夏の川上牧丘と、中津川林道の今
2022/07/18 長野県川上村・川上牧丘林道〜埼玉県秩父市・三国峠(中津川林道)
 
 少し前にツイッターで、現在の中津川林道(秩父市道大滝幹線17号線)の状況に関するツイートが流れてきた。
 
 詳細は上記ツイートのツリーを参照してほしいが、大まかに言うと、2019年の台風による被害の規模がかつてないほど大きく、復旧工事をやりたがる業者がいないために、通行止めから3年が経とうとする現在でも、復旧の見通しは立っていない、とのことだった。
 
 更には、当サイトのBBSに、現在の三国峠の写真がume3さんによって貼られたのだが、その写真を見る限り、路面は緑に覆われ、そこには見知った三国峠の面影は全くと言っていいほど感じられなかった。
 秩父市としては、中津川林道を廃道にするつもりは「今のところ」無いようだが、その中津川林道の通行止めが続くいま、せめて三国峠の姿だけでもこの目で見ておきたいと思い、通行可能な道を通って行ってみることにした。
 
 となれば、経由するのはもちろん川上牧丘林道だ。前回ここに訪れたのは去年の10月、あのときは奥多摩を経由してオール下道で来た気がするが、真夏のこの暑さの中で時間を掛けて走るのは避けたいと思い、今日は中央道を使って勝沼ICからここまでやって来た。
 
 とはいえ、時間が早かったこともあるのか、今日は思ったほど気温も上がっていなかったようで、林道区間に入ってからはずっと涼しさを感じていたのだが、標高を上げ峠に近づくにつれて涼しさどころか寒さを感じるほどになってきた。
 
 もう少しで歯がガタガタ鳴るんじゃないかというほどに寒さを感じる中、ようやく大弛峠に到着。ここは日当たりも良いせいか、ようやく「涼しい」と感じるくらいには気温が高くなってきた。
 
 山梨との県境の峠を越えて、長野側のダートを下っていく。緑のカラマツに覆われた川上牧丘を走るのは、3年前に中津川林道が再開通したときに走って以来だ。今日はこの景色を見るのも楽しみにしていた。
 
 実はいま、タイヤがかなりすり減ってきていて、こんなんで川上牧丘のガレ区間を走っても大丈夫かな、なんて思っていたけど、結果的には何も問題なく走れて一安心。まあそれはそれとして、IRCのGP-610早くリリースしてくれ。それ待ちでタイヤ交換まだなんだよ・・・。
 
 この川上牧丘の、ベージュの路面と鮮やかな緑のカラマツとのコントラストが好きなんだよねえ。
 
 でこぼこの路面と、その道を囲むように林立するカラマツ。この川上牧丘特有の景色の中を走るたびに、得も言われぬワクワクした気持ちで胸がいっぱいになる。
 
 峠から離れて、路面もだいぶ穏やかになって来た。
 
 ここも、初めてこの林道に来たときから、来るたびに欠かさずシャッターを切ってしまう場所だ。周囲の湿地のようになった地面の中に林立するカラマツと、その間を蛇行して伸びるダート道が、この林道の中でもひときわフォトジェニックな景色を生み出している。
 
 カラマツの木々の間から差す光が路面に斑に落ちる。同じ林道でも、訪れる季節によってその都度異なった表情を見せてくれるので、好きな林道には季節を変えて何度でも訪れたくなってしまう。
 
 特にこの川上牧丘は、周囲の植生の大部分を占める、落葉する唯一の針葉樹と言われるカラマツが、広葉樹とはまた一味違った美しさを、その季節ごとに見せてくれる。夏の緑も最高だけど、秋に落葉した葉で埋め尽くされ、橙に染まる路面もすごく綺麗なんだよねえ。
 
 ここも必ず立ち寄って写真を撮るスポットだ。いつもはもっと木々の影に囲まれていたような気がしたけど、真夏に来ると日光も真上から降り注ぎ、こんなにも明るい景色になっていたか。
 
 うーん、爽快だ。
 
 そんなそろそろダート区間も終盤だ。
 
 なんだかいつもよりも早足で下りきってしまった気がするが、やっぱり無意識のうちにこの後で向かう三国峠のことが気になっていたのだと思う。
 
 さあ、あとは一気に行くぜ!
 
 ・・・っと思ったのだけど、大弛の下の広場まで来たところで、スーパーモンスターウルフを確認。おお!今日は稼働している!動いてるスーパーモンスター映麩をこの目で見るのは初めてだ!
 
 嬉しくなっちゃって、ここでしばらく動画を撮ってた。どうやら長尺でループする音声を、一定時間で区切って流しているようだ。いろいろ聴きたくて、この前を何度も行ったり来たりしてセンサーを作動させてしまった(笑)。
 
 そこから一気に舗装路を走り、いよいよ三国峠にやって来た。ここからの川上村の眺めももう3年ぶりか。
 
 そして、峠の切通しを超えて、いよいよ中津川林道の区間へと・・・。
 
 三国峠の看板の前にBAJAを停める。何度となく来たこの場所だけど、中津川林道を通らずにここまで来たのはもちろん初めてのことだ。
 
 そして、この路上に、「全面通行止」の看板とバリケードが置かれているが、その向こうの路面は雑草に覆われ、車両の踏み跡などはすっかり消え失せていた。
 
 このまま歩いて、この先に見えているゲートまで行ってみよう。
 
 路上にはいくつかの倒木が横たわっている。最初、これは車両の通行を遮るために置かれたものかとも思ったが、どうやら自然の倒木のようだった。そもそも通行を遮るためには、この先のゲートが閉まってるしね・・・。
 
 あと、路上のいたるところに、緑色の透明のゲル状の謎物体が散乱していた。よく見ると、鹿の糞のような粒上の物体の周りに纏わりついているようだったが、あれは一体何だったんだろう?もの凄く気持ち悪かったので写真も撮らずにきてしまったが・・・。
 
 ここまでの道のりを動画でも撮ってみた。手持ちのカメラで歩きながら撮影したので、人によっては酔うかもしれない・・・。
 
 いよいよ通行止めのゲート地点までやって来た。もう何度となく通過したこの地点だが、このゲートが閉まった状態をこの目で見るのも、当然ながら初めてのこととなる。
 そして、見ての通りゲートの格子には、人が潜り抜けられるだけの隙間がある。この地点に「立入禁止」などの文言も無かったので、少しだけこの先にも入ってみた。
 
 ゲートの先のカーブの向こうを覗いてみると、意外なことに、思ったほど路面は荒れていなかった。むしろゲートまでの区間のほうが荒れていた印象だ。
 
 ゲートから100mほど歩いてみたけれど、路上に少々雑草が生えてきている程度で、これといって荒れた印象はなかった。とはいえこの先、王冠キャンプ場のゲート地点までに、一体どれほどの土砂崩れなどがあるのかは知る由もない・・・。
 
 先述の通り、未だ復旧工事の着手にすら至っていない状態とのことだが、いつの日か再びこのゲートが開かれることを祈って引き返すとしよう。
 
 ・・・早くまたここをBAJAで駆け上がりたいぜ・・・!
 
 ここから見る、この中津川の空もまたしばらく見納めだなー。
 
 ・・・また川上牧丘を通ってここまで来ちゃうかもだけど。
 
 なんか、中津川林道を走ってないのに、いまこの場所に立っているって不思議な感覚だなー。
 
 それじゃあな、中津川林道。また来るよ。
 
 ・・・と、ここで本当に言葉に出して話しかけてしまった。中津川だけは何て言うかもう、他の林道と比べても思い入れが段違いなんだよな・・・。
 
 さあ、せっかくここまで来たので、ここで昼飯にしよう。
 
 そんでね?今日はこのベンチで川上村を眺めながら飯にしようと思ってたんだけど・・・実はこのベンチの向こう側に、あろうことか人糞が!しかもまだ真新しい状態で、2切れほどのティッシュと共に・・・。そんなんで、向こう側を向いて食べることは断念せざるを得なかった。中津川が通り抜けできないせいで人通りが少ないのをいいことに、こんなところで用を足しやがって!誰の仕業か知らんが、糞神に祟られて糞まみれになりやがれ!
 
 それでもこの景色を見ながら、たまたまここで会った、名古屋からスクーターで下道ツーリングをしてきたという人と話をしたりして、少しは気が晴れたかな。
 
 そうこうしているうちに、少し怪しい雲が増えてきたな。そろそろ発つとするか。元々ここには先週来ようと思っていたんだけれど、雷雨予報にビビってやめてしまったんだよな。今日ももしかしたらこの先どこかで夕立に降られるかもしれないけど、今日はそれも覚悟のうちだぜ(結局この日は最後まで雨に降られずには済んだ)。
 
 三国峠から下る途中で、林道相木川上線の入り口にも立ち寄り。ここは相変わらずがっちりゲートで閉ざされたままだ。工事のための車両の往来はあるようだが、ここが一般車両に解放されることはこの先もう無い気がする。
 
 ここからの景色も久しぶりだなー。今日は川上牧丘の往復だけど、中津川を超えて長野に入ったときのこの景色が、本当にワクワクするんだよな。
 
 くっ、また吠えられてしまった・・・。
 
 川上牧丘に戻って来たぞ。中津川から大弛峠まで行って往復するってことは何度もやったけど、大弛峠から三国峠へ行ってまた大弛峠へ戻るってのも初めてだな。今日は初めてがいっぱいだあ(笑)!
 
 このカーブの地点も毎回目を惹かれる場所だ。ちょうど日差しがやや陰っていたけど、このしっとりとした緑の雰囲気も堪らなく良い。
 
 川上牧丘、何度走っても飽きることのない、本当に素敵な道だな。ここも毎年冬季閉鎖明け前にしっかりと整備がされていることを思うと、本当に頭が下がる思いだ。
 
 広葉樹とはまた違った、カラマツのしっかりとした緑の発色が景色を彩る。
 
 峠に近づくにつれて、再び路面が荒れてきた。それでも、去年来た時よりはまだ幾分穏やかな気がするのは気のせいか?
 
 大弛峠まで戻って来た。この後は秩父へ抜けて帰ろう。
 
 雁坂トンネルを抜けるのもずいぶんと久しぶりな気がする。ここもメッシュジャケットでは厳しい寒さだったけど、夏でもこんな感じだったっけ?凍えるかと思ったわ・・・。
 
 雁坂トンネルを超えて埼玉に入り、結局ここまでやってきてしまった。そう、これから中津川林道の起点側も走って行こう。
 
 森林科学館を超えて、程なくしてダート区間に入る。
 
 この通行可能な区間は、通行止めになっているときでも年に一度は必ず訪れるようにしているのだが、この僅かな区間だけでもこうして走れることがとても嬉しい。
 
 むせかえるような緑に包まれた、旧森林鉄道の走っていた穏やかな区間を、噛み締めるように進んでいく。
 
 そうして、あっという間に通行止めのゲート地点まで辿り着いてしまった。今日は初めて、通行止めの最中である中津川林道の、通行止め区間の両端に行けたので満足だ。
 俺たちはこの中津川林道の、今はまだ見通しすら立っていないという復旧を、ただ待つことしかできないけれど、「廃道にするつもりはない」という秩父市の言葉を信じているぞ。いつかまた、ここから三国峠まで走り抜けられる日が来ることを願って・・・。