鋼製砂防を見に行こう!
2024/05/03 埼玉県鋼製砂防巡りツーリング-@
 
 数年ほど前から、林道ツーリングの際にときおり目にし、気になっている構造物がある。「鋼製スリットダム」などとも呼ばれる、透過型鋼製砂防堰堤だ。
 
 

 
 (参考:↑こういうやつです。)
 
 
 
 ”鋼製スリットダム
 土石流発生時に効果的に巨礫、土砂、流木を捕捉し災害を未然に防ぐ施設で、平常時には流水や土砂移動を阻害しません。
 
 (トライアン株式会社のウェブサイトより引用。)
 
 
 林道ツーリングの途中で見つけるたびにツーレポでも紹介しているので、普段このサイトを見てくださっている方は、「ああ、あれか」と思い当たるのではないかと思う。
 少し前に、ウェブで「鋼製砂防構造物データベース」というページがあることを知った。砂防鋼構造物研究会が運営している「鋼製砂防写真情報館」というウェブサイト内のコンテンツなのだが、ここに日本全国の鋼製砂防構造物がリストアップされている(現状全てを網羅している訳ではなさそうだが、現在鋭意調査中とのことだ)。
 このデータベースをもとに、埼玉県内の鋼製砂防を巡ってみることにした。今回はその鋼製砂防構造物データベース(以下、「データベース」と呼称)で埼玉県を選択し「透過型」にチェックを入れ、表示されたものの中で場所が判明している(もしくは推測できる)7か所を巡ってみよう。
 
 本日まずやって来たのは、飯能市の林道高畑線。ここへ来るのも、かつて埼玉の林道制覇のために訪れたとき以来だと思う。もう何年ぶりになるだろう。
 
 起点から少し進むと、頭上を跨ぐ橋のような構造物が見えてくる。ここは、武甲鉱業ベルトコンベヤ高畑積換所で、目の前の構造物は、武甲山から太平洋セメント社埼玉工場までを結ぶ、総延長23.4kmに及ぶ国内最長級の地中式長距離ベルトコンベヤで、その全長の97%が地下に設置されているが、そのわずかに地上を通過する部分のひとつだ。このベルトコンベヤのことは、確か宿谷の滝の近くの地上部分を見て知ったと記憶しているが、このベルトコンベヤについての実態を知ったあとのほうが、よりその存在を信じられなくなるという(笑)。
 
 しばらく進むと、左手に曲がるカーブの外側に看板が立っている場所がある。
 
  看板自体は今にも崩れ落ちてしまいそうだが・・・これは、今日最初の目的地である砂防を解説したものだ。名称は「高畑川 格子型砂防ダム」とある。拡大画像をリンクしておくので興味があれば見て欲しい。
 
 ここから川のほうを見ると、コンクリート製の堤体が見えているが、その中央に、確かに鋼管フレームがチラッと見えている。これは、去年まあもさんが山歩きの途中で見つけていたのだが、よくこんなところに気づいたなあ・・・。
 そして、見ての通りここからではその全貌を見ることはできないので、川岸まで降りてみよう。
 
 おおっ、見えてきたぞ・・・。
 
 うおおっ!いかつい!写真でこのサイズ感がどこまで伝わるか分からないが、こうして見上げるとその巨大さに圧倒される。
 データベースによれば、これは「格子形砂防えん堤」と分類されている。
 (参考:格子形-2000Cシリーズ
 
 よく見ると、鋼管フレームがなかなか複雑な構造で組まれているのが分かる。
 
 平時ではとても穏やかに見える沢だが、これだけ巨大な構造を設置するということは、それだけここが土砂災害において危険性のある場所となっているということなのだろうか。
 とりあえず一発目からこれだけ見ごたえのあるスリットダムを目にして、かなりテンションが上がった!今日これから巡る他のスリットダムも楽しみになってきたぜ!
 
 BAJAのところまで戻って、ふと辺りを見回すと、足元にシャガの花が咲いているのを見つけた。以前奥武蔵グリーンラインの周辺を走り回っていた頃は、この時期になると毎年のようにこの花を見ていたけど、そういえばずいぶんと久しぶりに目にした気がする。やっぱり綺麗だなーこの花。
 
 さあ、次の物件へ行ってみよう!
 
  次の目的地へ向けて、林道風影線を通過していく。先月に八徳の一本桜を見に来たときは、時間の関係でここには立ち寄れなかったけど、既に春の花のピークは過ぎ、周囲の景色は緑がその勢力を増していた。
 
 風影線から林道権現堂線を経て、さらに林道笹郷線を下っていく。
 
 ・・・この標識の文字、なんで「終点」にだけ長体がかかってるんだ(笑)?
 
 笹郷線を下っていくと、ここでもシャガの花が群生していた。
 
 帰宅後に検索してみたら、シャガの苗って売ってるのね。この花好きなのでちょっと買おうかなって思ったけど、この群生の様子を見ると、もしかして地植えするとめちゃめちゃ根を張る感じか?それはそれで恐ろしいな・・・(笑)。
 
 続いてやって来たのは、越生町の大満寺。データベースには構造物名称に「大満寺」とリストアップされているものの、所在地はマッピングされておらず、「大満寺」の語句で地図を検索したところここが見つかったので、おそらくこの近くにあるのだろうと思い賭けのつもりでやって来た。
 
 お寺の脇には、確かに沢が流れている。
 
 沢の脇には砂防指定地の看板が立ち、大満寺沢とある。大満寺で地図を調べたときにこの沢を見つけていたので、まず間違いないだろうとは思うが。
 
 その沢に沿って延びる、コンクリートの歩道がある。ここを入ってみよう。
 
 歩き始めてすぐに一つ目の堰堤が見えたが、これではないな・・・。
 
 そこからもう少し進むと、足元のコンクリ敷が途切れたが、その先に・・・。
 
 ビンゴ!
 
 見つけた!これが大満寺のスリットダムだ!データベースによると、D型スリットと記載されている。
 (参考:D-スリット - 透過構造を有した流木捕捉工
 
 沢に降りてみた。この鋼管フレームの背後にも巨大な堰堤が聳えていて、ここから見る2連の砂防構造物の眺めはかなりカッコイイ!
 
 上流側から。おそらくD型としては最低限の構成で組まれていて、サイズもそれほど大きくはないが、きっとこの沢のサイズなら洪水時でもこれで事足りるのだろう。
 
 そして、その背後の堰堤はかなりスケールの大きなもので、これと組み合わせての効果を鑑みてのこのD型のサイズなのだろう。ちなみにこちらの堰堤は、銘板には大満寺沢砂防堰堤と記されていた。
 この場所はデータベース記載の堰堤の名称からの推測でやって来たわけだけど、無事見つけられて良かった。さあ、次へ行こう。
 
 続いてはときがわ町の西平地区にやって来た。ここにはデータベースで、おそらく地区名をそのまま使ったであろう「西平」と記載されているB型スリットダムがあるらしい。
 ここはデータベースには地図がリンクされているが、マッピングされたスリットダムの少し手前で道は途切れている。ここから分岐して山側に登っていくこの道が、どうやらそこへ至る道のようだが、見ての通りの急傾斜で、BAJAで入るのにビビってしまい、ここから歩いていくことにした。
 
 この道沿いの最後の民家を越えると、道には鉄パイプで組まれた柵があり、そこを境に未舗装の廃道となる。緩やかなカーブを越えるとガードレールが途切れるが、その先に堰堤が見えてきた。
 
 ちなみに、この地点から振り返ってみた景色が、とても良い廃道風景だったので写真を載せておく。もう使われなくなった道に残るガードレールって、いいよね・・・。
 
 さて、その前方に見えてきた堰堤だが、どうやら不透過型で、目的の物ではないようだ。ただ、この沢沿いにあるのは間違いないはずなので、あるとしたらここをさらに上流側に登ったところか・・・。
 
 そう思い、堤体の前の斜面をよじ登ろうとしたが、結構な急斜面に加え、生い茂る笹薮に阻まれてこれ以上登ることを断念せざるを得なかった。
 
 下流側を見ても、それらしい構造物は見えない。やはりこの上流側なのは間違いないと思うが・・・仕方ない、ここは諦めるか・・・。
 ここ戻るとき、たまたまこの下の家に住んでる方にお会いできて、少し話をしたのだが、鋼製砂防を探しにきたけど、コンクリートの不透過型しか見つけられなかった(意訳)と伝えると、「ああ、あの上だよ」とのこと。やっぱりそうだったか!仕方ない、藪が落ち着いた冬にでも再訪するか・・・。
 で、その話のついでに、その方から「この先にもそういうのがもう一つあるんだよ」と教えていただいた。実はこれから、その聞いた場所の方面に次の物件を観に行くところなのだが、それとは別物なのだろうか?
 
 その方から聞いた道のりを辿ってきたのがここ、林道赤木慈光線だ。話の中で明確にこの林道の名前を聞いたわけではないが、道順と、隣に墓地がある分岐を進むなどの特徴から、おそらくここのことを言っていたと思われる。
 ・・・ただ、しばらくこの先を進んでみたものの、道沿いの沢に不透過型堰堤はいくつか見えたものの、次第に道が沢から離れてしまったので、途中の分岐から下りに向かう道を選んで、本来の次の目的地に向かうことにした。
 
 そうして慈光寺方面をぐるっと周り、やって来たのは林道都幾山線だ。位置的には、県道172号線沿いの「宿」の信号を慈光寺方面へ折れるとすぐにこの分岐が現れる。この先に次の目的の堰堤があるはずだ。
 
 すると程なく、道の脇にかなり大きいスリットダムが見えてきた!
 
 うおお!こんなところにこんなデカいのがあったのか!この写真は少しズームをかけて撮ったので今一つサイズ感が伝わらないと思うが、連なる不透過型の一番上にどーんと構える鋼管フレームの姿は、ここからでもかなりの迫力が伝わってくる。
 
 それでは近づいてみよう。堰堤には、林道から分岐する道に入るのだが、バリケードで封鎖されているためにBAJAを停めて歩いてきた。これは下流側から見た写真で、データベースによると、J−スリット堰堤と分類されている。
 (参考:J−スリット堰堤
 
 こちらは上流側から見たもの。堤体に付けられた銘板には、慈光寺川2号砂防堰堤と書かれている。
 で、しばらく道沿いから眺めていたんだけど、斜面の様子を見ると、何とか下まで降りられそうだぞ・・・。
 
 というわけで、沢沿いまで降りてきた。ここからなら、この見上げるほどのサイズ感も伝わるのではないかと思う。
 
 少し引いたところから堰堤全体を見る。奥の杉林も含め、この景色全体がシンメトリーにまとまっていている様がとても美しく、威風堂堂と聳えるようなその姿につい見惚れてしまう。
 
 今日はツーリングの目的を考えても、この先でここ以上に飯に良さげな場所はもう無さそうな気がしたので、ここで昼飯といたす!文句なしの青空の下、こんなカッチョイイ堰堤を見ながらの昼飯は最高の気分だぜ!
 
Aへ続く。