”大ドッケダンジョン”踏破計画・第1回
2015/05/17 埼玉県秩父市・大ドッケダンジョン-A
 
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 左手に下る分岐の先で、突如現れた作業小屋のような建物。これはどうやらこの山林を管理する会社の詰所のようで、事前情報からもこの建物のことは知ってはいたのだが、こんなところに建っていたのか。
 そして何より、その前に停まっている軽トラ、である。いくら軽トラとはいえ、大久保線からここまでの道のりを見る限り、とてもこれだけの車両が通行出来る道では無かったように思えるのだが、この軽トラは一体どこから来たのだろう?
 
 その詰所の前で、道はV字に折れて更に下って行く。ここから先は路面の轍もはっきりと残り、まさに「車道」そのものの雰囲気を醸している。
 
 その下りの道の脇には、何故か犬が飼われていて、前を通過すると大声で吠えてきた。こうして元気そうに生きている姿を見ると、ちゃんと世話はされているようだが、何故こんな、毎日あの道を通わなくてはならないような場所で飼われているのだろう?もしかしてあのスーパーカブはその為のものなのか?
 
 そのすぐ先で道は右手にカーブしながら下っていくが、そのカーブの地点に1台の車両が停めてある。
 
 林内作業車デルピス号だ。先程の詰所もそうだが、こういった物件は全て、この先にあるとされる崩落の向こう側のものだと思っていたのだが、自分の足でここまで歩いてきて、だんだんとその位置関係を理解し始めた。
 デルピス号・・・そうか、大久保線からここまでの道も、軽トラは無理でもこのデルピスなら通行出来るのかもしれない!ここまでの道は、このような車両の為のものだったのか。
 ・・・ただ、それではやはり何故ここにあの軽トラがいるのかの説明はつかないが・・・。
 
 デルピス号を過ぎると、一旦下りの斜度が落ち着くように見えた。その先から、沢の流れる音が聴こえてくる。
 
 そして、その沢にもやはり木橋が掛かっている。その路面には、軽トラがギリギリ1台通行出来るだけの幅の轍が刻まれている。こ、怖すぎだろ・・・。
 
 その橋の下には、大久保谷へと注ぐ支流が流れている。上流を見ると、新緑の中を通過した陽射しが苔生した岩を斑に照らし、透明度の高い沢と相まって、こんなにも艶やかな景色を作りだしている。
 
 沢を越えると、道は平坦さを保ちながら先へと延びている。ここなどはごく普通の林道と言ってもおかしくないような路面だが、こんな場所にこんな道が延びているのが不思議でならない・・・。
 
 先程の沢から程なく、道は再び橋を渡る。山と高原地図で確認したところ、ここはマツマラ沢というらしい。
 
 おおお・・・何と美しい景色だ!先程の沢もじゅうぶんに素晴らしかったが、このマツマラ沢の前ではその比ではない。こんな写真一枚では、この場所の素晴らしさを到底伝えきれるものでは無いのが何とももどかしいが、ここに来ることが出来ただけでも良かったと、本当にそう思ってしまうほどの景色だった。この沢沿いに腰掛けて飯でも食べたら最高だろうなあ。
 
 ただ、この先にも見知らぬ道が延びている以上、まずはそちらを優先して進むのだ!
 
 実は、この時点ではしっかりと地形図などの確認もせず、何となく勾配などの雰囲気から、先程の分岐から右手の道が大ドッケダンジョンへと至る本線だと思い込んでいたのだが、ここにこれだけしっかりとした車両規格の道を見つけてしまったが為に、成り行き上ずるずると進んできてしまった、という感じなのだ。
 
 この道は一体何処まで延びているんだろう?斜面を見上げると、だいぶ上の方で明るくなっていて、その辺りで稜線に出そうな雰囲気がある。あそこまで行けば、この道に関する何かしらの展開が見えるかも知れない。とりあえずあそこまでは上ってみるか・・・。
 
 先程までの穏やかな歩道から一転、道は九十九折となり、急峻な斜面を一気に上り詰めて行く。そしてその道は、作業道レベルの規格とはいえ、しっかりと4輪の轍も残り、先程の軽トラでもじゅうぶんに通行が出来るだけの道幅が確保されている。
 
 実際、ここにはまだ真新しいタイヤの痕が刻まれていた。やはりここは今現在、何かしらの作業が行われている現役の作業道なのか。
 
 この時点でこの道が何処へ続いているのか全く理解していないのだが、ここまで上ってきた以上、もう今日はここを上り続けるしかない。ただ、今日はあまり残された時間もないので、それまでに大ドッケダンジョンへと至る何かしらの情報でも得られればいいが・・・。
 
 道端に、小型のユンボが置いてある。車体には、先程の詰所の所有者と同じ社名が書かれていたが、これはもう長いこと使われたような形跡は見られなかった。
 
 カーブの外に、切り通したと思われる岩の名残りがせり立っている。その奥の新緑と相まって実に印象的な光景だが、その手前には排水溝があり、こんな場所に似つかわしくないほどにしっかりと造られた道なのだと思わせる。
 と、そんなことを思った矢先、そのカーブを越えると・・・。
 
 驚いたことに、それまでの九十九折の斜面から一転、道はかなり広々とした平坦な区間を延びるようになる。そこには2台の軽トラが置かれていたが、見たところこれらはいずれも、既に廃車となっているようだった。
 
 位置的に見ても、道は一旦稜線上まで上って来たようだが、ここなどは、作業道どころかごく普通の林道と言ってもいいくらいの見栄えだ。それにしてもまさかここまで上ってきたところで、これだけの光景が広がっているのは本当に意外だった。一体何なんだこの道は・・・。
 この写真に写る道の奥で、道は右手にカーブして、再び僅かに斜度を上げて行く。
 
 その先で、俄かに道の外側が明るくなってきた。
 ・・・んんん?あの斜面、ちょっと様子がおかしくないか・・・?
 
???
 
 ちょっ・・・道・・・。
 
うわあ!な、何だこれは!?
 
 現在の高度はおよそ792m、大久保線のゲートから歩き始めておよそ1時間20分、突如目の前に現れたこの大崩落により、道はここで途切れ、完全に通行不能となっていた。写真左下に写る路盤との比較で、ここがどれだけの規模で崩れているかが分かってもらえると思う。
 ・・・そうか、下から見上げた時は全くそんなことを思いもしなかったが、大久保線から見えていた地滑りはここだったんだな!
 
 崩落全体の幅は30m程はありそうだが、良く見ると、その向こう側に、この道の続きの平場が見えている。
 
 うおおおお、マジか!あの先は一体どうなっていて、一体どこまで続いているんだ!?物凄く気になるじゃないか!
 
 ただ、現地ではこの崩落の迫力に圧倒されてしまい、何より今日はこの辺りでそろそろタイムアップが近付いてきていたので、ここでそれ以上のことは考えられなかったのだが、帰宅後に改めて写真を見返すと、この崩落の上を巻いていけば、割と簡単に向こう側へ渡れそうではあった。これはいずれ向こう側の景色も見に行かねばなるまい・・・。
 
 その崩落の奥には、三つの頂が並ぶ山が見えている。あれが三ツドッケ、すなわち天目山か。この大久保谷沿いの登山道を経由してあの天目山へと辿り着くことも出来るようだが、さすがに今の自分にはちょっと壮大過ぎてそこまで考えられない。いずれはそういったルートも辿ってみたいとは思うが・・・。
 
 それではそろそろ引き返すとしよう。次回はちゃんと時間を取って、あの崩落の向こう側へ行ってみたいものだ。
 
 帰りに再びマツマラ沢で足を止める。ここはその景色の美しさに素直に感動してしまった。ここまでなら軽いハイキング気分でも歩いてこれるので、こういう景色が好きなら是非一度目にしてもらいたいと思う。
 
 詰所前の分岐まで戻ってきた。この分岐を右手に進んで行くと、現在では倒壊した嘗ての営林署小屋があり、その先で明瞭な道が途絶えている、という情報は得ていた。実際にここへ来るまで、そちらのルートが大ドッケダンジョンへと至るためのルートだと思いこんでいたのだが・・・。
 
 あとは何も考えず、この美しい景色を眺めながら戻って行こう。
 
 白い岩肌が美しすぎる・・・。
 
 メジャーな登山道なら、週末ともなればきっとたくさんのハイカーで賑わうのだろうが、ここでは他にいっさい人の姿を見ることは無かった。
 
 荻の久保トンネルまで戻ってきた。来る前はあれだけビビっていたトンネルも、一度通過してしまうと再び通過するのが何だか楽しみにすらなってくるから不思議だ。
 
 トンネルを抜ければ、BAJAを停めたゲート地点まではもうあと少しだ。
 
 改めて、ネイチャーランド脇を流れる沢と、その上に位置する崩落を見る。
 
 やはりさっきの崩落は、ここから見えているこの崩落だった。改めてじっくり見ると、確かに木々の中に、道の線形に沿った筋が見えている。そして、あの崩落のすぐ上が稜線となっていて、そこを辿っていけば比較的簡単に向こう側へと渡ることは出来そうだ。
 
 BAJA君、ただいま。ここから歩き始めて、往復で約2時間半の道のりだった。
 
 崩落地点からの帰り道に、スマホのアプリでトラックログを取ってみた。現在地の印が大久保線のゲート地点、マツマラ沢を渡り「障子岩ノ滝」の文字の下でジグザグに続く九十九折ルートの末端が先程の崩落地点だ。
 
 そしてこちらが、冒頭でもリンクした地理院地図だ。大久保谷の東側に記された車道区間が、目指す大ドッケダンジョンなわけだが・・・感の良い方ならとっくにお気づきだったとは思いますが(笑)、そう、今回辿ったルートこそが、まさに我々の目指す大ドッケダンジョンへと続く道だったのだ!
 事前に数少ないブログの情報などは見ていたものの、やはり実際に現地を訪れてみて、ようやくルートの位置関係などがはっきりと理解出来た。
 
 と言う訳で、本日の探索はこれで終了だ。僅かな時間ではあったが、大ドッケダンジョンへと至るルートと、あの崩落地点が確認出来ただけでもかなり意義深い時間だった。
 それでも、この道の先に何故軽トラが存在するのか、その奥で今でも何かしらの作業が行われているのかなど、大ドッケダンジョンに関する謎は数多い。次に訪れるときは、必ずあの崩落の向こう側を目指し、それらの謎にアプローチするぞ!
 
 
 <※おことわり>
 当レポートで紹介した”大ドッケダンジョン”ですが、後日某所に問い合わせたところ、地元の建設会社が開設した作業道(私道)であることが判明しました。よって、当サイトではこの道についてこれ以上のレポートは行いません。ご了承ください。