愛しの中津川林道
2016/11/03-@ 埼玉県秩父市・中津川林道
 
 皆さまこんにちは、ナノレカワです。
 今年は春頃からずっと忙しい日が続いていて、先月辺りからようやくツーリングに出かけられる余裕が出てきたわけなんだけれど、俺がそんな生活をしている中、あれは9月のことだったか、中津川林道が台風10号の影響によって土砂崩れを起こし、通行不能になってしまったという知らせが飛び込んできた。
 やがてwebにも幾つかの現場の写真が上げられ始め、それらに写る現場の様子は、絶望的な量の土砂に路面が覆い尽くされ、復旧には相当の期間を要するであろうことを否が応にも思い知らされた。
 今年はまだ一度も中津川に行けて無かったのに、俺が走れない間になんでそんなことになっちまうんだよう・・・。
 そう、今年はまだ一度も中津川林道に行けて無かったんだ。この土砂崩れの今年中の復旧はまずあり得ない話ではあるが、だからってこのまま中津川に行かずに一年が終わってしまうと、俺がオフ車に乗り始め、中津川林道に通うようになってから初めて一度も行かない年が出来てしまうことになる。
 ・・・嫌だ!俺の大好きな中津川林道に一度も行かずに一年が終わってしまうなんて、それだけは絶対に我慢出来ない!そうだ、何も三国峠まで到達出来なくたっていいじゃないか!行けるところまででいい、今年中に中津川林道に会いに行っておこう!
 
 そんな駄々っ子のような気持ちで、いつもの森林科学館前までやってきた。ここまでの道のりは、さすがに11月ということもあって、国道299号を抜けるあいだはすっかり冬の寒さを感じさせるようになっていたが、今の俺にとってはこんな寒さの中を走ることでさえ、何だか妙に楽しさを感じさせる。
 いつものようにここで写真を1枚撮って、早速秋の中津川へと入って行こう。
 
 掲示板に掲げられた林道通行情報は、どれも「通行止」・・・。ぬうー、上野大滝線とかも久々に走ってみたいんだけどなあ。
 
 それにしても実にいい天気だ。紅葉は青空の下で見てこそナンボだと思っているので、今日のこの快晴は本当に嬉しい。
 
 そしていよいよダート区間へと入る。この瞬間がいつも本当にワクワクするんだ。
 
 今日は三国峠まで行けない分、時間に余裕はあるので、久し振りにここにも顔を出して行こうか。今も残る、嘗ての武州中津川森林鉄道の軌道敷跡だ。
 
 色付いた木々の葉を通過した、柔らかな陽射しに照らされた嘗ての路盤を、落ち葉をさくさくと踏み締めながら歩いて進む。
 
 そして、その軌道を支えたこの石垣である。何度見ても実に美しい。路盤には木々が成長し、森林鉄道の廃止からの長い年月を感じさせるが、今もこうして森林鉄道時代の遺構を見ることが出来るのは、とても貴重なことだ。
 
 再びBAJAに跨り先へと進む。何も焦ることは無い、のんびりと行こう。
 
 今日この日に中津川に来たのは、たまたま来られる日が今日だったということにすぎないのだが、周囲は見事なまでに鮮やかな紅葉に彩られている。実にベストなタイミングで来ることが出来たようだ。
 
 色鮮やかに光り輝く木々の葉が道を覆い尽くす。やはり秋の中津川と言えばこれなんだよ。今日来ることが出来て本当に良かった。
 
 キャンプ場を過ぎると、路上にバリケードが置かれている。表向きにはここから先は通行止めの扱いではあるのだが、ふふふ・・・脇ががら空きだぜ。
 まあ、言い訳するようだが、この地点でのこんなゆるゆるなバリケードはさほど本気の閉鎖とは思えないし、万が一この先に工事関係者でもいればその場で引き返すので、今日はこのまま先へ進ませてください・・・。
 
 眩しい陽を浴びた葉が、自らの色を光に溶け込ませて周囲を黄金色に染め上げる。この景色は何度見ても、何度走っても飽きることが無い。
 
 さて、一つ上の写真とこの写真の2枚、去年の秋の中津川の日記を読み返してみたら、何と全く同じ位置で撮ってるんだよ、しかも同じように2枚連続で(笑)。あまりの芸の無さに自分でもびっくりだわ・・・。
 
 この区間では、道沿いの木々もだいぶ葉を落としている。色鮮やかな紅葉も素敵だけど、冬の訪れを感じさせるこのくらいの景色も好きなんだよなあ。
 
 やはり紅葉と青空のマッチングは最高だな。手前の緑の木がちょっと邪魔かなとも思ったけど(笑)、色の対比はちょっと面白いかな。
 
 この日向と日陰のコントラストと、日陰の中にも明るさをもたらす紅葉と、路面を覆い隠す落ち葉と、もうこの場に存在する全てが美しい。
 
 頭上を覆う黄金色の森を見上げ、秋の空気を胸一杯に吸い込む。
 
 楽しいなあBAJA君。やっぱり秋の中津川は美しいなあ、今日来て良かったなあ。
 
 やがて、信濃沢橋のゲートに到着。実は今日ここへ来るまで、何となく崩落地点まで行けるつもりになってたんだけど、途中で擦れ違ったバイクと車の人にそれぞれ「この先でゲートが閉まってる」ということを聞いていた。ああ、そうかゲート閉まってるのか、まあ崩落からだいぶ時間も立ってるし、そりゃそうだよね・・・と思いつつ、「とりあえず行けるところまで行ってきます」と返事をしてここまで来た。
 
 これ以上BAJAで進むことは出来ないので、今日はここで引き返すつもりだが、折角なのでせめてあのカーブの先まで歩いて進んでみよう。BAJA君、ちょっとそこで待っててね。
 
 信濃沢橋で日陰になった道は、その先のカーブを越えて再び暖かな色彩に包まれた日向へと出る。
 
 この季節の中津川の、この先にもまだまだ続く素敵な景色を見られないのは残念だが、何も今後一切通り抜けが出来なくなるわけでは無い。恐らく復旧にはなかりの時間を要すると思うが、今は大人しくその時を待つとしよう。
 
 BAJAのところまで戻り、この橋の上で中津川林道に、「また来年、BAJAと一緒に会いに来るからな」と告げてこの場を後にした。
 
 
 実際、気づいたら本当に声に出して話しかけてた。うん、相当キモい。誰もいなくて良かった。
 
 それじゃあ、復路の紅葉を目に焼きつけながら引き返すとしよう。
 
 ここは木々の隙間から射す陽射しが流れ込みを照らす印象的な場所。落ち葉に覆われた斜面がいい感じ。
 
 爽やかな青空に照らされた紅葉に包まれて、フラットダートを走る。最高のひとときだ。
 
 久し振りに立ち寄った林道大山沢線の起点。このアングルだと旧タイプ標識がちょうど真横になってしまって見えないのであります。
 
 道の周囲に、まるでパレットのように様々な色彩を纏った山肌が広がる。
 
 中津川林道にはもう何度も訪れているが、ここは何度来ても飽きることが無いし、走っているだけで気持ちが嬉しくなってしまう。
 
 やはり中津川は俺にとって特別な存在なのだ。
 
 今年もなんとかここに来ることが出来て良かった。一日も早い復旧を願って、また三国峠まで走れる日を心待ちにしよう。
 
 この後はR140を引き返しながら次の林道を走って行こう。
 
Aへ続く。