晩秋の廃線を歩く
2013/11/16 埼玉県秩父市・入川軌道ハイキング-@
 
 11月も半ばに入り、めっきり寒くなってきましたね。それでも今年は、気持ちの中でいま一つ季節の移り変わりを実感できていない気がする。それは・・・紅葉を見ていないからだ!
 ここ数週間は、週末になると天気が崩れるという嫌なサイクルが続いていたが、今週末はようやく晴天に恵まれるようだ。今日向かう場所は、もしかするともう紅葉のピークは過ぎているかもしれないが、もう行くしかないでしょ!
 
 やってきました奥秩父。雲一つない青空が素敵過ぎるぜ。こんな気持ちの良い週末は本当に久しぶりだな。
 目の前に見えているのは、国道140号と県道210号線の分岐点。いつもならここを右折して中津川林道へと向かうところだが、今日はこのままもうすこしだけ国道を直進する。
 
 やってきました。東京大学秩父演習林林道・入川林道です。
 
 起点からの未舗装路を1.3km程進んでくるとゲートで閉鎖され、ここから先は一般車両の通行は出来ない。
 
 今日はこの先にある、入川軌道跡を歩いていくためにここまで来たのだ。BAJA君、ちょっとそこで待っててね。
 ここを歩くのもだいぶ久しぶりになるが、一体いつ以来だろうと思って過去の日記を見てみたら、もう7年半も前のことだった。月日の立つのが早すぎて恐ろしい・・・。
 
 現在時刻は9:30AM。谷合を流れる入川沿いの道なので、陽が入ってくるのもだいぶ遅いだろうとは思っていたが、まさかここまで寒々しい景色が広がっていようとは。既に紅葉のピークを過ぎて葉を落とした木々が目立つことに加え、、昨日降った雨に濡れた周囲の木々や道が、寒々しいという印象に拍車を掛けているようだ・・・。
 
 っていうか、印象だけでなく、実際本当に寒いんですけど・・・。どれだけ寒いかって言うと、BAJAを降りたときに外したグローブを、またすぐに着け直してしまったといえば分かってもらえるだろうか。歩いていればすぐに暖かくなるだろうと高を括っていたんだけど、結局しばらくの間、バイクに乗っていた時と同じ恰好のまま歩くことになってしまった。
 そういえば、正丸トンネルを抜けたところにあった気温計は2度を示していて一瞬目を疑ったが、横瀬の辺りでそれならここがこれだけ寒いのも納得が行くな。
 
 道のすぐ脇を流れる入川。恐ろしいまでの透明度の高さだ。物凄く冷たいんだろうな・・・。
 
 おお、やっと日向に出たぞ!やっぱり陽の光に当たるとホッとするなあ。路面の上に漂う靄がちょっと良い雰囲気。
 
 途中、橋を渡る地点から脇を見ると、山肌に沿う様に石積みで造られた軌道跡がある。現在の車道化された林道の途中でここまで明確な軌道跡が見られるのはこの場所だけだと思う。本来は沢を跨ぐ橋が掛けられていたのだが、その橋もとうに落ち、歪んだレールだけがそこに残されている。
 
 このレールだけ残された橋の跡がすごく好きなのだが、近付いてみると何やらカメラのようなものが設置されている。この後の軌道跡でも、四季の変化を記録しているというカメラが置いてあったが、これもそうなのかも知れないな。
 
 さあ、みんなの大好きな廃レールのお時間ですよ(笑)。
 
 登山道との分岐に到着。いよいよここからかつての軌道跡を辿って行く。
 
 さて、今日はここからだらだらと多量の写真を並べていくので、ナノレカワの散歩におつきあいするつもりで適当に流し見して下さい(笑)。
 
 それにしてもこの景色、晩秋を通り越して、もうすっかり初冬だな・・・。
 
 登山道に入って程なく、敷かれたまま残る枕木が姿を現す。ここまで来たらあと少しだ。
 
 出た!入川軌道の廃レール!
 
 この入川軌道は、大正12年に着工、昭和11年に赤沢出合までを入川軌道として完成し、昭和44年まで運行されていたという。その後、昭和58年に一度だけ、赤沢出合付近の発電所取水口工事の際に資材運搬用として復活したそうだ(参考:『全国森林鉄道』JTBパブリッシング刊)。
 現在でも撤去されること無く残るこの軌道跡だが、あちこちでレールの歪みや路肩の欠損があり、もしもう一度運行させようとしたら、かなり大掛かりな改修が必要となるだろう。ここが再び軌道として使われることはもう無いとは思うが、それでもこうしてかつての面影が残されているのは嬉しい限りだ。

 で、何で林道ナノレカワ線が線路跡を歩いているかって?ぬふふ、林道規定によれば、森林鉄道(現行の林道規定では「単線軌道」)も立派な林道の一種なのだよ!よって、ナノレカワがこうして森林軌道跡を辿っているのはごく当然のことなのである(笑)。
 
 レールが姿を現わしてまだ間もないうちから、枕木が空中に突き出してしまっている場所がある。そのうちレールまで中に浮いてしまいそうだ。
 
 地形に沿って緩やかなカーブを描いて延びるレール。いやあ、溜まりませんねえ。
 
 貴重な日向に出て来た(笑)。
 時期が時期だけに、場所によってはたくさんの落ち葉に覆い隠されてレールがほとんど見えなくなっている。
 
 軌道敷は、片時も入川から離れることなく延びている。こんな場所が歩道として整備されていて、普通に歩くことが出来るなんて、実はなかなか貴重だよなあ。
 
 再び日向に出る。ずっと歩き続けて身体も温まってきたので、ようやくジャケットを脱いでグローブを外す。
 
 路面は終始、落ち葉に覆われて晩秋の装いを見せる。
 
 以前訪れたときは新緑の眩しい季節だったが、こうした秋の柔らかな色彩に包まれた景色もまた素敵だ。
 
 ここは軌道の廃止後に斜面が削れていったのだろうが、レールが路肩ギリギリですよ・・・。
 
ふと足元の川を見下ろすと、たくさんの大木が岩の間につっかえている。恐らくは台風などの大水で流されてきたのだろうが、自然の猛威を垣間見た思いだ。
 
 カーブする軌道の奥で緩やかに流れる入川。これ、今回ちょっとお気に入りの一枚なのだが、なかなか素敵な景色だと思わない?
 
 路肩からはみ出たところに、苔生した橋脚が見える。現役時代はこの上にもレールが延びていたのだろうか。
 
 この辺りも、あと一週間も早ければ見事な紅葉が見られたのだろうな。この冬枯れた景色も、それはそれで良いものではあるが。
 
 乾いた落ち葉に包まれた廃レール。ほら、これはこれで悪くないでしょ?俺はすっごい好き(笑)。
 
 あ、着いた・・・。
 
 ゲートから歩き始めておよそ70分、赤沢出合に到着した。以前来た時はもうちょっと掛かったような気がしたが、意外と早く着いたな。
 
 ここには入川軌道についての説明の看板も立てられている。これ、イラストじゃなくて当時の写真を使ってもらえると嬉しいな(笑)。
 
 みなさま、こちらをご覧ください。ここが荒川の起点でございます。
 
ここで入川と赤沢が合流した流れが荒川となり、最終的に東京湾へと注がれていく。
 
 赤沢の上流がら、岩の間を縫うように清らかな水が入川へと注ぎこまれていく。
 
 さて、それじゃちょっと早いけど飯にしようかな。お水を少々頂きますね。
 
 汲んできた水を火に掛ける。早く湧かないかなー。
 
 出来た!特製荒川ラーメンじゃーい!
 今日は紅葉を見たかったのももちろんだが、この荒川起点の水で飯にするのも目的の一つだったんだ。紅葉のほうはほぼ終わりだったが、これが出来ただけでも満足だ。
 
 ラーメンをスープまで飲み干して、更にコーヒーも頂くよ。川の流れる音だけが響く中で、俺にしてはだいぶのんびりとした時間を過ごしている。いつもは駆け足で林道を巡ってしまいがちだが、たまにはこういうのもいいよな。
 
 赤沢の上を見上げると、爽快な青空が広がっている。この先には、更に十文字峠へと続く登山道が延びている。
 
 その登山道の脇を見上げると、切り立った岩の上にコンクリートの遺構が見える。
 
 入川軌道は、この赤沢出合を終点としていたようだが、ここから先にも上部軌道として赤沢軌道が延びていたという。入川軌道と赤沢軌道とは、この地点で索道を用いて接続していたということを聞いたことがあるが、恐らくこれはその索道の基部かなにかだろう。いずれはその赤沢軌道にも行ってみたいが、ここから先はさすがに今日みたいにオフブーツでは無理だろうな。
 ・・・そう、今日はここまでオフブーツのまま歩いてきてしまったのだよ。すげー場違いもいいとこだ(笑)。
 
 そんなこんなでだいぶゆっくりしているうちに、後続のハイカーが2グループ程やってきた。これからもっとやってくるだろうし、にぎやかになる前にそろそろ引き返すとするか。
 
Aへ続く。