憬れのみちのくダート群へC-2
2010/10/02 福島〜宮城林道ツーリング・最終日-パート2
 国道13号・万世大路旧道区間(福島側)

パート1はこちら。

 いよいよこれから東北道に乗り、帰路へと着きます。

 これから埼玉へ向けて一気に走っていく・・・が、途中ちょっと福島で寄り道の予定。

 福島飯坂ICで下車し、国道13号に乗る。初日に通過した県道5号線フルーツラインと交差して、米沢方向へと進んでいくと、やがて東栗子トンネルに到着。これから、このトンネルを通らずに、右手に分岐する道へと入っていく。ここから先には、国道13号・万世大路の旧道が伸びているのだ。

 って、これッスか??どう見てもただの林道っすよね?
 それもそのはず、ここから伸びている道は本来の万世大路ではなく、途中で本線に合流するための枝道なのだそうだ。とはいえ、この道との合流地点から現道側の本線は、藪に埋もれてえらいことになっているらしい。実際、どこがその合流地点か判別できなかったし・・・。

 はじめのうちは、かなり急勾配な九十九折を越えていく。下手な林道よりキツい高低差の急カーブが続くうえ、路面も削られかなりの段差などが出来ている部分もあるが、こんな道でも普通に真新しい4輪のタイヤの跡が残っているのはどういうことだ?

 ちなみに、ここまでの間に、かつてここに存在したスキー場の遺構があるらしいのだが、全く気付くことなく通り過ぎてしまった・・・。
 その後、本来の道と合流したのか、普通の林道程度には走りやすい道へと変わり、気分良く木漏れ日の中を進んでいくと、やがて目の前に・・・。

 出ました!

 二ツ小屋隧道です。

 深い森の中に、突然現れる重厚な坑門。かつてここが峠越えの国道として賑わっていたことを知識としては知っていても、ここまでの道のりが普通の林道程度のコンディションなので、にわかには信じがたいものがあったが、このエントランスには、その事実を説得させるに足る十分な迫力があり、また、坑口前後には広い幅員の路面が残されているので、今でも当時の国道としての姿を偲ぶことができる。

しばし入り口を眺めた後、いよいよここを通過していく。遠くに出口の明かりが見えてはいるが、それでも単独でこの中に入っていくのは心の準備が要る。深呼吸をして、いざ闇の中へ。

 出口に近付いて行くと、崩れた瓦礫の上から、多量の水が流れ落ちてきている。そばまで近づいてみよう。

 見上げれば、天井にはぽっかりと大きな穴が開き、完全に外が見えている。きっとこの周囲は、常に水が流れ落ちていることもあり、相当脆くなっているのではないだろうか。いつ天井がごっそり崩れてもおかしくないようなこの状態・・・こ、怖い。早くここから抜け出さねば。

 隧道を抜けだすと、一転辺りは柔らかな日差しに包まれ、隧道内の緊張感が嘘のような、何とも穏やかな雰囲気。

 二ツ小屋隧道を後にし、更に先へと進んでいく。車道としては既にかなり心許ない状態だが、路面はまだまだ穏やかな印象を保っている。

 やがて、周囲が開ける区間に出た。路面には草が背を伸ばし、だいぶ廃道らしい雰囲気を漂わせるようになってきた。

 上の写真では少々分かり辛いが、画像中央部で路面が崩落し、崖となっている。よく観察してみると、崩れた部分がオーバーハングしていて、とてもじゃないが路肩ギリギリまでは寄れないような状態。だいぶ危なっかしくなってきました・・・。

 この先で、うっかり写真を撮りそびれてしまったのだが、道が少し広くなった地点に出た。どうやらここは、かつて太平集落という集落があった跡地らしい。
 道の脇に4駆が停めてあったので、車の旋回の邪魔にならないようにと反対側の路肩に停める。
 色々なサイトで見たところ、この先はバイクで進んでいくのも辛そうな感じがしていたので、ここにBAJAを置いていくつもりで、上着の下に着ていたシャツを脱いでいると、後方からこの車の持ち主と思わしき男性が現れた。
 「こんにちは」と声を掛け、この先ってバイクでも難しいですよね?と尋ねると、
 「バイクならトンネルまでは平気じゃない?」との答えが返ってきた。
 ・・・う、うーん、ツワモノならいざ知らず、俺には到底無理っぽいのは分かっているんだけど、せっかくだから、もうちょい進んでみるか。

 しかし、その集落跡を過ぎたとたん、道は藪漕ぎ状態に。このままで進んでいったら、戻るのも難儀しそうな雰囲気・・・。

 その少し先で、ほんの少し藪が途切れた場所があったので、ここでBAJAを旋回させ、ここから先は徒歩で進むことに。BAJA君、ちょっとここで待っててね。

        

 BAJAを停めた地点からほんの少し進んだ地点で、人が一人通るのがやっと程度に道幅が欠落している地点に出た。
 (上の画像にカーソルを重ねてみてください。)
 こ、これか・・・藪が濃くて見た目では分かり辛いが、道の両脇は谷底へと続く斜面になっていて、うっかりバランスを崩そうものなら、まず助からないだろう。やっぱりあそこにBAJAを置いてきて良かった・・・。

 この先は、もはや路面の判別が難しいほどに藪が濃くなってくる。つい先日まで厳しい残暑が続いていただけに、植物たちの勢いもまだまだ衰えてはいないようだ。

 藪をかき分け、歩を進めていくと、やがて突然視界の開けた地点に出た。

 橋だ・・・。大平橋というらしい、このコンクリート製の橋の上だけ、ぽっかりと空間が開いている。穏やかな平面の上でほっと一息。しかし、その橋の向こうは・・・。

 すいませ〜ん、道はどこですか?

        

 鬼のように生い茂った藪をかき分け進んでいくと、辛うじて道であったろうと思わしき部分には沢の水が流れ、結局歩ける場所もそこしか見当たらないので、ざぶざぶと沢登りのようにブーツを浸水させながら進んでいく。

 ところどころで沢が消えると思うと、そのまま道まで消えてしまう。うわぁ、こんなとこ進んでいくのヤだよぅ・・・。

 全身汗だくになりながら藪漕ぎを進め、しばらくして2つ目の橋が現れた。杭甲橋というらしいこの橋も、橋の上だけは生い茂る草木もなく、文字通りの安全地帯といった雰囲気。
 ここで少々休憩し、汗だくになった体を冷やそうと上半身裸になり、谷の中を流れる風に身を委ね、しばしのクールダウン。藪漕ぎの中を進んでくるために、実はヘルメットも被りっぱなしで歩いてきたので、頭皮も汗びっしょりです・・・。

 五分ほどの休憩を経て、更に先へと進んでいく。ここまで来たら、もう後には引けないぞ。

 ここでは、かつての車両の轍に沿って、二本の小川が並行して流れている。この辺りの区間は全然穏やかなほうだ。

 ここはすっかり川と化してますね。かつての国道の面影は微塵もありません・・・。

 道に横たわる倒木には、先人たちの痕跡が・・・本気で尊敬します。

 BAJAを置いて歩き出してから25分程経ったころだろうか、ふと、前方の藪が開けた地点に出た。そして、その奥に何やら壁のようなものが・・・。

 お・・・。

 おおおおお!!

 遂に到着!栗子隧道です!

 来たよ、とうとう来た!
 扁額に誇らしげに刻まれた「道隧子栗」の文字を、まさか自分の肉眼で読む日がこようとは・・・。

        

 抗門の少し手前には、隧道脇の水路から流れる水が路面を横断し、かなり深くえぐれた沢を作ってしまっている。

 隧道内を覗いてみる。内部で崩落し閉塞しているこの隧道、当然奥には光など見えるはずもなく、内部には雨水が溜まり、路面はすっかり水没してしまっている。

 水の透明度は高く、底に堆積する落ち葉などの様子もよく分かるが、さすがにこの奥に入っていく気にはなれない・・・。

 比較的状態の良かった二ツ小屋隧道に対し、こちらの抗門は風化もそれなりに進んでいるようだ。

        

 それにしてもこの景色の美しさ・・・。いまだ車両の往来が可能な二ツ小屋隧道とは異なり、すっかり森の中に埋もれてその役目を終えて久しいが、それでもなお、かつての姿を今に留め、だからこそ見る者に強烈な威厳を感じさせるのだろう。

 思わず抗門の前で記念撮影ですよ。あの藪の中を越えてくるのは大変だったけど、やはりここまで来て良かった。

 ひとしきり堪能し、そろそろここを引き返すとしよう。さよなら栗子隧道。

 周囲の山肌を見れば、微かながら木々が色付き始めているようだ。あとひと月もしないうちに、一帯は鮮やかな紅葉で満たされるのだろう。

 そろそろ帰ろうかBAJA君。今日まで4日間楽しませてくれてありがとう。いよいよ本当に今回のツーリングもお終いです。

 今回の日程中、常に天気にも恵まれ、最高の4日間を過ごすことが出来た。
 この葉が鮮やかに紅味を帯びる頃、またBAJAと共にツーリングへと出かけるとしよう。次はどこへ行こうかな。