奥秩父林道、未だ見たことの無いその奥へ。
2013/06/17 埼玉県秩父市・奥秩父林道サイクリング-@
 
 去年忙しかった分の代休を、今頃になって取れることになった。今年は梅雨入り宣言が出た後も空梅雨が続いていたものの、ここ一週間程はめっきり梅雨らしい空模様になっていた。人が休みになったとたんにこの天気かよ、と思ったが、今日は一日良い天気に恵まれそうだ。好天が続くことが確実ならキャンプツーリングでも行きたいところだが、この時期の週間予報なんてぶっちゃけ直前にならないと正確なところは分からないし、とりあえず行けるときに単発でもどこか行っておくか。それじゃ早速、林道に出かけるとしよう。
 
 本日やって来たのは中津川林道。埼玉の林道巡りはひと段落ついただの、これからは県外の林道も積極的に出掛けるだのとほざきながら、今日ものこのこと埼玉の林道にやって来ましたよ。どんだけ埼玉好きなんだよ俺(笑)。
 
 今年になって中津川林道に来るのは早くも3度目だが、それでも今日の目的はいつもとちょっと違うのだ。
 
 今日の本当の目的地はここ、中津川林道本線から立体交差で分岐する国有林林道、奥秩父林道だ。
 
 この奥秩父林道、通年チェーンゲートで閉鎖されていて一般車両の通行は制限されているために、オートバイなどで走ることは出来ない。では何故ここまでやってきたかって?はい、今日はここまでの写真にBAJA君が写っていませんね。

 ・・・そう、今日がいつもと違うのは・・・。
 
 今日はサイクリングである!林道に自転車を投入するのは2010年の林道焼山線〜牛喰線以来、実に3年振りとなる。この計画、実は1年前に予定していて、色々と準備も進めていたのだが、いざ実行しようとした頃から身動きが全く取れなくなってしまい、その仕事が終わったことで、ようやく1年越しの計画を実行することとなった。
 
 今までは昼飯を食うためだけにこのチェーンゲートを越えたことはあったが、ここから奥へは足を踏み入れたことが無い。ずっと入ってみたかった奥秩父林道は、果たしてどんな景色を見せてくれるだろうか。今日は自転車の力を借りて、未だ見ぬこの林道の終点を目指す!・・・ただ、3年振りの自転車による林道走行で、体力が持つかが心配ではあるが(笑)。
 それでは9:24AM、走行スタート!
 
 ただ、終点を目指すとは行ってもこの奥秩父林道、途中で崩落してその先は廃道化しているらしく、正直どこまで進めるのかは分からないが、とにかく行けるところまでは行ってみよう。それに、そんな情報とは裏腹に、序盤の区間は驚くほどに綺麗な路面が続いている。
 
 お、これは何だ?標識か何かの名残りだろうか。緑の中に立つオレンジのポールが妙に印象的だ。
 
 道は相変わらず穏やかな路面が続いている。これだけフラットな状態を保っているのは、普段車両が通ることが無く轍が出来ないせいだろうか。
 
 日陰に入る区間では、苔に覆われて緑の絨毯のようになっている。
 
 うーん、路面を覆う苔が美しいぜ。
 
 お、野営にちょうど良さそうな場所みっけ。っていうか、実際かまどの跡あったし(笑)。
 
 起点を出発して20分程で、ようやく周囲の木々が開けた場所に出た。
 
 辺りを見渡せば、押し寄せるような山肌に埋め尽くされている。
 
 ・・・谷が深い。
 
 ここは斜面から土砂が崩れて来たようだが、ちゃんと車両が通行できる道幅が確保されているのは、定期的に整備の手が入っているからなんだろうな。
 
 あ、あれは・・・。
 
 洗い越しだ。そういえばこの辺りでは珍しいかも。
 
 その洗い越しに水を流す水路を見ると、規則的に空いた穴に沿う様に砂防ダムからの水が伝って来ている。この穴は意図的なものだろうか、何か不思議な感じ。
 
 洗い越しを過ぎると、しばらく道は水平に近い勾配で続いていく。以前、やはり自転車で行った天目山林道は、峠まで終始上りの続く道で、ほぼ全ての区間で自転車を押して歩く状態だったが、この奥秩父林道は全般的に勾配が緩く、ヘタレのナノレカワでも乗車したまま進んでいくことが出来る区間が多い。
 
 それに、フラットで幅広な路面、広葉樹の原生林といった植生とその緑に射す光のせいもあって、この奥秩父林道、県内の他の林道と比較しても、とても美しい林道という印象を持った。ここが一般車両通行止めなのは非常に惜しい気もするが、だからこそこの美しさが保たれているということもあるのだろう。
 
 10:09AM、これまででは一番荒れた路面が現れた。どうやらここは土砂崩れの痕のようだ。
 
 足元を見下ろすと、遥か下まで斜面が流されてしまっている。うっかり踏み外そうものならそのままつるーっと谷底まで連れて行かれそうだ・・・。
 
 (↑画像をクリックすると拡大します。)
 
 カーブを見渡せる地点をパノラマにしてみた。この奥秩父林道は、こんな穏やかな道がずっと続いている。チェーンゲートで通年閉鎖されている林道ということで、もっと藪に覆われていたり、落石がゴロゴロしているような道を勝手に想像していただけにこれは意外だった。そして、そんな路面と明るい木洩れ日の相乗効果で、のんびりとペダルを漕いで上って行くのがとても楽しく感じる。
 
 お、あの法面のコンクリートブロック、激しく苔生してる!
 
 いいぞいいぞ苔!はぁ〜、凄まじく美しい・・・。うおー、テンション上がるぜ!思わずアップで撮っちゃった。
 
 ・・・苔とか苦手な人いたらゴメンね(笑)。
 
 そのコンクリートブロックの脇の斜面にある倒木も、表面が苔で覆い尽くされて緑色に染まっている。何か、山奥、って感じがいいね。
 
 10:21AM、奥秩父林道に入って初めて標識を見つけた。落石注意のスタンダードな図案のものだが、その支柱は中津川林道にある古い標識同様、森林鉄道のレールが使われている。
 
 出発から約1時間、ここで少し休憩をすることにした。あの木、凄まじい程のツタの絡まり具合だな(笑)。
 
 向かいの斜面に見えるあの筋は地滑りか。緑の木々の中に地肌が剥き出しの筋が延びているととても目立つ。
 このすぐ脇にある日陰の路肩に転がる岩に腰掛け、ヒグラシや小鳥の鳴き声に耳を傾けしばしクールダウン。いくらときおりペダルを漕ぎながら進むことが出来るとはいえ、やはり平地よりは格段に進むペースは遅い。まだまだ先は長そうだ。
 
 うお!は、橋が落ちている・・・これは通行できるのか?と思ったものの、その脇にはちゃんと迂回路が造られている。それにしてもいつ頃落ちてしまったのだろう。
 
 橋のすぐ脇に生える木は、そのまま端に食い込むように成長を続けている。白い塗料が綺麗なままの欄干(つーかガードレール?)はそんなに古くは見えないが、この前後に有った橋が昭和43年の竣工と書かれていたので、恐らくは同年代の物だとは思うが、竣功してから割とすぐに落橋してしまったのだろうか。
 
 深い谷に沿う道をまだまだ進んでいく・・・。
 
 この橋では、ガードレールが滅茶苦茶に破壊されている。痕跡こそ見られないが、土砂崩れか何かの影響だろう。
 
 これ、凄く気に入ってしまったのだが、全身に苔を纏った木が、まるで自然の縁石のように路肩に寝かせてある。あう〜、なんて美しいのだ・・・。
 
 前方が明るくなって来た、と思ったら、大掛かりに斜面を削り取った場所に出た。この道幅を生み出す為にこれだけ高く削るということは、それだけここの地形が急峻だということなんだろう。
 
 と思っているとその先で、この道に入って一番視界の開ける区間に出た。この先に見えているカーブの路肩が少し谷側に突き出たスペースになっているのだが、そこからは目を奪われる景色が・・・。
 
 これは凄い!奥秩父林道の起点が既にそれなりの標高があったとは思うが、そこから自転車で上って来るうちに、いつの間にかこんな景色が観られる場所まで上ってきていたとは。ひしめき合う山々のうねりにまばらに落ちる雲の影が、ため息が出るほどに美しく、しばらくここで立ちつくしたまま見入ってしまった。
 
 とは言ってもちゃんとシャッターも押す(笑)。この場所、切り立った崖のようになっていて、下を見ると足がすくむ程なのだが、おかげでギリギリまで自転車を持っていってフレームに収めると、なかなか画になるでしょ。今日はとにかくこの奥秩父林道の最奥を目指すことだけを考えていたので、まさか途中でこんなにも素敵な景色を見ることが出来るなんて思いもしなかった。何だかここをゴールとしてもいいような気分だが、本当の目的のためにはまだ先に進まなければならない。
 
 再び前進を始めると、道の脇に道標が立っている。「十文字小屋」と書かれた方向に目をやると・・・。
 
 えっ・・・嘘だろ?登山者はこんなとこを登って行くのか?
 
 ・・・と思ったら、そのもう少し向こうにちゃんと梯子があった(笑)。その先にも道筋に梯子が沿わせてあるのが見える。ちょっとだけ登ってみたが、全くの素人が入って行けるような場所ではなさそうなので深追いは止めておこう(笑)。
 
 11:28AM、起点を出発して約2時間、突然路上にバリケードを置いてある地点に着いた。恐らくは谷に落ちないようにとのことでロープで固定されているが、こんな奥まで来てこんなものが設置してあるとは意外だった。話しでは確かに、途中で崩落により廃道化しているということだが、これまではそんなことを全く感じさせないほどの穏やかな道が続いていた。この先からいよいよその廃道区間が始まるのだろうか。
 
 バリケードを跨いでカーブを越えると、その先で路上に盛り土をして車両が通行できないように処置がしてある。とはいえ今日は自転車なので、この程度の盛り土は何事も無く自転車を担ぎあげて乗り越えることが出来る。

 しかし、その盛り土を越えた先で・・・。
 
・・・始まった。
 
Aへ続く。