梅雨の晴れ間に
2021/06/20 埼玉県越生町の林道
 
 すっかり油断してたわ・・・。
 今週末は雨だという予報を週の初め頃に見て以来、ずっとそんな気になっていたので、すっかり週末は家でゆっくりする気になっていて、日曜も午前中は部屋で読書なんかしてたんだけど、そのうちだんだん雲の切れ間から青空も覗くようになってきて、んー、でも今から出かけるのもなあ・・・なんて迷っているうちに、空はすっかり晴れ上がってしまった。ぬおお!これはもう出かけるっきゃねーべ!
 
 というわけで、昼食後の14時過ぎという普段の林道ツーリングではありえないくらい遅い時間ではあったが、たまらずBAJAに跨り林道へとやって来た。
 
 本日まずやって来たのは、越生町の林道西山線。こんな時間からでも来れる近場の未舗装林道ということもあったが、何より久々にこの旧タイプ林道標識の安否も確認したかったというのがここへ来た理由だ。以前よりも錆びは増えたような気もするが、こうして現存を確認出来て一安心。いちど上書きされた文字も、錆と交わりいい感じに標識に馴染んできた。
 
 さっそく起点からの未舗装路を進むと、すぐに左手にコンクリート製の貯水池のようなものが現れる。
 
 ここは、かつては釣り堀として使われていたようなのだが、見ての通り現在では廃墟となっている。一体いつ頃使われていた物なのだろうか。
 
 水槽は2区画に分かれていて、ひとつは緑色に濁った水で満たされていたが、もうひとつは水そのものはわりと澄んで見えたものの、その中にはドクダミが群生していた。ここに他の生き物は棲んでいるのだろうか・・・。
 
 そのすぐ先には、道の脇に巨大な堰堤があり、道は短い区間でその高さを一気に稼ぐように急傾斜で登って行く。これは1号柳田堰堤というらしく、昭和44年の竣工で、それなりに年季の入ったもののようだ。
 
 その急坂を上り切った場所は虚空蔵尊さくら公園の駐車場となっていて、道の脇にはアジサイが咲いていたが、公園を利用している人の車は停まってはいないようだった。
 
 その駐車場を過ぎる地点に、路上にコーンが置かれていて、一瞬どうしようかと思ったものの、よくよく見れば特に通行止めとも進入禁止とも書いてあるわけではなく、これは恐らくさくら公園の利用者が不用意にこの先の行き止まりの道に入り込まないようにとの処置であると解釈し、そのまま先へと進ませてもらった。
 
 オフロードバイクなら何の問題も無く通れる道でも、転回する場所もないこんな道に、観光で来た車がうっかり入り込んでしまったら引き返すのも大変だろう。
 道の脇には清涼な沢が流れ、木漏れ日を受けた水面がきらきらと輝いている。
 
 少し進んでくると、道の脇に1本の杭が立っている。
 
 そこには「西山併用林道」と書かれている。実はこの周辺は西山国有林となっていて、そのために併用林道との扱いになっているようだ。初めてこれを見たときは、国有林なんて秩父の方にしか無いものだと思っていたから驚いたっけ。
 
 道は杉の植林帯の中を上って行く。春には花粉を飛ばす憎き存在(笑)だが、こうして空に向かって真っ直ぐに伸びる幹と歩調を合わせるように真っ直ぐに延びる道の景色には、素直に惹かれてしまう。
 
 やがて、起点から約900mの地点で林道の終点に到着。
 
 車道の終点からは、左右に登山道が延びていて、道標にそれぞれの行き先が記されてはいるのだが・・・。
 
 ここには訪れる人も稀なのか、道標の脇に設置された案内看板も倒れたまま放置されていた。
 
 ただ、終点の脇には沢が流れていて、そのせせらぎを聞いているだけでも気分的にはそれなりに満たされる。それじゃあ次の林道へ向かうとしようか。
 
 続いてやって来たのは、県道61号線から分岐する林道富沢線
 
 この富沢線も、かつてはこの県道との分岐地点に旧タイプ林道標識が立っていたのだが、いつ頃か失われてしまった。貴重な旧タイプだったので、支柱を支えて立て直すなどして保存して欲しかったのだが・・・。
 
 それはともかく、未舗装区間との境目までやってくると、いきなり鬱蒼とした緑に包まれて一瞬「ウッ!」ってなった(笑)。ただ、BAJAを停めてメットのシールドを上げると、昨日降った雨のおかげか、周囲は緑の匂いを溶かした空気が漂い、それが鼻腔を通して肺に満たされるのがとても心地良かった。
 
 未舗装路との境を過ぎると、道には木漏れ日も射すようになる。
 
 家を出るときは晴れ渡っていた空も少しずつ雲が多くなり、時折陽射しが翳ることもあったが、道の脇を流れる沢のおかげか、このしっとりとした雰囲気もそれはそれで悪くないと思える。
 
 こんなマイナー林道だけど、路上にはつい最近通ったばかりと思わしきキャタピラの痕が残っていた。この奥でなにか工事でもしているのだろうか。
 
 そして、起点から約600mで終点に到着。
 
 終点の正面に聳える斜面の植林帯は、綺麗に間伐されて適度な陽射しを受けていた。そのおかげか、林間を抜けるそよ風も吹き、足元の下草が小刻みに風に揺れる様子が愛らしく、しばらくそれを眺めて過ごした。
 この終点も左右に登山道が延びていて、そのせいもあるのかは分からないが、しっかりと管理されている様子が覗えた。
 
 富沢線の終点を引き返し、続いて舗装区間から分岐する舗装の林道滝ノ入線に入る。
 
 滝ノ入線を少し進むと、右手に分岐する1本の未舗装路がある。
 
 林道松倉線だ。ここの起点標識も旧タイプで、この安否も確認したくてやって来たが、こちらも無事で一安心。しかも、標識の状態も、錆などの進行も特に見られずに、とても良好な状態を保っている。素晴らしい!
 
 路面状態も、起点から未舗装なのは以前と変わらず。
 
 あ、この地点は何か憶えてるな。地形の関係か、ここはいい感じに陽射しが入り込んで印象的なんだよな。
 
 路面情況はと言うと、轍が緩やかな段差となり、少々走行に気を使うような場面もしばしば。そんな道を進んできて、ちょっと路肩の開けた地点で小休止。
 
 路上には苔生した箇所などもあり、もう訪れる人もそうそういないんだろうな、ということを覗わせている。
 
 路上を横断するこんな倒木が放置されていることからも、いまでは林道の本来の目的としてもほとんど利用されていないんだろう・・・。
 
 小さな谷を跨ぐ地点で、急に路面が平らになったなと思ったら、この部分だけコンクリート舗装が施されていた。路上に散乱する杉の枝のせいで、ぱっと見ではそれと気づきにくいが・・・。
 
 この松倉線も道は沢沿いに延びていて、途中で沢沿いに降りられそうなところがあったので、ちょっと下からBAJAを撮ってみた。
 
 そんな沢の流れを眺めながら路面情況に気をつけてゆっくりと進んでいると、おっ?
 
 滑滝、と言うほどの落差も無いが(笑)、岩肌を滑り落ちる流れが綺麗で思わず写真に撮った。こういうものを見るだけで嬉しくなるな。
 
 そして、起点から約900m地点で車道の終点に到着。
 
 ここから先にも道が延びているが、これは登山道ではなく杣道だろうな。そして、その下を横断する沢は、土管を用いて水を流し、橋も兼ねていた。
 
 なんだか分からないけど、その土管を覗き込んでみたくなり、沢に下りてみた。まあ、何てこと無い眺めでしたわ(笑)。
 
 水面にはたくさんのアメンボが漂っていた。そういえばアメンボなんて見るの、久しぶりだなあ。写真は、水面のゆらぎと反射でめちゃめちゃ見づらいと思うけど(笑)。
 
 そんな感じの、正味1時間程のプチ林道ツーリングでした。あんな時間からの出発で行くかどうかちょっと迷ったけど、やっぱり出てきて良かった。いい気分転換になったよ。
 
 2019年に関東で猛威を振るった台風19号以来、埼玉の通り抜け可能な林道群は、そのほとんどがいまだ復旧もままならなず通行不可能な状態だけど、小振りでマイナーな行き止まり林道ならまだまだ走れるところはある。もしかしたら多くの林道ライダーにとっては、あまり興味のないものかもしれないけど・・・楽しいよ(笑)。