春の雪道
2020/03/15 群馬県多野郡神流町・林道二子山線
 
 毎年この時期になると楽しみにしていることがある。春に降る雪のことだ。
 例年、春に向けて寒暖を繰り返すこの時期には、冬の最後の足掻きとも思える寒気によってまとまった降雪がもたらされることがある。そしてこの時期の雪は、真冬の峠越えのような路面凍結の心配も無いため、山間部の雪を求めて走りに行くには絶好の機会なのだ。
 ただ、今年は結構な暖冬だったために、いつものような積雪は望めないかな、なんて思いもしたのだけれど、そんな中、急激に冷え込んだ寒気によって望んでいた雪が降った!そのうえ今回は、上手いことに週末の土曜に積雪があり、天気予報では翌日の日曜は晴天に恵まれるとのこと。これはもう行くしかないだろう!
 
 というわけで、国道299号をひたすら進み志賀坂峠を越えて、今年もやって来たぞ、林道二子山線だ!毎年この時期に降雪があったときは、ここに走りにくるのが恒例になっているが、さすがに今回は昨日の今日というだけあって、木々に積もった雪もほぼ溶けることなく、このエリアのこの時期の景色とは思えないような景色が出迎えてくれた。これは!期待が!高まる!
 
 さっそく走り出してみると、最初のカーブを越える頃から、降り積もった雪で路面はその一面を白い姿に変えていた。
 
 雪面には、先行した車両のタイヤの跡が刻まれているが、その表面をみると、どうも結構硬そうな質感に見える。夜のうちに凍りついたのかな?
 念の為、一旦BAJAから降りて少し歩いて進んでみる。とりあえず、さすがに真冬のようなガチガチのアイスバーンというわけではなさそうだが・・・。
 
 そんな路面の写真を撮り終えて振り返ると、雪を纏った木々の上には清々しい青空が広がっていた。これはこの先の景色にも期待が持てそうだ!
 
 そのまま慎重に進んでくると一旦日影に入ったが、寒々しい色合いの景色が、3月中旬とは思えないほどの真冬感を演出していた(笑)。
 
 今日はそれほど気温が上ってこないこともあってか、日向に出ても木々に付いた雪は溶けずに残っている。その木々の向こうには、うっすらと雪化粧をした山々が透けて見える。
 
 素晴らしく美しいな・・・。まだ何てことのない舗装区間なのに、雪を纏っただけでこれほど目を惹く景色に変わるとは。
 
 再び日陰に差し掛かると、またしても先の路面が凍結しているように見えるので、また歩いて様子を覗ってみる。
 
 わ、本当に凍結してるよ・・・ただ、舗装路の凍結とはいえ、砂利交じりの氷なので乗ってもツルッと行くことは無いと思うけど。夕べは早いうちに雪も止んだようなので、夜のうちに放射冷却で凍りついたのかな?
 
 とかなんとか言ってるうちに、未舗装区間に到着!ここまで来ればもう安心だぜ!
 
 路上に積もった雪も、先程までの凍結を含んでいそうなものから、サクサクの新雪の感触となり、一気に世界が変わった。
 
 雪の重さでしなだれ、路上に迫り出す木々の枝から、ときおり粉雪がぱらぱらと舞い落ちてくる。あまり気温が上らずにいてくれたからこその素敵な情景だ。
 
 すごいな・・・とても3月も中旬とは思えない、まるで真冬のような世界が広がっている。
 
 この時間ではまだここまでの北側の区間では日差しが入ってこなかったのだが、ようやく山の上から光が届くようになってきた。雪を纏った杉の木が日に照らされてすごく綺麗だ・・・。普段は花粉を噴き出す憎き存在でしかない杉も、こういう姿を見るとなかなか悪くないな、なんて思えてしまう。
 
 送電線の通過するこの地点、二子山線の中でも特に好きな場所のひとつだ。
 
 そしてここから振り返ればこの眺め!遥か遠くに連なる、淡い雪化粧をした山々の姿が美しすぎる・・・。
 
 いやあ、本当に素晴らしい景色だねえ。
 
 白い雪と白い雲、そして青い空だけに囲まれた非日常の林道世界。最高としかいいようのない景色だ。
 平坦な道は動物たちにとっても歩きやすいのか、路上にはときおり野生動物の足跡も刻まれていた。これは結構小さめなサイズだけど、鳥でも歩いて行ったのかな?
 
 ようやく日が当たり始めた山肌は、いまだ溶けずに残る木々を覆う雪によって、神聖な空気すら感じさせる。あまりにも美しい周囲の景色に圧倒されて、さっきから少し走っては停まってシャッターを切ることの繰り返しだ。
 
 で、さっきから歩くたびに足元から何かを引きずっているような感触を感じていて、どこかで木の枝でも拾って来たかな、と思って足元を見ると・・・。
 
 ああっ!ブーツが壊れてる!プラスチックのプロテクター部分が、縫い目に沿ってぱっくりと割れてしまった・・・。まあ、こいつも長く使ったからなあ、林道ツーリングへ行くときはほぼこいつと一緒だった。今まで良く頑張ってくれた、ありがとうなあ。
 
 さて、そんな感じでテンションがやや下がってしまった。ちょうどここにはいい感じの平場があるので、ここで一旦休憩にでもしようか。
 
 よし、時間的にも丁度良いし、今日はここで昼飯だ!
 
 素晴らしい眺めだ・・・。こんな景色を見ながらのランチタイムが出来るなんてもう最高だ。
 
 叶山鉱山の姿も、薄っすらと積もる雪によってクッキリと描き出されている。こんな景色を眺めているだけでも楽しくて仕方が無い。
 
 ランチタイムも終えたけど、やっぱり足元の壊れたブーツが気になってソワソワしちゃうので(笑)、今日はこれで帰ろうか。何より、ここまでこの景色の中を走って来れただけでも、もうすっかり満足出来ているし。
 
 それでも、こんな景色を目の前にして走っていると、どううしてもついつい停車してシャッターを切ってしまう。
 
 何の苦労も無くこんな景色を見に来れるのは、路面凍結の心配の無いこの季節だからこそ。春の雪に本当に感謝だ。
 
 もともと開放感のある場所だけど、遠くの山々がうっすら雪化粧をしていることで、爽快感が何割り増しかで感じられるようだ。目の前を通過する送電線が邪魔と思われるかもしれないけど、ここから遥か遠くまで山々を越えて延びている素柄を見ると、これはこれで良いものだと思えるよ(笑)。
 
 BAJA君、雪の二子山線はやっぱり何度来ても最高だねえ。
 
 そんな景色を堪能しながらゆっくりと進んでいると、おっ・・・?
 
 往きでは日影となっていたせいで印象が異なっていたが、先ほどより太陽も高く登り、日光に照らされた、雪を纏ったままの木々が、まるで満開の花を咲かせたような姿となっている。なんて美しいんだ・・・。
 毎年楽しみにしている雪の二子山線だけど、今年は積もった直後のこんな最高のタイミングで走ることが出来て本当に嬉しかった。
 
 雪の上に落ちる、青味を帯びた影が描き出すストライプも、俺の大好きな情景だ。
 
 これだけ積もった雪も、この季節では数日のうちに溶けて消え去ってしまうだろう。また来年も、こんな景色の中を走ることが出来ることを願って・・・。
 
 今年も雪の二子山線、しっかりと堪能させてもらった!本格的な春を迎える前の、恐らく今シーズン最後となるであろう雪の感触を味わえて最高に楽しかった!二子山線、また来年もよろしくな!