奥秩父いま・むかし
2012/06/23 埼玉県・奥秩父の林道 -@
 
 先週、週末の天気予報を眺めていると、珍しいことに土日の2日間”だけ”晴れ間の出そうな予報となっていた。それならどこか走りに行こうかな。でも、梅雨時だし、途中で天気が崩れても嫌なので、近場の奥武蔵辺りにでもしておこうか。とも思ったが、予報を見るとなんだか結構天気も持ちそうな感じ。だったら、奥武蔵なんて言ってないで、いっそ奥秩父まで行ってしまおうか・・・。
 
 
 というわけで、やってきました奥秩父。それにしても、6月も下旬だというのに、ここへ来るまで結構寒かったなあ。予報では秩父地方も朝から晴れマークが付いていたのに、なんだこの真っ白な空は・・・。今日着てきたジャケットではちょっと暑いかもしれないと思ったけど、念を入れて厚着してきて良かった。
 さて、以前BBSのほうにも書いたが、現在土砂崩れのために通行止めとなっている中津川林道は、残念なことに現状では本年度中の復旧が出来るかどうか危うい状況のようだが、ゲートが閉じられている信濃沢橋の地点までは通行も可能のようなので、初夏の中津川の景色を堪能しつつ、周辺の林道を合わせてのんびりと回ってくることにしよう。
 
 さて、前方にループ橋の見えるこの場所は、国道140号から滝沢ダム下流広場へと向かう分岐地点。

 
 
 
 その分岐から少し下った地点に、蛹沢不動滝という滝がある(何故ここに立ち寄ったかは後述)。
 
 
 
 再びR140へと戻る。秩父市街地方面から中津川林道へ向かう際には必ず通るこのループ橋、正式名称を「雷電廿六木橋」(らいでんとどろきばし)といい、実際には大滝大橋と廿六木大橋という2つの橋を対岸の斜面で結んだもので、その全体で一つの雷電廿六木橋という構造になっている。この橋の名前にある「廿六木」とは、かつてこの地に存在した廿六木(十々六木とも表記)という集落から取られている。その廿六木集落は、滝沢ダム建設に伴う道路付け替えのために移転をさせられることとなり、現在ではこの土地からは集落は消えてしまったが、この地に新しく建造された橋の名称としてその名を残すこととなった。
 
 
 
 ここは、雷電廿六木橋のちょうど中間に位置する廿六木望郷広場。ここに、かつての廿六木集落についての解説板が設置されている。
 
 
 
 これがその解説版だが、これによると、旧廿六木集落は現在の廿六木大橋終端部に位置していたようだ。
 
 
 
 この広場からループ橋全体を見渡すことが出来るが、廿六木集落があったのは、あの一番奥に見える山肌の窪んだあたりだったようだ。
 
 で、今日はなんでこんな解説をしているかというと、一応は林道に絡む話なんです。
 まだこの国道140号など影も形もなかった昭和初期、この地に一本の林道が開削された。その名を中津川線林道という。林学博士の本多静六の寄付に基づき、昭和7年度から同16年度にかけて大若沢入口に至る延長約17,000mが開設されたが、その起点となったのがこの廿六木集落だったという。厳密には、先ほど観てきた不動滝の辺りをその起点としていたようで、不動滝の流れる音が「とどろく」ことからその名が付いたというのも廿六木の名の由来の説の一つなのだそうだ。
 なお、この中津川線林道のうち、廿六木から神流川出合までの区間は昭和25年に県道に編入されている(参考:『埼玉の県営林』埼玉県農林部林務課)。
 その後、更に中津川沿いに延びる森林鉄道の建設を経て後の中津川林道が誕生したのは以前書いたとおりだ。
 
 自分がはじめてこの地に来たのは、既に滝沢ダムが完成し貯水を待つだけとなっていた時期だったが、かつてこの地に存在した古い林道の記憶を辿りたくて、中津川林道へ向かう前にちょっと寄り道をしてみた。
 
 
 
 雷電廿六木橋を越えて、かつての集落跡でも探してみようかと山の中に入ってみると、ちょうど目の前を10頭ほどの鹿の群れが駆け上がって行った。途中、向こうも立ち止まってこちらの様子を窺っていたが、カメラを向けるとそのまま再び山の上のほうへ去って行ってしまった。
 
 
 
 そんな寄り道をしながら(細かくは書かなかったが、結構山の中を歩き回ったりして)、ようやく中津川林道の起点に到着。もともと今日は出発も遅かったが、この時点での時刻が11:22AM。この時期にこの地点でこの時刻ってかなり遅いよな。ちょうど画像の左端に写っている自転車のおじさんと、R140を走っていたときから何度も抜いたり抜かれたりを繰り返して、結局ほぼ同時刻にこの場所に到着した。オートバイで自転車と同じペースってどんだけのんびりなんだよ(笑)。
 このおじさんは、これから八丁峠を目指していくそうだが、トンネル方向を指し、県道はこっち?と聞かれたので、リュックから地図を引っ張り出し、そうです、で、こっち側へ真っ直ぐ行くと三国峠ですよ、と答えると、
 「三国峠!?新潟の??」
 って驚いてた。いやいや、埼玉にも三国峠があるんですよ(笑)。
 
 
 
 そしていつもの森林科学館前でパチリ。中津川林道が途中までしか通れないせいか、この場所も心なしかいつもより寂しげに感じてしまうのは気のせいか・・・。
 
 
 
 そんなこんなで、ついにやって来たぞ、初夏の中津川林道!
 
 
 
 土砂崩落の復旧まで相当の時間を要すると聞いて、今年はもう中津川には来れないかと思いもしたけど、考えてみれば、通行可能な旧森林鉄道区間にだって、素晴らしい景色が待っているじゃないか!
 
 
 
 さっきまで本当に晴れるのか不安だった空も、中津川に着いた途端に雲を追いやり、眩しい太陽の光を放ってきやがった!もう最高だぜ!
 
 
 
 あー、本当に来て良かった。峠まで通り抜けが出来ないのは残念だけど、この区間を走ることが出来るなら、紅葉の時期だって全然楽しめるよな。
 
 
 
 これは先日の台風4号の影響だろうか。路面上に斜面から土砂が流れ落ちてきている。通行には全く支障はないが、この程度の荒れた箇所がいくつかあった。今年は本当に豪雨が多いし、これから台風も来ることを考えるとちょっと心配・・・。
 
 
 
 やはり台風の影響で土中に残る水が多いのか、ここでは路面の轍に沿って水が川のように流れていた。林道では特に珍しくもない光景だけど、中津川でこれはあまり見ないような気もする。木漏れ日の中で水面に反射する緑が美しくて、つい見とれてしまう。
 
 
 
 再び土砂で路面を覆われた地点が。ここは結構な厚みで泥が積み上がり、乗り越える最中もタイヤが取られそうになってしまう。ただ、改めて写真を見ると、脇の壁は土砂を落としてくるような場所には見えないが、この泥はどこから来たんだ?
 
 
 
 周囲はどこまでも鮮やかな緑に囲まれ、木洩れ日に身体を撫でられながら走り進むのが本当に気持ちいい。この陽射しは、通行止めに臆さずここまで走りに来た俺に対する中津川からのご褒美だな、きっと(笑)。
 
 
 
 BAJA君も心なしか車体の発色が良く、喜んでいるかのように見える(笑)。やはりオマエは山の中が一番似合うぜ。
 
 
 
 優しくもあり、力強くもある緑。この地に生きるあらゆる生命の力を融かし放出しているかのような緑。そんな緑に染まった空気を、胸一杯に吸い込んで走る。
 
 
 
 まるで世界のすべてがそうであるかのように錯覚させるほど、どこまでも続く匂い立つ緑。いつまでもこの景色が変わらず残されることを心から願う。
 
 
 
 なんて、一人でウットリしながら(笑)進んでくると、とうとうゲート閉鎖地点である信濃沢橋に到着。本来は冬季閉鎖時に閉じられるゲートだが、そういえばこのゲートが閉まっているのをこの目で見るのって初めてだな。
 
 
 
 時刻もすっかり昼時となり、だいぶ腹も減ってきた。ちょうどいい、BAJAをゲート前に停めて、今日はこの信濃沢支線で飯にするか。
 
 
 
 おお・・・緑色に苔生した地表が美しい・・・。
 
 
 
 さあ、飯にするぞー!こんなところまで入ってくる人も他にはいないし、眩しい木漏れ日の中で食べる飯はホント美味いぜ!
 
 
 
 しばらくすると、橋の上に数台のバイクがやってきた。木々の隙間から見ていると、バイクから下りたライダー達が何とかゲートを開けようとしていたようだ。しばらくそんなことを頑張っていたようだったが、やがて諦めたのか引き返して行った。そのゲートをこじ開けるのは、どう頑張っても無理だと思うぞ・・・(笑)。
 
 
 
 さて、休憩も済んだし、ここを引き返して次に行くとするか。
 
 
 
 戻り際に大山沢線に立ち寄り、起点の旧タイプ標識を撮影。新緑の中の旧タイプ、素敵でしょ?
 
 ・・・そろそろみんな、標識が好きになってきたかな(笑)?
 
 
 
 さあ、果たして今年の冬季閉鎖までに復旧は間に合うのか。ま、もしダメだったとしても、紅葉の時期になればこの区間だけでも走りに来るけどね。
 
Aへ続く。