奥秩父林道、その廃道区間をゆく。
2013/06/17 埼玉県秩父市・奥秩父林道サイクリング-A
 
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※おことわり
ここから先は、通行することにより生命に危険を及ぼす恐れのある、大変危険な内容を含んでいます
絶対に真似をしないで下さい。
また、当記事に基づいて被った如何なる損害に対しても、管理人は一切責任を負いません。
 
 
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 11:31AM、遂に廃道区間への入口に到達。ただ、この目の前に見えている土砂は、谷側に僅かに路面が残っているのでそのまま通過することが出来る。しかし、画像でも分かる通り、そのすぐ先にも立て続けに崩れた土砂が路面を塞いでいるのが見えている。
 
 最初の土砂を越え、次の土砂崩れまで来てみたが・・・。
 
 先ほどと違い、こちらは垂直に立った擁壁の際までみっちりと土砂で塞がれてしまっている。この先も出来るだけ自転車を連れて進んで行こうと思っていたんだが、さすがにこんなところを通過するのに、自転車を担いで手を塞いでしまうのは危険極まりない・・・。
 
 仕方ない、自転車はここへ置いていこう。ちょっとそこで待っててね。ここから先は歩きで進むことにする。
 
 ・・・うん、やっぱり自転車は置いてきて正解だった。
 
 ここは、かなり大きめな瓦礫が積み上がっていて、恐る恐る体重を掛けても良さそうな石を選んでルートを決めていく。足元には、いつでも落ちて来いと言わんばかりに深い谷が口を開けている。もし今ここを歩いている最中に、新たな落石が発生したら・・・と思うと背筋が寒くなるが、かといって早足で通過することも出来ないのがもどかしい。本当ならこんな場所がある時点でさっさと引き返すべきなのだろうが、どうしてもこの先を観たいと言う気持ちが勝ってしまい、「行くかどうか」よりも、「どう行くか」ということばかり考えてしまう。

 本当に絶対に真似はしないで下さいね・・・。
 
 その危険な個所を過ぎると、倒木こそあるが、道は再び穏やかになる。ただ・・・もう次のが見えているよね・・・。
 
 この先で現れる土砂崩れが、軒並みこんな感じで路面を全て覆い尽くすか、路面そのものが持っていかれてしまっている状態となっている。あのバリケードまでの区間があれだけ穏やかな路面を保っていたのは、やはりきちんと整備の手が入っているということなんだろう。
 
 それでも崩落の起きていない場所では、奥秩父林道本来の、こんなにも穏やかな姿を保っている。ただ、この廃道区間ではこんな路面はそう長くは続かない。
 
 ここは本当に危なかった。先ほどの大きな瓦礫の箇所などは一見凶悪に見えるが、意外と斜面が締まっているために慎重に渡ればさほど問題は無いのだが、ここはサラサラの土が剥き出しのため、踏み出した足元が体重を掛けたそばからずるずると下がってしまう。滑落でもしようものなら一巻の終わりだ・・・。両手両足を使い、かなりの高巻きをして何とか通過したが、こんな場所が何度も現れるので、いちいち写真も撮らなくなり、一体何箇所有ったのかも数えなくなった。
 
 ここも大概だよなあ。この崩れっぷりを見て、一度はもうここで引き返そうと思った。思ったのだが・・・引き返す前に、腰掛けて少し休憩をしているうちに、あとちょっと・・・という気持ちが湧いてきてしまい、結局ここも越えて先へと進んでしまった。いま画像を見返しても、一体どうやってここを向こうへ渡って行ったのかもう憶えてないが・・・。
 
 地滑りの起きた場所では、斜面の木々も流されてしまっている為に視界が開け、向かいの山を見渡すことが出来る。こうやって見える景色はあんなにも穏やかなのに・・・。
 
 ここも路面が崩れ、谷側の斜面が地滑りを起こしてしまっている。
 
 そしてやはり、ここからも向かいの山が良く見えている。もしかして、さっきまだ自転車に乗っているときに見えていた地滑りは、まさに今いるこの廃道区間のどこかだったんじゃないだろうか。
 
 その崩落個所を過ぎると道はフラットになるが、その路面には至る所に灌木が生えている。
 
 な、なんだこれ・・・かつてここが車道だったということが俄かには信じがたい景色だ。そういえば中津川林道に入ってすぐの森林鉄道跡もこんな感じだったな。この区間が土砂崩れで分断されてから、一体どれだけの時間が経ったというのだろう。
 
 そんな路面も、進むにつれて斜面と同化してしまい、真っ直ぐ車道跡を辿っているはずなのに、単に自然の林の中を歩いているような錯覚を覚える。
 
 その灌木銀座を越えると、またしても視界の開ける地点に出た。ただ、ここが開けているのは地滑りなどではなく、元々斜面が急峻なためのようだ。
 
 ほら、路面だってこんなに穏やかでしょ?
 
 再び道が森の中に吸い込まれていくと、前方の路上に横たわる倒木が見えた。
 
 バイクなら強制Uターン確実な倒木だが、今は徒歩だし問題無く進むことは出来る。ただ・・・ここまで歩を進めたとき、何故かこの倒木に、
 
これ以上先へは行くな
 
 
 そう言われたような気がした。幹からびっしりと放射状に枝を伸ばす、何かを訴えかけているような姿をした倒木が、まるで天然のゲートのように行く手を遮る。あれだけの崩落を越えてここまで来て・・・という思いはあったが、この倒木が何かを訴えていると、そんな気になってしまったことには、それなりの理由もあった。実はここから数歩手前であるものを目撃してしまったのだが、それは、大型の獣・・・つまり、熊・・・の糞。その量から推測しても、決して小さくは無い個体に思えるが、しかも出してから恐らく丸1日と経っていないであろうまだ真新しい状態だった。もしかしたら、この糞の主はまだこの近くにいるのかも知れない・・・。そんなこともあってこの倒木が、まさに俺の足を止める為にここにいるような、そんな思いにさせられてしまった。
 
 実際、現役の林道としての実質的な終点は、先ほどのバリケードの地点までということにはなるのだろうが、かつて奥秩父林道として開削されたこの道筋の末端を見たくて、自転車を置き去りにしてまで進んできた。正直まだこの先を見たいと言う気持ちは強いが、しかし、こういうときの直感というのは馬鹿には出来ない。ここから先もまだしばらく道は続くと思うが、少なくとも今日という日においてはここが引き際なんだろう。
 
 そう自分に言い聞かせ、この倒木を跨ぐことなくここで引き返すことにした。いずれまたここまで来ることもあるかも知れないが、そのときこそきっとここを越えて行きたいと思う。12:05PM、撤退。
 
 崩落した土砂を戻る途中、どこを通ろうかとルートを探していると、さっき自分が付けたのとは違う一筋の踏み跡が目に付いたが、丸いんだよ、跡が・・・。これ、絶対リアルプーさんだよ・・・。
 
 そんな姿の見えない熊の存在に脅えながら、再び灌木銀座を通り抜ける。ビビりモードに入りながらも、これぞ廃道と言わんばかりのこの景色にはつい見入ってしまう。
 
 路肩が崩れ、苔生した路面を通過する。かつて人が自然の中に造り上げたものが、時を経て再び自然に浸食されていく姿には、やはり心惹かれてしまう。
 
 ようやく自転車を置いて行った地点まで戻って来た。ただいま〜・・・。
 
 さあ、ここからは起点までずっと下りだ!一気に下って行くぜ!
 
 でも、途中でついつい寄り道しちゃうから、やっぱり一気にとは行かないんだよな〜(笑)。往きにも写真を撮った、この林道一番のビュースポットにまた立ち寄り。
 
 で、そんな写真を撮っていたら自分もフレームに収まりたくなって、ついついセルフ撮影(笑)。ここからの眺めは本当に素晴らしく、再び自転車に跨ろうとしても後ろ髪を引かれてしまう。もしまたここまで来るとすれば、今度はここでゆっくり飯にでもしたいな。
 
 さあ、今度こそ一気に下って行くぜ!
 
 
 前半のレポでも見てもらった通り、あの廃道区間から手前は、まるで別の道かと思うほど路面のコンディションが良く、そのうえ自分の他には誰もいないこの道を自転車で下って行くのはこれ以上ない程の快感!これが味わえると思うと、また自転車でここまで登ってきたくなってしまう。
 
 往きにあれだけ時間を掛けて登った道の景色が、矢継ぎ早に通り過ぎていく。もうすぐ起点まで戻ってしまうかと思うと、少し寂しくもあり・・・。
 
 01:07PM、重力に任せた快調な下り走行を味わい、遂にチェーンゲートまで戻って来た。自転車を回収してからここまでの所要時間はちょうど40分。途中で写真を撮りながら下ってきたために、思ったよりも時間は掛かったが、それでも登りとは比較にならない程の早さだ。下りだけならもっと距離があってもいいんだけどなー(笑)。
 
 さあ飯だ!いつもの指定席に腰掛けてのんびり湯を沸かす。ここならもし熊が出ても即逃げられるから安心だぜ(笑)。
 
 あら、美味しそうな茸。ラーメンに入れてみようかな(←入れねぇよ)。
 
 今まで何度となく通過した、中津川林道から分岐する立体交差。その奥に延びる、ずっと見たかった奥秩父林道を、自転車という手段で初めて体験したが、良い意味で想像を裏切る素晴らしい林道だった。真の終点まで辿り着くことこそ叶わなかったが、それを差し引いても非常に満たされた気分だ。今日は余力があれば大河俣林道(あそこも雰囲気良さそうなんだよなー)か東谷林道(その奥の要倉沢林道もキニナル!)でも行ってみようと思っていたんだけど、廃道区間で思いの外時間を食ったこともあるし、何より今日はもう十分満足だよ(笑)。そっちはまたいずれ・・・。
 そしてこの奥秩父林道も、今の季節もじゅうぶん美しいが、紅葉の頃にはどれだけ素晴らしい景色になるかと想像すると、もう今から胸が高鳴ってしまう・・・。決めた!秋になったらまた来るぞ!