオオカミ信仰の神社を巡りつつ、その周辺の林道を走ることを目的に、のんびりと出掛けてみることにした。
 
 本日最初にやって来たのは、長瀞町の武野上神社
 
 場所はここ。ここは鳥居の前に一組、通常の獅子型の狛犬があるが、その目的の狛オオカミはこの奥にいるようだ。
 
 鳥居をくぐって進むと、すぐに社殿があるが、その手前に一対の像が奉納されている。
 
 これが武野上神社の狛オオカミだ。造形はとても素朴な印象で、以前訪れた寄居町の釜山神社の奥の院にある狛オオカミを彷彿とさせる。
 それでは阿吽それぞれの像を見ていこう。
 
 社殿に向かって右手の阿形はメスのようで、足元に子供が掘られている。母子の姿に造形されているものとしては、やはり釜山神社の奥の院の祠にレリーフ状に掘られたものがあったが、この武野上神社と何か関連はあるのだろうか。
 
 子供の像は、そのサイズの小ささもあってか、長年の風雨にさらされてきたせいでディテールもだいぶ曖昧になってしまっているが、それでも母オオカミの足元にすがりつくその姿は非常に愛らしい。
 
 この顔も、母オオカミと思って見ていると、この素朴な造形と相まってとても優しい表情に見えてくる。
 
 社殿向かって左のこちらは吽形。阿形に対してオスの造形となっている。
 
 阿形同様の素朴な造形で、口を閉じた表情が阿形以上の穏やかな表情を作り出している。今日一発目から実にいい狛オオカミを見ることが出来た。それでは次へ行ってみよう。
 
 次の目的地へは、この林道葉原線を上って行く。葉原線といえば今年の3月に、先程触れた釜山神社に訪れた帰りに通過している。あの時はまだこの林道沿いにオオカミの神社があることに気づいていなかったので、まさかこんな短期間で再びここに来ることになるとは思わなかったが(笑)。
 
 幅螺旋を起点から上っている途中、ふと道沿いにあるものに気づいた。
 
 コンクリートブロックの擁壁の上に、屋根瓦を積み上げてある。擁壁の補助に使っているようにも見えるが、解体した廃屋から出たものを利用しているのだろうか。
 
 葉原線を更に進み、陽の光が射す区間になると、鮮やかに色付いた楓が出迎えてくれた。
 
 今日はそれほど紅葉を期待して来た訳ではなかったけど、思いがけず見られた景色にちょっと嬉しくなった。
 
 葉原線の起点から2km程も上って来ると、道の脇に神社を案内する看板が立ち、その奥に白い鳥居が見えている。岩根神社だ。
 
 場所はここ。ここは春になると何かの催しをやっているようだが、冬場の現在は非常に閑散として、手前にある駐車場にも1台の車も停まってはいなかった。
 
 木々に囲まれた狭い参道を50m程登ってくると、その奥に小さな社殿が建っている。コンクリートで固められた斜面に囲まれ、非常にひっそりとし佇まいだが、その手前に一対の像がある。
 
 これが岩根神社の狛オオカミだ。こちらの像は、顔つきの造形など、デフォルメの効いたややコミカルな印象を受ける。
 
 阿吽どちらの像にも、背中にはニホンオオカミを表すうえで特徴的なあばらの表現がしっかりと掘り込まれている。
 
 向かって右にいつするこちらは阿形の像。歯をむき出しにしたその造形が、オオカミというよりも、まるでワニのようにも見える。結構怖い(笑)。
 
 対する向かって左側の吽形。こちらはうって変わって実に愛らしい顔つきに見えるが、口を閉じているだけでこうも印象が変わるものか・・・(笑)。
 像の鼻先に顔を近づけてまじまじと観察していると、思わずこちらの鼻先をペロッと舐められた錯覚に襲われた。きっと阿形に同じことをしたら、ガブッと噛み付かれたと思う(笑)。
 
 ひとしきり狛オオカミを観察して、社殿の中を覗いてみると、「巖根大神」と書かれた掛け軸が吊るしてあった。わ、かっこいいなあれ。
 
 この岩根神社の御神札は、宝登山神社に行くと手に入るのだそうだ。そう、ここから程近い場所に、やはりオオカミ信仰の宝登山神社もあるのだが、そこはまた改めて別の日に行こうと思っている。今日はこの後、別に行きたいところがあるのだ。
 
 それにしてもこの岩根神社、本当にひっそりとしていて良いところだなあ。いまはまだちょっと早いけど、時間が合えばここでお昼にしても良かったかも。
 
 さあ、そろそろ次の目的地に向かおうか。
 
 続いてやって来たのは、秩父市下吉田の県道37号線から分岐する林道粟野山線。ここ、途中で奥秩父方面の山並を見渡せる眺めの良い地点があるのだが、つい先日、その眺めが路肩の木の成長によって失われてしまったのではないかという疑惑(笑)が持ち上がった。せっかく近くまで来たので、それを確かめるためにやって来たという次第。
 
 うぇ〜、こんな人里近いところでも出るのかよ!
 
 それはそうと、さっそく進み始めると、起点から400mほどの地点で路面がダートに変わる。ダートの延長は以前から変わっていないようで一安心。
 
 ダートに入って最初のカーブに差し掛かると周囲は広葉樹林となり、ここでも鮮やかな紅葉が出迎えてくれた。
 
 今年の林道での紅葉はこれで見納めかなー。僅かな区間だけど、見ることが出来て良かった。
 
 そこを過ぎると、進む先のカーブが見渡せるこの地点に出る。頭上に広がる青空がとても印象的だ。
 
 そういえば今日は、このように路面の抉れた地点を結構結構見たのだが、ここって以前からこんな感じだったっけなあ?最近になって洗掘が進んだのだろうか?
 
 そして、起点からちょうど2km進んだ地点で現れるビュースポット!遥か遠くまで、山々の稜線が青いグラデーションとなって連なるこの眺め、相変わらず素晴らしい!今日はここからの眺めを確かめたくてやって来たのだ!
 ここはどの季節に来ても素晴らしい眺めを見せてくれるが、特に空気の澄んだ冬に見えるこの景色は格別だ。
 ただ、危惧していた通り、ガードレールの外に生える潅木の生長が進み、手前の方の視界が若干遮られてきているような印象は受けた。あー、枝打ちしてぇ・・・。
 
 それにこの地点は、この写真でどれだけ伝わるかは分からないが、結構な斜度のある地点で、しかも下から進んでくると、この景色が見られるのは進行方向に対して後方に位置することになるために、この眺めに気づきにくいっていうのはあるんだよなあ。先に書いたとおり、ここは起点からちょうど2km地点なので、ここを訪れた際は是非それを気に留めて、ここからの景色を眺めてもらいたい。
 
 この林道の一番の見せ場は過ぎてしまったが(笑)、折角なのでもうちょっと進んで行こう。
 
 起点から約3.2kmで路面はコンクリート舗装に変わる。この先はみかん農園の敷地があるだけなので、Uターンするための終点まで進んだが、とくに写真を撮ることも無く引き返した。
 
 というところで、そろそろ腹もペコちゃんなので、今日はここで昼飯にしよう!
 
 ここは段差のある路肩にフェンスが作られているが、その手前がこんな感じの平場となっているので、腰掛けて休憩するのに丁度良いのだ。
 
 そして、ここからの眺めがまた素晴らしい。稜線上に岩峰の突き出たこの山並を眺めながら食べる昼飯は最高だぜ。
 
 今日の飯はこれ!久々のシンガポール風ラクサ!やっぱコレだよなあ。何度食べても飽きないぜ!
 
 のんびりとしたランチタイムを済ませ、今日はこの辺りで引き返そうか。今年は今のところ暖冬が続いているけど、さすがに夕方になると冷えてくるしね。寒くならないうちに帰ろう。
 
 と思ったのだが、この粟野山線の起点の近くにもうひとつ神社があるので、折角だから戻りがてら寄ってみよう。
 
 それがこの椋(むく)神社だ。実はこの椋神社は、今回調べた神社のリストには入っていなかったのだが、通り道だし念の為、と思って立ち寄ってみた。県道から入ると、参道に対して右手から進入することになるので、BAJAを停めて一旦参道の入り口まで回ってみると・・・。
 
 うおっ!いた!!
 
 鳥居の手前に鎮座する、これが椋神社の狛オオカミだ。写実的な造形が生物としてのリアリティを感じさせる、実に凛々しい姿だ。
 
 台座には、「明治丗八(38)年」と書かれている。かなり昔のものだが、像のディテールも台座の文字もしっかりとした形を保っている。
 
 それでは個別に見ていこう。向かって左に位置するこちらが阿形だ。
 
 全体的な造形も写実的に造られているが、足元を見てもとても細やかに形作られている。鋭く掘り込まれた爪先や、足首の周りの毛並みなど、細部にまで神経の行き届いた仕事だ。
 
 向かって右手のこちらが吽形。一段高い岩場に置いた右前足が躍動感を高めている。
 
 こちらは阿形の顔のアップ。
 
 そしてこちらが吽形。どちらにも、顎の付け根辺りに渦を巻いた毛並みのような形が彫られている。この渦巻き、今年の6月に見に行った秩父市荒川贄川の猪狩神社の狛オオカミにも同様のものがあった。あちらは昭和8年奉納のもので、時代的にはこちらのものよりやや後年のものだが、同様の形が彫られているのには何か意味があるのだろうか。
 
 鳥居をくぐって社殿まで進むと、その手前に一対の狛犬がある。
 
 こちらは通常の獅子型の狛犬だが、実に愛らしい造形をしていたのでこちらも併せて紹介しておきたい(笑)。
 
 この椋神社のオオカミも実に素晴らしい造形だった。立ち寄る予定には入って無かったけど、スルーしないで良かったー。短いツーリングだったけど様々な造形のオオカミを観られて楽しかったなー。
 ここ数年の冬のツーリングは、特にこれといったテーマも無かったけど、こんな感じで秩父方面のオオカミ信仰神社を巡りながら周辺の林道を走るっていうのも楽しいかもしれないな。次はどの神社に行こうかな?