春の雪道を求めて
2017/04/02 群馬県多野郡神流町・林道二子山線・他
 
 3月も末日となった31日の金曜日、その日は夜から雨となり、山のほうでは雪に変わっているようだった。秩父市大滝地内の路面カメラで確認すると、確かに路肩には既に深い雪が積もり、路面は真っ白になっていた当日の画像。 秩父県土整備事務所ホームページ、秩父県土整備事務所管内路面カメラ映像より転載)
 今頃林道にはさらさらの新雪が積もっているんだろうなあ。そう思うと、もう気持ちが疼いて仕方なかったが、明けた土曜も、昼過ぎ頃まで降り続く予報だったため、更に一日置いた日曜日に望みを繋ぐことにした。日曜の予報は曇りのち晴れ。このまま予報通り行けばツーリングには絶好のコンディションとなりそうだ。どうか融けずに残っていてくれよ・・・。
 
 待ちに待った日曜日。国道299号〜140号と走り継ぎ、まずやって来たのは秩父市の強石地区にある林道上強石線。以前ここで積もったばかりの新雪の上を走ったことがあったので、昨日までの雪がまだ残っていれば、良い感じに楽しめるんじゃないかと思ってやってきた。その時も、舗装区間には全く雪は残っていなかったものの、未舗装区間になって突然雪が残っていたので、この先にも期待して進んでみると・・・。
 
 えっ、雪ドコ?
 路面には積雪はおろか、ほんの僅かのカケラも残っていない。確かに、ここへ来るまでも山肌にすらほぼ残雪を見なかったし、前回雪の上を走ったのも、あれは真冬のことだったしなあ・・・。
 
 それでも、この先を進めば少しは雪があるんじゃないかと思ってみたものの、路面はドライコンディションを保ったまま、あっという間に終点に着いてしまった。
 
 ここ、4月にもなると、こんなに日当たりが良くなるのね。そりゃ雪なんて残ってるワケないよなあ。それなら長居は無用、さっさと次の目的地へと向かうとしよう。
 あ、雪は無かったけど、この終点近くには、半白骨化したイノシシの頭だけが転がっていたよ。あんまり珍しいから思わずBAJAから降りてまじまじと眺めてしまった。
 
 続いて県道37号線〜国道299号と走り継ぎ、志賀坂峠を超えてやって来たのは群馬県多野郡神流町にある林道二子山線。何故ここに来たかというと、つい先日「XRで行こう」のみやさんが、この二子山線の去年の夏のレポを上げていて、その中で触れていた舗装化の様子が気になっていたということもあるのだが、何よりこの林道は起点から終点に掛けて終始勾配が緩く、積雪していたとしてもスリップなどの不安も無く楽しく走れると思えたからだ。実際、志賀坂峠に近づく頃から山肌の積雪も目立つようになってきたので、これは林道内はかなり期待できるのではないだろうか。それでは早速進んでみよう!
 
 林道に入ると、まだ真新しい舗装路が続いている。ここは去年舗装化されたばかりの区間だな。この辺りはまだ路上には積雪は見られないが、斜面は斑に雪が残り、4月とは思えない程、冬の名残を感じさせる良い雰囲気。
 
 更に進むと、いよいよ路上に雪の残る地点が現れた。とはいえ、これは見た感じ斜面に残っていた雪が滑り落ちてきて路上で弾けたもののようだ。
 
 なんて思っていると、今度は更にガッツリと路上に積雪の残る場所が!ここはまだ舗装路だが、積もったばかりの雪は当然凍結の心配なども無く、坂道でも安心して上って行く事が出来る。俄然テンションが上がって来たぜ!
 
 国道から入って約900mで路面が未舗装に変わった。どうやら今現在、舗装工事はひと段落着いたようだが、俺が前回来たときの記録では、舗装区間は約100mだったので、あれから800m程舗装が延びたことになる。
 この地点はこれだけ日当たりが良いだけあって路面もすっかり乾いているが、この先がずっとこの状態ということは無いだろう。
 
 ほら来た!日陰に入ったとたんにガッツリ雪が残ってる!しかも、先程の舗装路上の積雪と違い、未舗装路の積雪はやはり安心感が段違いだぜ!いやー、楽しくなって来た!
 
 日向に出ると路上の雪は一旦収まるが、それでも周囲にはこんなにも冬の名残を感じさせる清々しい景色が広がっている。まさか4月になってこんな景色の中を走れるとは思わなかった。
 
 この時期特有の、まだ寒々しい景色の中に、これから来る春を迎える為に静かに生命力を蓄えているかのような山の空気感がもう堪らなく好きなのだ。
 
 更に進むと、いよいよ本格的に雪の残る区間に入った。路上に積もる雪の上には、まだ1台のタイヤの跡も無く、まっさらな雪の上に自分の通る跡だけを残して進むのがもう最高に楽しすぎる!
 
 「1台のタイヤの跡も無く」とは言ったが、実は雪の表面を見ると、既に4輪が通行した痕跡らしきものはあるのだが、その後に更に雪が降り積もったようで、その新雪の上を走るのは実質俺が一番乗り!いやもう最高に気持ちよすぎる!
 
 路上に落ちる、木々の影が作るストライプは、林道で見る景色の中でも特に好きなものだと、過去のレポでも何度も触れているが、まさか雪の林道で見ることが出来るなんてなあ。
 
 秩父を走っていた時間帯には、空にはまだ薄雲が残っていたのだが、いつの間にか雲ひとつない青空が広がっている。この空の深い青と真っ白な雪の色彩が本当に美しすぎて、さっきから少し進んではすぐに停車してシャッターを押すということを繰り返しているので、ちっとも先へ進まない(笑)。
 
 本当に、ここ最近のツーリングで今一番テンションが上がってるかもしれない、俺(笑)。
 
 この辺りはだいぶ日当たりが良いが、路上の雪は解けることなく残っている。勾配は緩いものの、それでも少しずつではあるが標高を上げては来ているので、その僅かな違いでも雪融けに差が出るのだろうか。
 
 ちょっともう本当に楽しすぎるなコレ!未舗装路に積もる新雪なので、さほど不安無く走れはするのだが、それでも少し深いところだとリアが左右に振れるので、そういうところでは2輪2足でゆっくり進んでいくのだが、そんな普段では味わえないような感覚がまた楽しくて仕方ない。
 
 見てくれこの景色!今日もう4月ですよ!?ふかふかに降り積もった新雪、その下には凍結も無く、気温も見た目ほど低くないうえに花粉もほぼ感じることも無く、こんなの1年に1度味わえるかどうかの絶好のコンディションだぞ!週末にこれだけの好条件が揃ったなんて、もうこれは神様からのプレゼントってことでいいのかな(笑)?
 
 やがて、国道から入って約2.4kmでバリケードが置かれた地点に着いた。まあ、こんな日にこの先に入ったところで工事なんてしてるはずも無いが・・・。
 
 一旦ここでBAJAから降りて先を見ると、ここからやや下り勾配になっている。勾配とは言っても今上ってきた道と大差ないもののはずだが、ここまでの道程で気持ちがだいぶ満足していたこともあったし、なによりソロということもあるので、あまり無理はせずに今日はとりあえずここで良しとするかな。
 
 今上ってきた道を振り返る。空の色を吸い込んで、青味を帯びた影の中を延びる道と、その向こうに聳える、微かに雪化粧を纏った山々。ああ、本当になんて美しい景色なんだろう。
 
 いつもならここでラーメンを、となるのだが、今日はまだそれほど腹も減っていなかったので、せめてコーヒーだけでも飲んで行こう。こんな景色の中だと、コーヒーを淹れてるだけでもすごく楽しい。
 
 ・・・と、この平場でコーヒーを飲みながら向かいの山を眺めていると、山頂近くになにやら文字のようなものが見える。んん、錯覚じゃないよな?何だアレ?
 
 大文字!?調べてみたところ、あれは西御荷鉾山の大文字というそうだ。前回来た時もここでお昼にしたのだが、その時は全く気づかなかった。きっと積雪しているからこそこれだけはっきりと目立って見えて、気づくことが出来たんだろう。
 
 その平場から後ろを振り返ると、雪が積もったままの斜面が迫立っている。本当に美しい景色だ。冬枯れた木々の枝にも雪が残っているが、この時期の雪は、きっとすぐに融けて消えてしまうだろう。
 
 景色も十分堪能したし、それじゃあそろそろ引き返すとしようか。本当に、4月に入ってこんな素敵な景色の中を走れるなんて思わなかったよ。
 
 往きにも撮った、余りにも印象的なこの地点でもう一度。繰り返すけど、今はもう4月だよ(笑)。
 
 普段は邪魔に見えることもあるガードレールも、今日のこの色彩の中では絶妙にマッチしている気がする(笑)。
 
 こんな青空の下、まっさらな雪の上に自分のタイヤの跡だけを残して走るなんて、これ以上ないくらいに贅沢なことだな。今日、このタイミングでここに来ることが出来て本当に良かった。
 
 今シーズン、雪の上を走るのはこれが最後だろう。それにしてもこの二子山線、ある程度予想はしていたものの、こんなに雪道を楽しく走れる林道だということが分かったのは大きかったな。来シーズンも、チャンスがあったらまた走りに来よう。
 
 結局、ここに入って走ったのはごく僅かな区間だけだったけど、ここはまだ新緑の季節に訪れたことは無かったし、またその頃にでも走りに来るよ。
 
 R299を引き返して埼玉に戻ってきたが、ちょうど帰り道なのでここにも立ち寄って行こう。ここは林道八日見線の起点側区間の入り口だ。八日見線といえば、前回のツーリングで県道279号線から分岐する終点側区間を走ったばかりだが、そちらは現時点で開設工事が行われている様子は無かった。
 こちら側の起点側区間を最後に走ったのは2013年のことだったが、あれから工事の進展があったのかどうか確かめに行ってみよう。
 
 空にはだいぶ雲が広がってきたが、これだけ広く見渡せる景色の中だと、この雲の大きさが却って空の広さを際立たせる。
 
 路面はすっかりドライコンディションだが、目の前の山肌は、まだ僅かに白い雪を纏っている。
 
 やがて起点から4.3km程で、土砂崩れによって道がふさがれている地点に着いた。
 
 積み上がった土砂の脇には僅かに隙間があり、倒木がやや邪魔ではあるもののBAJAでも何とか通れなくもない感じではあるが、まずは歩いてこのカーブの先を覗いてみよう。
 
 そこから100m程進んだ地点で、道は途切れていた。
 
 BAJAを停めた地点から道の末端までの様子を動画で撮ってみた。現時点での終点までの総延長、約4.4km。2013年に訪れたときから全く変わっていなかった。前回見た終点側でも工事が行われている様子が無かったので、もしかして今はこちらの起点側から延伸を進めているのかと思ったのだが・・・。
 やはり工事を進めるとしたら向こうの終点側からということになるのだろうか。とにかく、ここの貫通を心待ちにしている林道マニアは少なくないはずなので、頑張って開削を進めてもらいたいものだ。
  
 BAJA君、ただいまー。それじゃ帰ろうか。
 
 暦はもう4月に入ったというのに、今日はまさかのふかふかの雪道と美しい景色を堪能出来て、ここ最近で一番テンションが上がったと言っていいほど、本当に楽しいツーリングだった。
 そして、あとひと月もすれば各地の冬季閉鎖も明け始める。その時が今から楽しみだ。山の春はもうすぐそこまで来ている。