未知の作業道と、既知の林道の未踏区間へ
2014/11/23-@ 埼玉県秩父市・社営林作業道下木影線
 
 先週、埼玉県内の林道で取りこぼしの判明した路線を回るために秩父さくら湖周辺を訪れて、そのレポをアップしたところ、タマチャリンさんからBBSに、その周辺のエリアについての情報が寄せられた。内容の詳細については、この書き込み以降を参照していただきたいが、概略としては、大久保谷を辿った先にある、大ドッケ林道と呼ばれる道に付いてのことだった。
 秩父さくら湖の南側に位置するその道は、タマチャリンさんの貼ってくれたGoogleEarth の航空写真を見ても、大久保谷の東側の斜面に、まるでダンジョンのように張り巡らされている姿が鮮明に写され、一種異様な存在感を放っているが、不思議なのは、そもそもここへ至る車道が無い、ということだった。確かに地理院の地図を確認しても、この「大ドッケ林道」は実線の道路として描かれているのだが、そこへと至るための道は、林道大久保線の終点から延びる破線、つまり徒歩道しか描かれていないのだ。しかも、この道について検索してヒットした、山歩きでこの道を歩いた人のブログを見ると、この破線区間の先に放置車両なども存在しているらしい。その車両は、一体どうやってそこに行ったんだ・・・?
 
 と、そんな謎深い大ドッケ林道について触れているブログの中で、もうひとつ(ナノレカワ的に)重大な情報を見つけてしまった。何と、この栗山地区に今まで存在を把握していなかった作業道があるらしい・・・!
 山歩きド素人のナノレカワが大ドッケ林道へと踏み込むには、ある程度の下調べや準備が必要そうな気はするが(だっていきなり行って迷って遭難でもしたら怖ぇーじゃんよー)、この作業道は、あくまでも車道続きの道のようなので、いつも通りのノリで訪れても大丈夫だろう。このエリアには先週訪れたときのやり残しもあることだし、さっそく2週連続となる秩父さくら湖までやって来た。
 
 県道73号線の浦山大橋を渡り、そのままさくら湖沿いに進むと秩父市営バスの栗山バス停がある。ここから分岐するこの道の先に、その作業道はあるらしい。この入口は確かに見覚えはあるが、この分岐地点には林道の標識なども無く、入っても集落に行きついて終わりとか、そんな空振りしそうな雰囲気を感じていたために、今の今まで入ったことが無かった。やはり道を見掛けで判断してはいけないのだ!
 
 道は、起点から結構な斜度で登りつめ、眼下の県道との高低差を一気に稼いでいく。現時点で詳細は不明だが、この道も嘗ては林道として開削されたことは間違いないだろう。
 
 その道の途中には民家が立っているが、既に廃屋となっている。ここは栗山集落といって、さくら湖対岸の茶平集落や山掴集落などと並んで、廃墟マニアの間ではそれなりに名の知れたスポットであるようだ。
 
 県道からの舗装路を700m程進んできたところで、道がダートに切り替わる。こここまでも舗装路とはいえじゅうぶんに林道クラスの道だったが、こから先は斜度もきつくなり、一気に作業道レベルの道へと姿を変える。
 
この写真で、この道が如何に急勾配で駆け上がっているかがわかるかなあ?とはいえ、この辺りは途中でBAJAを停めて写真が撮れるくらいの余裕があるだけまだマシなんだけど。
 
 急勾配なうえに山肌に沿った細かな蛇行も多く、更にはガードレールも無いので、走行には結構な緊張を強いられる。路面には真新しいキャタピラの痕も見えるが、この先で何か作業でもしているのだろうか。
 
 と、その直後から本格的に道の傾斜がきつくなり、しばらく写真を撮ることも出来ずに登り続け、小さな切り通しを越えた地点でようやく停車できるまでに傾斜が落ち着いたのでちょっと休憩。
 
 この切り通しの直前は、あまりの急斜面のためにコンクリート舗装となっているのだが、その路面には滑り止めのためにほうき目の加工を施すという念の入れよう!斜面に生える木との角度の対比で、この道がどれほどの急斜面かが伝わるだろうか。ここ、本気で怖かった・・・!
 
 その先で、道は少しのあいだ平坦な区間を取り戻す。
 
 日陰の中、剥き出しの岩肌と葉を落とした木々が描き出す寒々しさが、いよいよ冬が訪れるということを感じさせる。この雰囲気、悪く無いぜ。
 
 なんて、呑気なことを考えている余裕はすぐに打ち消されるのであった!この先で、再び道は急勾配の蛇行を繰り返し、とてもじゃないが、停車して写真を撮るなんてことは出来なくなってしまった。こんなところで停まってしまったら、再発進するのも大変だ。とにかく、失速して転倒なんてしないようにと、極度の緊張のなか細心の注意を払って登っていく。やがて、稜線を跨ぐカーブの先に明るい日向が見えてきた。あそこまで行けば道の斜度も落ち着いているように見える。何とかそこまで登ってくると、それは突然現れた。
 
うおおおおおっ!ついに来たっ!
 
活目せよ!
 
ここがッ!
ここがッ!
 

社営林作業道下木影線だッ!
 
 道がダートに変わって約1.2km。そうそう、ここだよ!大ドッケ林道について検索したときに見た場所は!まさか今になって、まだ知らなかった埼玉の林道の標識を目にするとは思わなかったから、ここの写真を見つけたときは本当に興奮したぜ!
 それに、ここまでの急勾配の道を、薄暗い日陰の中おっかなびっくり登って来てからの、この地点に至ってのこの陽辺りの良い区間に突入するなんて、なんかもう最高のシチュエーションじゃないか!
 そういえば、ウェブで見たこの地点の写真では、道の両脇に立つポールにチェーンが渡されていたのだが、たまたまなのか、今はチェーンが掛けられていない。これまで見てきた作業道は、そのほとんどが起点をチェーンゲートで閉鎖されていた。そのため、作業道については基本的に起点の確認のみに留めるというのがこれまでのナノレカワのスタンスだったのだが、これはもう行ってみるしかないだろう!
 
それにしても、ここまでの区間は本当におっかなかったなあ・・・。で、下木影線の標識こそここに立っていて、あたかもこの地点が作業道の起点のように見えるけど、もしかしてさっきの舗装からダートに変わる地点が、既に作業道の起点だったんじゃないだろうか、って思えるくらい険しい道だった。やっとここまで来たばかりでこんなこと言うのもなんだけど、もうここにBAJAで来ることは無いかも知れない・・・っていうか来たく無い(笑)。
 
 なので、もう来なくても良いように(笑)、今日はこの道と景色をしっかりと目に焼き付けよう。
 ここは見ての通り周囲が開け、先ほどまでの区間を登って来たことへのご褒美のような景色が広がっている。
 
 道の外に目を遣ると、深い谷の遥か下方に、ついさっきまで走っていた県道73号線が見えている。あれだけの急勾配の道を一気に登りつめ、いつの間にかこんな高い場所まで来ていたようだ。これだけ開けた道にこんないい天気の日に来れたなんて、なかなかタイミングが良かったな。
 
 標識を越えると周囲の景色も開け、道の外には常に深い谷が見えている。ただ、路肩には獣除けのネットが張られているのでそれほど怖さを感じることも無い。・・・まあ、もし実際ここに倒れ掛かったところで、とてもじゃないがガードレールの代わりにはならないだろうけど。
 
 先ほどの標識の地点から400m程進んでくると、何やら斜面で工事をしている地点がある。今日は休工だが、どうやら治山工事中らしい。これがあったためにチェーンは外されていたんだな。
 
その地点から斜面を見上げると、新しい地滑り防止の擁壁と、植林された苗木が見える。この地滑りを起こした斜面の復旧工事のようだ。
 そして、ここから先のカーブを越えた路上に、重機が停まっているのが見えている。このままBAJAで進んでいくのは無理かも知れない・・・。
 
 というわけでBAJA君、ちょっとそこで待っててね。ここから先は歩いていくことにする。
 
 その重機のところまで来ると、その足元の路面には、何の為かは分からないが、大きな石の瓦礫が積み上げてある。BAJAでは無理かも、と思ったのはこの瓦礫の所為もあったのだ。歩くだけでも気を使うその石を、重機の脇をかいくぐって越えて行く。
  
 重機を越えると道は再び日向となり、路面も穏やかで斜度も落ち着いているのだが、いかんせん林道の歩きが久しぶりな所為か、早くも息が上がって来た。気温はそれほど高くないのだが、だいぶ身体も温まっている。
 
 思わず深く息を吸い込んで見上げた空に、一筋の飛行機雲が流れて行く。
 
 今歩いてきた道を振り返ってみる。標識を越えてからは、それまでの急坂が嘘のような穏やかな道が続いている。せっかくならここもBAJAと一緒に通りたかったなあ。
 
 ん、何だあれは?斜面の上に、丸太で組まれた簡素な建屋の骨組みらしきものが建っている。嘗ては屋根でも付いていて、資材でも置いていたのだろうか。
 
 ふと谷底から水の音が聞こえてきた、見下ろすと、遥か下方に滝のような流れが見える。回りに他の音が一切しないこともあって、あれだけ離れているとは思えないほど大きく響いていた。
 
 はあ・・・それにしても何処まで続いているんだろう。路面が穏やかなのはせめてもの救いだが、前方から強く照り付ける、まるで目眩ましのような陽射しにも、容赦なく体力を削がれていくようだ。
 
 進む先の斜面には、まだまだ道のような筋が見えている。い、一体どこまで俺を連れて行くつもりなんだ!?
 
 なんて思った矢先、目の前に見えているカーブを越えた先で、道は突然途切れていた。
 
 真新しい石積みの擁壁の上端に向けて、路面がすぼまるように集束して終わっている。ここが車道としての実質的な終点のようだ。
 
 さらにその上部にも擁壁が組まれ、樹脂のパイプで簡易的に組まれた排水路を沿わせている。本当につい最近造られたばかりのようだが、こんな奥地にまでちゃんと維持管理の手が入っているのには驚いた。
 
 それにしても、ここまで歩き続けているうちに、体中がすっかり汗で濡れてしまった。この擁壁の上に腰掛けて、身体を乾かしつつしばしのクールダウンだ。
 
 先ほど見えていた、ここから先に続く道のような筋は、どうやら単に斜面が崩れた痕だったようだ。
 
 ・・・って思ったんだけど・・・。
 
 この先の藪の中に、さっきも見たのと同じような木組みの施設跡が見えてるんだよなあ・・・。何であんなところに・・・。
 
 で、ここからは帰って来て写真を整理してから思ったことなんだけど・・・。
 
 今俺がいるこの地点って、その先にある元の路面から、不自然に角度を付けて登ってきてるんだよなあ。もしかして、あの路面の水平線上に嘗ての路面があって、それが地滑りで崩落したために、その斜面を復旧させるためにこの擁壁の高さまで土を盛って工事をしたってことなんじゃ?さっき、ここまでの途中で見た建屋は道より高いところに建っていたが、本来の道があの高さのまま延びていたとすると、この先にある建屋との位置関係もさっきのそれと合致するんだよなあ。そうなるってーと、やはりあの先の筋が車道の続きだったんじゃないか、って思えて来てしまうわけなんだけど・・・。あー、なんでこの場で気付かなかったんだろ。って、気付いていたところで、あの藪の中を進んでいくのもそれはそれでアレなワケだけどさあ・・・うーん、モヤモヤする・・・。
 
 ま、今更そんなことを行ったところで後の祭りなワケでございます(泣)。まあ、仮に嘗てここから先にも車道があったとしても、その先で大ドッケ林道に繋がっていた、なんてことは無いとは思うけどね・・・。
 さて、それではそろそろ現地へと戻りまして・・・。
 
 だいぶ身体も落ち着いてきたので、そろそろここを引き返すとしよう。
 
 やはり戻りは下り続きなだけあって全然楽だなー。周りを見る余裕が登ってるときと段違いだ(笑)。それにしても、こんなところに今までその存在を全く知らなかった作業道があったなんて本当に驚いたよ。
 
 おおっ!鳶が飛んでる!鳶を見ると、山に来たな!って感じがして好きだ(笑)。
 
 BAJA君、ただいまー。
 と、ここまで戻ってきたところで、下からバイクの排気音が響いてきた。まさかここでバイクに会うとは思わなかったので驚いたが、XR230乗ったその人は地元の方だそうで、春頃にもこの道に来たことがあって、あれからこの先が延びていたりするかな、と確かめに来たのだそうだ。すぐそこに重機が停まっているのと、それを越えてもこの先2〜300mのところで道が無くなってますよ、と伝え、お互いこの場を去ることにした。
 
 再びBAJAに跨り、下木影線の標識の地点まで戻って来た。再度訪れることがあるかどうか分からないこの場所で(笑)、もう一度BAJA君と記念撮影だ。ここからはまた鬼の下りが待っているからな、気を引き締めて行かないと。
 
 それにしても、まさか今になって新たに埼玉県内の林道(作業道だけど)、それも標識付きの路線を見つけることが出来るなんて夢にも思わなかった。しかも、途中までとは言えBAJAで進むことも出来て、今日はもうサイッコーの気分だぜ!
 
 ・・・そういえばこの路線名の「下木影」って、何て読むんだろ?
 
 
 さてこの後は、先週取りこぼしていた分を補完しに行くとしよう。
 
Aへ続く。