山津見神社-@ オオカミ像
 
 
 飯舘村と伊達市霊山町の境に位置する虎捕山の麓に山津見神社があります。
 参道を進み最初の石段を登ったところに、1対目のオオカミ像があります。山津見神社の眷属は狼と白狼とのことです。
 
 社殿に向かって右手が阿形。全体的にシンプルなフォルムの中に、がっしりと筋肉質に表現された脚の造形が印象的です。
 
 顔つきは、吊り気味の目からキツネのような印象を受けます。目元には赤いアイラインが引かれ、瞳が黒く描かれています。口の中も赤で、歯は白で塗られた塗料が薄っすらと残っています。
 顔の表面に毛並みのような筋の造形が見られます。
 
 横から見ると、薄っすらとあばらの造形も成されているのが分かります。前脚の後方にも毛並みのような表現が見られます。
 尾は手前前方に回り込むように、台座の外側にはみ出るように造形されています。
 
 後方から。しなやかな背中のラインが生命感のある印象を与えます。
 
 前脚、後脚ともに爪もしっかりと造形され、表面が白く塗られています。
 
 社殿に向かって左手が吽形。こちらの写真のほうが日差しの関係であばらの表現などが分かりやすいと思います。首周りにもたてがみと思われる造形が見られます。
 
 切れ長の目は阿形と同様ですが、閉じた口の表現でだいぶ穏やかな顔つきに見えます。
 こちらにも目、口に塗料の痕跡が見られます。
 
 尾にも毛並みの表現があるのが分かります。
 
 背後から見ると、前から見たときの前脚によるがっしりとした印書とは異なり、わりとほっそりとしたスタイルに見えます。
 
 台座には奉納の文字がありますが、それぞれ外側から内側にかけて「奉」「納」と書かれています。
 
 写真では分かりづらいですが、昭和五十九年十一月と記されています。比較的新しいもののようです。
 
 1対目のオオカミ像を過ぎると、大きな鳥居が立ち、その奥に社殿があります。その社殿の手前に2対目のオオカミ像が置かれています。
 
 こちらも社殿向かって右手が阿形です。1対目のシンプルな造形と異なり、マッシブで力強い印象の造形が、たてがみの造形とも相まって、たとえばタイリクオオカミ的な、多くの人が「オオカミ」と聞いて思い浮かべるような象徴的な姿をしています。
 
 頭部のアップ。大きめに造られた犬歯が、全体的なフォルムから受ける迫力をさらに増すことに一役買っています。また、こちらの像にも、ほぼ剥がれてしまっていますが口の中が赤く塗られていた痕跡が残っています。
 
 正面から。息遣いも感じるような、リアルな生物としての姿が印象的です。
 
 背後から。どこから見ても生きている動物としてのフォルムの再現度が高い、素晴らしい造形だと感じます。
 
 首筋から背中にかけて、たてがみをデフォルメしたような造形が続いています。眷属としてのイメージを強調させるためでしょうか、威厳を増すのに効果的な造形だと思います。
 
 社殿向かって左手が吽形。阿形同様の凛々しい姿に見惚れてしまいます。
 
 吽形の頭部。カーブした口唇と、そこからちらりと覗く犬歯、立体的なたてがみなど、細部に渡って神経の行き届いた、呼吸音すら聞こえてきそうな素晴らしい造形です。
 
 正面から。こちらの吽形にはオスのシンボルが造形されていました。
 
 こちらの吽形には、阿形にはあったあばらの造形がありませんでした。
 
 こちらのオオカミ像は、シャープなエッジの立った前脚の爪が、台座の手前に迫り出して造形されているのが、いつでも跳びかかる準備はできているぞとでも言わんばかりの圧を感じて、個人的にもお気に入りのポイントです。
 
 台座にはそれぞれ「奉納」の文字が刻まれています。
 
 こちらの像は昭和四十一年に奉納されたもののようです。
 
 拝殿の中は、手前と奥の2つの部屋に仕切られています。
 
 奥の部屋の祭壇の前にも、1対の小さな狼像が置かれていました。全体的に黒っぽく材質の判別は付きませんでしたが、木彫りを塗装したものでしょうか。
 祭壇向かって右手のこちらが阿形のようです。小さいながらもしっかりと阿吽の造形が表現されています。
 
 祭壇左手のこちらが吽形。
 
 拝殿の天井には、オオカミ絵が奉納されています。これらを観るのもこの山津見神社を訪れた目的でした。このオオカミ絵については次のページで紹介します。
 
オオカミ絵のページへ。