”大ドッケダンジョン”踏破計画・第1回
2015/05/17 埼玉県秩父市・大ドッケダンジョン-@
 
 「大ドッケダンジョン」・・・である。
 
 普段からこのサイトに足を運んでくださっている方の中には、それが何であるか既にお分かりの方もいらっしゃるかも知れないが、ここで改めて大ドッケダンジョンについて簡単に説明をさせていただこう。
 
   秩父市の浦山地区にある秩父さくら湖沿いに、大久保橋の袂から分岐する林道大久保線がある。地理院地図を見ると、その林道の車道区間の先には、点線区間、すなわち徒歩道が描かれている。大久保谷に沿うように延びるその道からは、途中で大久保谷を渡って分岐するもう一本の道があるのだが、地理院地図を見ると、不思議なことにその道は、何と車道として記されているのだ。そして、徒歩道経由でしか辿り着けないはずのその車道の末端は、そのまま車道として途切れ、その先には徒歩道すら描かれることなくどこにも通じることなく終わっている。
 Googlマップで航空写真を見ても、大久保谷の東側の斜面に、まるでダンジョンのように張り巡らされている道の姿が鮮明に写され、一種異様な存在感を放っているが、これだけくっきりと映し出された車道へと至る道が徒歩道しか存在せずに外界から隔絶されている、ということがあまりにも不思議すぎる。この車道は一体何なんだ・・・?
 
 ・・・というこの道のことを、タマチャリンさんからのBBSへの書き込みによって知ったのが去年の11月。そのあと、この大ドッケダンジョンについての情報を求めて色々なブログなどを漁ってみたが、登山者の記事として大久保谷周辺のことが記されたものはいくつかあったものの、我々が「大ドッケダンジョン」と呼ぶ道そのものについては、かなり断片的な情報しか得ることが出来ず、その数少ない情報からは、そこへ至る道のりの途中には大崩落があるとか、少なくとも、登山についてはズブの素人のような今の自分にとって、容易く立ち入ることが出来る様な道とは読み取ることが出来なかった。
 そして時期的にも、これから冬を迎えるという時期に、そんな険しい道へ乗り込むのが躊躇われたこともあり、そのままあれから半年の時間が流れてしまった。
 
 そんな折、TKさんから一通の連絡が入った。何と、大久保線の先の点線区間を歩いて、その先にあるデルピス号を見てきたというのだ。マ、マジか!
 今まで調べたブログから得た数少ない情報によって頭の中に思い描いていたルートでは、そういった物件は全て崩落箇所の向こう側にあると勝手に思い込んでいたので、そういった場所を通過せずにデルピス号を見てきたというその報告には正直驚いた。そして、それを聞いてもう居ても立ってもいられなくなり、その連絡を貰った次の週末に、いよいよ現地へと向かうことにした。
 
 さあ、早速やって来ました、林道大久保線です。それにしても、去年の秋にここを再訪したときは、まさかそれからこんなに何度もここを訪れるようになるとは思わなかったな。
 今日は午後から別の予定があるため、あまりここに長居をすることは出来ないのだが、とりあえず行けるところまで行ければと思い、まずは徒歩で問題なく進めるところまで行き、実際にこの目でこの先の道の様子を見て、今後の計画を立てる為の足掛かりになればと思う。
 
 ・・・ですよね〜。
 
 起点から200m程進むと、道はゲートで閉ざされている。以前来た時はたまたまゲートが開いていたために、BAJAでこの車道の終点まで入ってしまったが、もともとこのゲートが閉まっているのは想定内だ。今日はここから先は歩いて進む。
 
 というわけでBAJA君、ちょっとここで待っててね。
 
 ゲートを越えて歩きだすと、ガードレールの外側の斜面の下の方から、なにやら物体が移動しているような物音が聞こえてくる。1枚上の写真には写ってはいないが、BAJAの手前に1台のライトバンが停まっていた。き、きっとその持ち主が何かしてる音だよね・・・。
 そして、他には誰もいない道を一人歩いていくと、その路上には至る所で獣のウ○コが散乱している。基本ビビリーな俺にとっては結構ヘビーな光景だぜ・・・。
 
 道の外を見下ろすと、ネイチャーランドの脇を流れる大久保谷の堰堤から沢の流れる音が響いてくる。
 
 その上に視線を移すと、結構な規模の地滑りで山の斜面が流されてしまっているのが見える。周りの斜面が新緑で覆われていることもあって、かなり目立つ光景だ。
 
 途中、路上で日向ぼっこしているヘビを跨いだりしながら歩き続け、やって来たぞ・・・。
 
 荻の久保トンネルだ。延長252mのこのトンネル、途中で左手にカーブしているために入口から出口を見通すことが出来ず、照明も無い為に内部は真っ暗で、前回BAJAで通過した時も結構ビビりながら通過したのだが、今日はここを歩いて通過します・・・。
 
 真っ暗な闇の中を、リュックに付けた熊鈴の音だけを響かせて歩く。実際歩いたらもっと恐怖を感じるかと思ったのだが、いざ入ってみると、最初こそ少しひるんだものの、意外と落ち着いて進むことができた。暗闇のトンネル、意外と悪くないかも知れん。まあ、好き好んで入ろうとは思わないけど・・・。
 
 トンネルを越えてしばらく進むと、路面が未舗装に変わる。あのカーブを越えれば大久保線の終点はすぐそこだ。
 
 ここが大久保線の終点だ。今日はここに1台のトラックが停まっているが、やはりここは常に関係者の出入りはあるんだな。
 
 ここから先も、軽トラ程度なら通行できそうな細い道が延びている。実際、この先の路面にも4輪の轍が残ってはいる。だが、すぐその先のカーブの向こうで、路上に1軒の小屋が立っている。
 
 この小屋自体は、資材置き場にでも使われていそうな小さなものだが、この為にここから先は軽トラといえども通過することは出来なさそうだ。その為か、この先へ進む為のものだと思うが、小屋の端に1台のスーパーカブが停めてある
  
 そして、その小屋の先の路面は、小屋の脇の道幅を引きずるようにシングルトラックとなって延びている。
 
 ここまで来ると最早車道としての面影は無く、ただ普通にハイキングコースを歩いているような気分になってくる。
 
 ところどころで路肩に石垣が組まれた地点を通過する。これも車道の名残なのだろうか。しかし、それにしては幅員が余りにも心許ない・・・。
 
 これは何の為の道具だったんだろう。形状と、ハンドルが付いているところを見ると、何かを巻き上げる為のものなんだろうとは思うが・・・。
 
 ここは路肩が少し崩れたのか、道幅が狭くなっている。ただ、元からの幅員もやはりそれほど広くは無さそうだ。
 
 おおっ、木橋だ!この道の途中で、小さな谷を渡る場所では何度かこのような木橋が出てくる。強度的には問題ないかも知れないが、ここを軽トラで渡れと言われても俺はヤだぞ。
 
 それにしても、緑の溶け込んだ空気に包まれたこの景色、実に素晴らしい。全体的に道の勾配も緩く、ハイキングコースとして見れば実に歩きやすく楽しい道だし、仮に「嘗てここにトロッコのレールが敷かれていた」とか言われたら、本気で信じてしまいそうな程だ。
  
 ただ、実際こうしてここを歩いてみると、ここが嘗ては車道だったと言われれば、やはりそれは俄かには信じ難いものはある。ここなんて、こんな狭い道の路肩を丸太で補強してあるんだぜ・・・。
 
 お、まだ真新しいタイヤの痕がある。これはさっきのカブの物だろう。やはり、何らかの作業の為に定期的にこの奥に入っているらしい。
 
 ふと道の外側に、谷に迫り出す岩が見えた。その上には木が成長しているが、形状的にも平らなのであの上に降り立てそうな気がする。実際、写真の右手に写る伐られた幹が積まれた辺りから降りられそうだったが、さすがに実行するのは止めておいた・・・。
 
 道は一旦植林の杉林を通り抜ける。あくまでも素人目線だが、斜面の様子と道の幅を見ても、やはり最初からこの道幅で作られたようにしか見えない。
 
 その先には、大岩の脇を道がかすめる場所がある。
 
 そしてそのすぐ先でも、岩のすぐ脇を道が延びている。この岩と道幅を見ても、やはり嘗てここが車道だったなんて思えない。
 
 ・・・何でさっきからしつこいくらいに「ここが車道だとは思えない」なんて言い続けてるかって?実は以前、某所に大ドッケダンジョンについて問い合わせたことがあって、その中で、今いるこの点線区間について、
 
 「嘗ては軽トラ程度は通行できるようになっていたが、路肩の決壊などによって現在では自動車の通行は出来ない」
 
 という旨の回答を得ていたからなのだ。だが、ここまで歩いてきただけでも、やはりここが嘗ては軽トラなどが通行出来た道だというのが、自分の目で見たからこそ俄かには信じがたい・・・。
 
 確かに、こんな路肩の石垣を見ると、車道として造られたというような雰囲気を感じなくもないし、ここに限って言えば道幅も軽トラの通行が可能そうではあるが、ここまでの道のりを考えると、やはりこの道を軽トラが通っていたとはとても・・・。
 「もしかして、大ドッケダンジョンの秘密を隠す為に嘘をつかれてるんじゃないのか!?」
 ・・・何てことをつい考えてしまう(笑)。
 
 再び木橋が現れた。その橋脚に使われた材木はまだ生木の名残りのある程の色艶で、やはり定期的に手が入っていることだけは分かる。
 
 その木橋の下に続く谷を見る(ちなみに、写真の左上の岩肌に白っぽく写っているのが今歩いてきた路盤です)。おおお・・・切り立った岩肌を包むように広がる木々の葉が、陽射しを透かして周囲の空気に淡い黄緑色を纏わせる。何て美しい景色だ・・・。
 
 おお、ここもまた素晴らしい!この景色を見る為だけにここを訪れてもいいと思えるくらいだが、まだここで引き返すわけにはいかない。
 
 しつこいようだが、ハイキングコースとして見れば本当に良く出来た道だ。だが、この先をこのまま奥まで進み続けるには、崩落などによってかなり厳しい場所を越えなければならないようで、お気楽ハイキングで訪れるとしたら、どこかで来た道を引き返さなければならないだろうな。
 
 またしても木橋の登場だ。ここは今までの中でも一番橋らしい見栄えをしているが、だからこそ、木橋としての心許なさというか、そういうのが如実に出ている気がする・・・。
 
 歩き始めて1時間弱、道が二股に分かれる地点に出た(現在地はこの辺り)。え、これどっちへ行けばいいんだ?左手の道は急勾配で下っているため、恐らく本線は右手に延びている道だと思うが・・・。
 
 まあ、下へ降りる道もとりあえずちょっと覗いてみるか、と思い左手の道を進む・・・。
 
 
”!?”
 
Aへ続く。