県道279号線沿いの林道群へ
2017/03/19-@ 埼玉県小鹿野町・林道八日見線〜林道藤指線
 
 先日、「WOLF」(柴田哲孝・著)という小説を読んだ。古くから狼信仰のある小鹿野〜秩父地方を舞台とした、日本では絶滅したとされるオオカミをめぐるネイチャーミステリーなのだが、内容自体の面白さに加え、国道299号から中津川林道までを跨ぐエリアの、実在の地名や林道が多数登場することもあり、フィクションと現実の境目が曖昧になるほど(笑)、実に楽しく読むことが出来た。そんなこともあって、久しぶりにこのエリアの林道を走りたくなった。ただ、そうは言っても小鹿野には前回も来たばかりではあったが、あの時は県道367号線沿いの御岳山2号線だった。今回は、そこから更に北へ一本移動した、県道279号線沿いの林道を巡ってみよう。
 
 というわけで、早速小鹿野までやって来た。先ずは、県道279号線の最奥で分岐する、ここ!
 
 林道八日見線だ。(ちなみに、奥に見えているもう一つの標識は、この県道の末端から直進方向に接続する林道不動滝線のものだ。)
 
 この八日見線、ここから更に北に位置する、国道299号から分岐する起点側区間が、前述の「WOLF」に、路線名こそ書かれていないが「尾ノ内の林道」として登場している。こちらの県道から分岐しているのは終点側区間だが、その尾ノ内の起点側区間と貫通させるべく、現在も開削工事が進められている。
 尾ノ内の起点側に最後に訪れたのは2013年、その時点での延長が約4.1kmだったが、更にその前に訪れた2011年と比較しても、工事の進んでいる様子が見られなかったので、今後はこちらの終点側から開削を進めていくのだろうと思ったものの、こちらの終点側には初めて訪れた2009年以来、再訪することもなく今に至ってしまっていた。
 
 その2009年の時点で、こちらの終点側区間の開削済みの延長は約2.2kmだった。今日は、あれからどれだけ開削が進んだのか、この目で確かめることを目的にここまでやって来た。
 入り口から入ってすぐ、路肩には山沿いの道路工事でよく見る大きな遮蔽壁が立っているが、斜面から崩れ落ちてきた土砂が県道に飛び出さないようにとの配慮だろうか。確かにこの地点の斜面は、コンクリートの吹き付けに加え、ネットなども張られていて、相当に崩れやすいんだろうという様子を感じさせる。
 
 終点入り口から約200m程は舗装区間となっているが、その舗装はというと、見ての通りアスファルトがひび割れたり、剥がれてしまったりと、まだ全線開通していないにも関わらず、既にだいぶ荒れてしまっている。
 
 路面が未舗装となって更に少し進むと、ひとつのトンネルが現れる。
 
 八日見トンネルだ。このトンネル、照明も点けられておらず、更に内部で左にカーブしているために出口を見通すことも出来ず、ご覧のように奥は真っ暗闇となっている。
 
 電灯自体は設置されてはいるのだが、おそらくまだ林道が完成していないことを理由に点灯していないのだろう。この暗闇に一人で突っ込むのは少々勇気が要るが、先へと進むにはここを超えないといけないしね。それじゃあ行きますか・・・。
 
 トンネル内を半分程進んだ地点で停車して撮影。ここでエンジンを切って真っ暗闇にすれば面白いかな、なんてちょっと思ったんだけど、さすがにそれを実行する度胸は無かったよ・・・。
 
 500m程はあったであろう漆黒のトンネルを抜けてきた。いやあ、長かったわ・・・日の光が嬉しいぜ。
 
 トンネルを出てすぐの路上は、斜面から流出した土砂で一面を覆われてしまっている。その表面は割りと締まっているように見え、このような状態になってからだいぶ時間が経っているようで、少々放置臭を感じる。工事車両の往来を感じさせるような轍も見られないし、現在この先で工事は行われていないのだろうか?
 
 そこから更に進むと、切り通しの間から更に奥へと延びる道を見渡せる地点に出た。おおっ!さすがに前回訪れてからかなりの距離が延びているようだ!
 
 っていうか、この左手の法面。どっかで見たことあると思ったらシーボーズじゃねーか!おまえ、ウルトラマンロケットで怪獣墓場へ送り返されたんじゃなかったのかよ!
 
 ・・・それはさておき、ここから見えているあの区間は、俺が前回来た時にはまだ存在していなかったはずだ。山の稜線近くを延びていることもあり、景色もかなり期待できるのではないだろうか。
 
 その未踏の区間へと足を踏み入れると、周囲の山々と比較しても、道は既にだいぶ高い位置に到達しているように見える。
 
 おおっ、これはなかなかいい雰囲気じゃないか!もう長いこと走っていないが、まるで大名栗線を思わせるような眺めだ!
 
 この幅広く走りやすいフラットダート。空も近い為に開放感もあって、うーん、もう最高じゃねーか!
 
 おや、さっきも似たような景色の場所があったけど、ここから先にもまだまだ道は続いているようだ。しばらく来なかった間に、こんなに開削が進んでいたなんて、うおおおお!楽しすぎるぞ!
 
 さっきまでの地点では、大名栗を思い起こさせる景色もあったが、稜線近くを延びる区間が多い為に、全体的にはむしろアップダウンの少ない西名栗線といった趣き。
 
 こういう広々とした景色の中にフラットに延びる道も、特に西名栗線っぽさも感じさせる。いずれ起点側と繋がって全線が開通したら、ここは相当良い林道になるぞ。
 
 ここから先の区間は、まだ開削されて間もないようで、ガードレールも真新しい状態だったが、そのガードレールは、周囲の景観に馴染むようにとの配慮からなのか、薄いベージュに塗られていた。どうせ景観に馴染ませるつもりなら、間伐材を使ったものにすればいいのに、とも思うけど、まあ耐久性とか予算のこととか、いろいろ都合があるんだろう。
 
 斜度のある道がその先でカーブしているこの景色。このまま空へと飛び出してしまいそうなこの雰囲気が好きなんだなあ。
 
 そのカーブを越えた先で、道が途切れて見えている。あそこが現在の終点か?
 
 終点側入り口から約3.2km、道が突然ぷっつりと途切れているここが、現時点での開削の末端だ。
 
 ここから先は、僅かに木々も伐採されてはいるが、周囲には工事車両なども無く、先ほどのトンネルの出口で感じた通り、今現在この地点での開削工事は止まっているようだ。もしかして今はまたR299沿いの起点側区間から工事を進めているのかな?まあ、最後にあっち側に行ったのももう3年半も前だしなあ。
  
 そんなことを思いながら写真を撮っていると、神奈川から来たという3人組のライダーがやって来た。神奈川からだと、だいぶ朝早く出てきたのかなと思ったが、昨日から一泊の行程で、昨日は秩父辺りの林道を走ってきたのだそうだ。いいなあ。
 
 そして、先ほども書いたがこの八日見線、起点側と繋がったら本当に良い林道になるぞ。もちろん今でも十分に良い林道だとは思うが、ここを通り抜けてR299と行き来出来る日が来るのが今から本当に楽しみだ。
 
 八日見線を引き返し、県道を少し引き返して続いてやって来たのは林道藤指線。以前来たときに、ここの終点が結構眺めの良かった記憶があったので、今日はここで昼飯にでもするつもりでやって来た。
 
この藤指線の標識、いまも旧両神村の表記が残っている。同じ県道沿いでもこの表記を消され「小鹿野町」と書き直された標識もある中で、こうして当時のままの状態で残っているのは本当に素晴らしいンだっ!
 
 起点から1.5km程の区間は舗装路が続くが、その路上には落ち葉や石くれが散乱し、舗装とはいえかなり荒れている。
 
 やがて道は未舗装区間へと突入するが・・・。
 
 ここって、こんなに荒れてたっけか!?っていうくらい、以前来たときとは比べ物にならないくらいに道の状態は荒れまくっていた。この写真を撮った地点はまだ全然大したこと無いが、この先では写真を撮るために停車することを躊躇するくらい酷い有様で、落ち葉に隠れた路面は、一面をこぶし大の石くれや折れた枝などに覆われ、気をつけて走らないとすぐにタイヤを弾かれてしまい、実際一度、このままコケたら谷落ちするってくらいヤバい瞬間もあって肝を冷やしたこともあり、場所によっては二輪二足で慎重に通過していった。
 
 それでも路面の落ち着いた場所で写真を撮ろうと停車していると、先ほどの3人組がやって来て先へと進んでいった。
 
 日影の区間では1ヶ所、凍った水溜りの残る場所があった。この辺りではもう雪なんて残ってないだろうと思ってただけにちょっと意外。
 
そんな道をおっかなびっくりと上り進み、ようやく終点に到着。路面を覆うモコモコの謎の草がまた走りづらいんだコレ・・・。
 
 道の末端にある岩に登ると、その向こうには小振りながら雰囲気の良い滝が流れていた。
 
 そして、その岩の上から振り返って見た景色がこれ。以前よりも、道の外に生える木が成長し、残念ながら期待していた嘗てのような眺めは無くなっていた。その所為もあって雰囲気もそれほど良い訳でも無いし、ここでの飯は諦めて下るとするか・・・。
 
 それにしてもなあ、以前はこんなに走り辛いなんて思うことなく走れた道だったのに。今ではもう林道の本来の目的として使われることもなくなってしまったのだろうか。時の流れは残酷だぜ。まあ、新緑の季節になればそれだけでまた印象は変わるかとは思うが、正直、ここはもう余程のマニアじゃなければ来る必要は無いと思うよ(笑)。
 
 で、そろそろ腹も減ってきたので、さっき往きに見かけていた、ちょっとした路肩の平場で今日のランチタイム。
 
 おっ、オオイヌノフグリだ!毎年この花を見つけると、俺の中で春が認定されるのだ(笑)。遂に春がやって来たぞ!イエーイ!
 
 ここに腰掛けて周りの景色を眺めながら、これだけ山深い土地なら、仮に人知れずオオカミが生き延びていたとしても何も不思議は無いよなあ、なんてことを思いながらのんびりと昼飯を食べた。
 
 この後は、以前来たときよりもだいぶ舗装が延びてしまったと聞いていた林道へ、その現在の様子を確かめに行こう。
 
Aへ続く。