奥秩父いま・むかし
2012/06/23 埼玉県・奥秩父の林道 -A
 
@はこちら。
 
 
 
 中津川林道を神流川出合まで戻ってきた。続いて県道210号中津川三峰口停車場線へ入り、次の目的地へ。
 
 
 
 やってきました、林道上野大滝線の埼玉側の起点です。
 昨年、ついに全線が開通したというこの上野大滝線も、残念ながら現在は土砂崩落により通り抜けが出来なくなっているようだ。最近は本当にどこもかしこも崩落だらけだな・・・。それでも今日ここまで来たのには訳がある。
 次の画像を見て欲しい。
 
 
 

『埼玉の県営林』 埼玉県農林部林務課(昭和38年発行)より引用
 
 これは、この道が群馬と繋がる上野大滝線となる以前の、林道山吹線として開設された当時の起点の風景である。林道山吹線は、県有林関連林道として昭和31年から開設が始められ、『埼玉の県営林』が発行された昭和38年までには、山吹谷までの5,820mが開設されていたようだ。
 
 さてみなさん、この画像を見て、既に何かにお気づきですね(気付くか?)。
 
 
 
 そう、この山吹線の起点標識、何と旧タイプである!しかも、開設当時のまだ真新しい姿を収めた、実に貴重な1枚なのだ!今まで「旧タイプ林道標識図鑑」に収録してきた標識は、どれも長い年月を経て様々な風化の度合いを見せる姿となっているが、この山吹線の新品の旧タイプ(ってのも変な日本語だが)は、当たり前だが錆一つ無い実に美しい姿のままで記録されている。特に、残念ながら管理者の名称こそ写っていないものの、真っ白に塗装されたままの支柱は注目に値する。
 初めて見るほぼ新品の状態の旧タイプ標識であることに加え、既に現存しない山吹線の標識だということで、この画像を見つけたときはあまりの衝撃で鼻血が出るかと思った(笑)。
 
 そんな訳で、この写真と同じ地点の現在の様子を改めて見たくてここまでやってきた。 そして、下の画像が、ほぼ同じ位置から撮影した現在の上野大滝線の起点風景だ。
 
 
 
 全く同じ位置に行くと、橋の手前に生い茂った草で道が見えなくなってしまうので多少ずらした位置から撮影したが、欄干の形状から、この古い写真に写るこの橋は、神流川を渡るこの大黒橋であることが分かる。『埼玉の県営林』にも、大黒が起点との記述があるので、この地点である事は間違いないが、開削から50年以上の年月を経て、周囲の山肌はすっかり緑を取り戻したようだ。果たして、50年後の景色はどのように変わっているだろうか。
 
 
 
 さて、せっかくここまで来たので、この上野大滝線を行けるところまで進んでみるとしよう。ここへ来るのもホント久しぶりだなー。
 
 
 
 しかし、残念なことにダートに入ってすぐの地点にあるゲートが閉じられていた。最近でもゲートが開いていたこともあったようなので、もしかしたら・・・とちょっと期待していたんだけど、まあ仕方ないか。
 
 
続いては、県道を引き返してR140まで戻り、一旦山梨方面へと進んでいく。
 
 
 
 滝川渓隧道を越えてすぐに現れるこの分岐。ここはナメ沢林道といい、入川林道や東谷林道と同じく、東京大学秩父演習林林道だ。東大演習林林道なので恐らくそうだろうとは思っていたが、案の定起点はゲートで閉鎖されている。
 
 
 
 入口を閉じるゲート本体もかなりの本気度を感じさせるが、道の脇の僅かなスペースも柵によって完璧にシャットアウトされている。今まで県内で見た他の東大演習林林道のゲートの中でも、これは一番屈強なゲートかもしれない・・・。
 
 
 
 ゲートの隙間に頭を突っ込んで奥を覗いてみると、緑に苔生した擁壁がかなり良い雰囲気を醸し出している。あー、奥まで行ってみたいなあ・・・。
 とりあえずここは起点の確認に留め、次の目的地へと向かう。
 
 
 
 再び秩父方面へと引き返し、続いて入川林道へ。
 
 
 
 国道からの分岐を下ってすぐに、学生寄宿舎が建っている。かつては森林軌道が通っていた入川林道だが、現在の林道起点よりも手前にあるこの路上にも軌道が通っていた。
 
 
 

『科学の森たんけん4 秩父演習林の歴史』 東京大学秩父演習林(平成17年発行)より引用
 
 これは、トロッコが稼働していた当時のこの地点を移した写真だ。二つ上の写真とは写した方向が逆だが、画像の右側に寄宿舎が写っているので、同じ地点である事が分かる。トロッコには材木ではなく、何故か数人の人間を載せているが、見学会か何かの様子なのだろうか。今となっては非ッ常に羨ましい姿ではある(笑)。
 
 
 
 そして、そこから更に下って入川林道の起点にやってきた。BAJAのいる直進方面が入川林道、そして左手に分岐している道が滝川軌道跡である。
 
 
 

 
 
 これも『科学の森たんけん4 秩父演習林の歴史』からの転載だが、上の写真と同じ地点、森林軌道当時の入川・滝川分岐点を写したものだ。現在の国道側へと延びる道を含め3方向に軌道が延びているが、軌道はこの地点でデルタ線を構成していたようだ。
 現在は車道となった場所に敷かれていたかつての軌条の姿、こうして写真を見ているだけでワクワクするぜ(笑)。
 
 
 
 さて、せっかく久しぶりにここまで来たので、ゲート地点まで走ってくるとしよう。そういえば、以前ここに来た時は車だったから、BAJAで走るのは何気に初めてなんだよな。
 
 
 
 入川沿いの雰囲気のいい道を1.3km程進み、夕暮キャンプ場を越えた地点でゲートに行き着く。
 
 
 
今日はここで引き返すけど、また久しぶりにこの先の軌道跡も歩きに行きたいな。
 
 
 
 入川林道を引き返し、更に荒川方面へと向かう。ここは大達原地区のR140の路上、後方に見えているのは大達原隧道だ。
 ここまでいくつか古い写真を載せてきたので、ついでと言ってはなんだが、ここでも昔のこの地点の写真を見ていただこう。
 
 
 

『蘇る古道 雁坂トンネルと秩父往還』 山梨県道路公社(平成10年発行)より引用
 
 これは大正初期に撮影された大達原隧道の姿である。この道は、強石から入川谷・豆焼谷に向かってトロ道として開削され、初めは四輪付き台車に制御装置を付けたものを用いていたが、その後一部では馬で曳くようになり、更に小型機関車を経てモータリゼーションの発展に伴い現在の車道へと改修された。この画像でも、路面の山側に軌条が敷かれているのが分かる。
 

 
 
 国道となった現在のこの道は路面が拡幅され、隧道入口には覆道も付けられ、開設当時とはだいぶ様変わりしたが、隧道の外側の岩肌が当時と変わらぬ姿を見せていて、確かに同じ場所であることがわかる。
 普段何気なく通っていた道でも、こうして改めてかつての姿を見ていくと、確かにそこに存在した遠い昔の人々の営みがリアルに迫ってきて、いつものツーリングとはまた違った楽しみを見つけることが出来た。
 
 
 さて、先ほど中津川林道でちょっとしたものを見かけたので、TKさんに報告がてらメールを入れておいたところ、午後からバイクに乗るつもりなので一緒に走らないか、と連絡が来ていた。というわけで、この後は集合場所となるあらかわのコンビニへと向かう。
 
 
 
 コンビニに到着すると、既にTKさんは到着済みだった。今日はXL250Rパリダカでの登場だ。そして今日はKYさんもVTRで来てくれていた。
 2月に車両だけは見せてもらっていたけど、TKさんのパリダカと一緒に走るのはこれが初めてだな、と思いながらパリダカのタンクの上を見ると、おや、何か乗ってる・・・。
 
 
 
 でっ、出た!KYさんの新作、XR BAJA PARIS DAKAR CUSTOM!そう、ナノレカワのBAJA君だ!2月に前作のCB250 RS−ZRを見せていただいた時もここで紹介したが、相変わらず凄まじいそのクオリティの高さに驚かされる。前作まではほぼ紙素材を使用しての制作だったが、今回はプラ板やセメントなどを使用されたとのこと。写真でもその凄さは伝わると思うが、実物を見ると、その精密な造形は溜息が出るほど素晴らしい。全長僅か10cm程のサイズの中に、これだけの細かな造形が詰まっているなんて、これを”神”細工と言わずして何と言おう!
 そのKYさん、今日はいろいろと予定が立て込んでいる中、たまたま時間の空いたタイミングでTKさんに呼び出しをくらい(笑)、これをナノレカワに届ける為に出てきてくれたとのこと。忙しい中、ありがとうございます!
 
 
 
 しかも今回は、オリジナルの林道標識の立つジオラマベース付き!至れり尽くせりの完成度にナノレカワも思わずウットリ(笑)!そりゃ実物と並べて撮影しないわけには行かないでしょうよ!
 と、またしてもそんな姿↓を撮影されてしまったワケだが・・・。
 

 
 
・・・・・・。
 
 
 
 な、なんだこれは・・・どう見ても変態以外の何物でもない・・・。
 自分は撮影に夢中で気付かなかったのだが、ちょうどこの時、すぐ近くの踏切が閉まっていたために、停車した車の列からガン見されていたらしい。は、恥ずかしすぎる・・・。
 
 と、そんな格好をしてまで撮影をしたくなるほど素晴らしい出来栄えの作品だってことですよ(笑)。今回もKYさんのブログで制作過程を公開されているので、是非観に行ってみて下さい。間違いなくその職人技に驚かされるはず!
 
 そんなわけで、今日はKYさんとはここでお別れ。本当にありがとうございました!
 この後は、TKさんにある一本の林道を案内してもらうために皆野町へと向かう。
 
 
 
 県284を進み、やって来たのは林道門平線。ここは前回この周辺に来た時に探していたのだが、唯一この道だけ見つけられずに終わっていた。今回TKさんに案内してもらうと、県道から分岐する、まるで民家にでも延びているようなコンクリート舗装の道の奥にその起点はあった。この入口、前回も見かけていて、確かにアヤシイとは思っていたんだけどな、不覚・・・。
 
 
 
 早速コンクリ舗装の急勾配の道を進んで行く。途中、一か所視界の広がる地点があるが、あとはひたすら鬱蒼とした区間を進むこととなる。
 
 
 
 そんなに長い道ではないのだが、初めて走る林道なので、埼玉版用の撮影をしながらちょいちょい停車を繰り返す。TKさん、いちいちお待たせしてスイマセン・・・。
 
 
 
 やがて道も終盤に近づいてくると、苔?藻?なんだかよくわからないけど、ゴワゴワッとした物体が路面を覆う地点に出た。先へと進むためには、所々でその物体を踏みつけて進まざるを得ないのだが、き、気持ち悪いよお・・・。
 
 
 
 そして起点から約600m程の道のりを経て終点に到着。
 
 
 
 ただ、終点標識の立つ地点から先にもガードレールが続き、まだ道は続いているようにも見えるが・・・。ここにBAJAを停めたまま、ちょっと歩いて見に入ってみよう。
 
 
 
 しかし、車道はすぐに途切れ、その先は登山道となっているようだった。実は終点に到着したとき、ちょうど終点の奥からソロのハイカーが下ってきたところで、まさかこんな所に人がいるとは思わなかったのでちょっとビックリ・・・。
 ともかく、ようやく念願の門平線に来ることが出来た。道も短めの舗装林道ながら、なかなかの味わい深さもあって大満足!TKさん、ありがとうございました!
 
 
 
 その後は、バイク乗りの集うお好み焼きの店「Hi〜な」さんに案内していただき、美味しいお好み焼きとマスターの楽しい話をいただいて帰路へと着いた。
 ここ最近の豪雨の影響で、あちこちの林道で閉鎖になっていることもあって、今日は林道自体はそれほど距離を走れたわけではなかったけれど、いつもと違った視点で辿ることで、普通の林道ツーリングとはまた違った楽しみ方をすることが出来た。国道140号周辺の歴史もなかなか興味深いし、今日はピンポイントで昔の姿を見ていった形になったけど、いずれはそれらの点をしっかりとした線で結んで調べてみたいな。