Beyond The Heaven's Gate 2017
2017/05/06 埼玉県秩父市・天目山林道-@
 
 天目山林道
 秩父市の浦山地区を起点とする国有林林道である。東京都との県境に位置する天目山山頂の北側をかすめ、更に県境に沿って大平山をも越えて終点へと至るその延長は、一般車両の立ち入れない細久保橋のゲート地点以降でも20kmに及ぶと言われる、長大な行き止まり林道だ。
 前回天目山林道に訪れたのは今から8年前のことだったが、あの時はあともう少しで終点というところまで到達したにも関わらず、路盤の崩落によりそれ以上の進行を断念し、結局終点を見ることなく引き返していた。
 更にこの天目山林道からは、仙元林道熊取林業専用道細久保林道という3つの支線が分岐しているが、現時点でそのどれもが未踏破のままだ。
 今日は、天目山林道の終点への到達、そして支線の全踏破のリベンジを果たす為に、再び自転車と共にこの地へとやって来た。
 
 今日は5月連休の真っ最中。のんびり来たら芝桜の渋滞に巻き込まれると思い、少し早めに出発をして、6時にはこのゲート前に到着した。さすがにこの時間では、谷深いこの場所にはいまだ太陽の光も届かず、すぐに行動に移すには聊か早いかと思い、30分程の休憩を取ることにした。
 6:34AM、ゲートを越えていよいよスタートだ!
 そういえば、今日は何故か鉄棒のゲートは脇に寄せられ、代わりに簡素なチェーンゲートが掛けられている。この措置の理由はなんだろう?
 
 (なお、県道の分岐からこのゲート地点までの距離は2.8km程あるようで、途中で現れるキロポストは、この地点からの通行距離としてはその約2.8kmを差し引いて見て欲しい。)
 
 これはゲートを越えた地点から先を見た景色。道はいきなりの急勾配で延びているので、自転車同伴とはいえ、初っ端から押し歩きで進んでいくのでありますよ・・・。
 その分、帰りには快適な下り走行が待っていることを楽しみに、頑張って上って行こう!
 
 程なくして管理小屋の脇を通過する。見ると、窓ガラスが抜けてるみたいだけど、冬場にもこのままだと中に雪が入り込んで大変そうだなあ、などと余計な心配をしてしまった。
 
 その小屋のすぐ先で、左手に分岐する最初の支線が現れる。仙元林道だ。ここも終点まで辿るつもりだが、まずは天目山林道本線を終点まで進み、帰りに立ち寄ることにする。
 
 欄干の壊れた小さな橋を渡る。この古ぼけた欄干も、当然ながら林道開通当時からのもので、一度たりとも補修などされたこともないのだろう。
 
 橋の下に注ぐ沢が、小さな滝となって流れている。
 
 15分程上ってくると、ようやく陽の射す区間が見えてきた。
 
 うおー、来た!涼しさの残るこの早朝の山の空気感、実に素晴らしい!やはり太陽の光に包まれると爽快感が段違いだ!
 
 序盤から現れるこんな切り通し一つとっても、実に荒々しい姿を見せてくる。さすがに8年振りということもあり、こういった細かなディテールなどは記憶も消えかけていると思うので、改めて道沿いの景色を見ながらこの先を辿るのが本当に楽しみだ。
 
 出発から22分程が経過したところで、右手の路肩に最初の広場が現れた。以前訪れたときに、ここに鹿の頭骨が転がっていたのが印象的だったが、さすがにもう残ってはいなかった。
 
 うお、この「警笛鳴らせ」の警戒標識、正方形のシルエットをしている!この標識の正式なフォーマットは縦長の長方形で、本来は下部に英文を記載するスペースがあるのだが、それをまるごと省略したこの正方形タイプは初めて見た・・・というか、以前来たときも目にはしているはずだが、その時は全く意識していなかったんだな。
 
 朝日に照らされた新緑の中をのんびりと進む。5月連休の時期ともなると、さすがにこの辺りでも周囲は若葉で溢れている。
 いまのところ序盤から結構な勾配が続くので、ひたすら押し歩きを続けて道を上る。
 
 整然と並ぶ石垣。コンクリートブロックの法面などよりも、より自然に馴染んだ光景だ。
 
 うおっ、落石防止ネットがまるで役立たずじゃねぇかよ・・・。
 
 眼下には沢が流れ、常に水の音が響いてる。
 
 こんな沢を眺めながらのんびりと道を上っていくのもまた実に楽しい。
 
 沢に沿った大きなカーブを越えた先で、再び日向が見えている。
 
 その日向の場所では、流れる沢を橋で跨いでる。
 
 橋に掛かるプレートによれば、これが細久保谷だ。細久保といえば、現在のこの天目山林道としての道筋も、そもそもは「細久保林道」として開設された経緯があり、県道との分岐地点には、今も「細久保林道基点」と記された石柱が残り、その分岐地点の橋の親柱にもいまだ「細久保林道」との文字が残っている。(後日「PHOTOS」に載せておきます)。
 開設当時のこの林道は、まずはこの細久保谷に沿った区間が造られたことで「細久保林道」との名が付き、その後天目山の山頂を目指して延長が進められたことで、「天目山林道」と改称されたのだろう。
 
 細久保谷を越えて更に前進する。まだまだ先は長い・・・。
 
 6.5kmのキロポストの少し手前に来たところで、土砂崩れによって道が塞がれていた。オートバイなら引き返さざるを得ない規模の崩落で、いつもの感覚で「おっ・・・」と思ったものの、今日は自転車だ。担ぎ上げて難なくクリアだぜ。
 
 この程度の崩落なら今日は屁でもないぜ!どんどん進んでいくぞ!
 
 そこから3分ほど歩いた地点で、昭和38年12月に完成したという小さな橋が架かっている。
 
 親柱には「熊取橋」と書かれている。この先には熊取林業専用道という名の付いた支線もあるが、こういう名前が付くということは、嘗てこの辺りに熊を狩るためのポイントでもあったのだろうか。
 
 その熊取橋から進んで2分と経たない地点で、再び路上を崩れ落ちた岩石によって覆われた地点に出た。
 
 ここも自転車であれば問題なく通過できるレベルではある。
 そして、このすぐ先では道がヘアピンカーブ状になっていて、そのカーブの向こうには、この林道の中でも特に印象的な深い切り通しが、ここからも見える左手の岸壁の中を貫いている。
 
 そうそう、この切り通し!ここは良ーく覚えてるぞ!前回もここでは写真を撮ったっけなあ。
 ・・・って、ちょっと待って?何か様子がおかしく・・・。
 
うっ、うわあああああっ!
 
 な、なんだこれは!道の両側に岸壁の迫る切り通しの出口を塞ぐように、高さにして5〜6mはあろうかという大量の岩石が堆く積み上がっている。正直、ここまでの規模の崩落があるとは想像すらしてこなかったが、いったいいつ頃崩れたものなのだろう・・・。
 現在時刻、7:48AM。この光景を見た瞬間、(ここまでか・・・)という想いが頭をよぎったものの、冷静になって良く観察してみると、積み上がった岩はじゅうぶんに良く締まり、適度な大きさの岩が階段状に並んでいることもあり、慎重に歩を進めれば、自転車を担ぎ上げたままでも越えて行けなくはなさそうに見える。
 
 というわけで、ここも自転車と一緒に超えてきた。見た目ほどには難儀しなくて済んだけど、問題は、ここから先にもこういう場所があるかどうかだな・・・。
 上の写真で分かると思うけど、切り通しの奥のヘアピンカーブを超えて、左下にここまでの道が続いている様子が見えている。そして、この一つ手前の土砂崩れは、ちょうどこの地点の真下に位置している。あれは、ここからこぼれ落ちた岩石が積み上がったものだったんだな。これを復旧させるのは相当大変そうだ・・・。
 
 部分的な崩落はあれど、そこを超えてしまえば再び穏やかな道が続いている。5月の若葉に囲まれた道をゆっくりと進んでいく爽快感は格別だ。
 
 7kmのキロポストを越えた頃、右手に分岐が現れた。これが2つ目の支線、熊取林業専用道だ。それほど長いものでもないとは思うが、ここも帰りに立ち寄るとしよう。
 
 そして、この辺りまで来たところで、ふと思い立って自転車の乗り方を変えてみたところ、乗ったまま進んでいくのが急に楽になった。序盤と比較して勾配も落ち着いてきたこともあるとは思うが、漕ぎながら進むことで押し歩きよりも格段に楽だし、気持ちペースも上がった気がする。お、開眼したか、俺(笑)?
 
 ああ、この青空の下、周囲を山々にぎゅっと囲まれているこの感じが堪らなく好きだ。
 
 現在時刻、8:04AM。出発から1時間半が経過したところで、この小さな切り通しの影に腰掛けて、今日最初の休憩を取った。鳥のさえずりだけが響く中、買ってきたパンを食べる。静かな山の中で一人佇むこの感覚は、何度味わってもやはり実に良いものだ。
 
 7.5kmのキロポスト付近にあった切り通し。とても無骨でダイナミックな姿に惚れ惚れ。
 
 現在時刻、8:23AM。目の前に小さな橋が掛かっている。
 
 白殿橋・・・。この名前を見たとき、咄嗟にバカ殿を思い出してしまった。こんな山の中に一人でいる時に、我ながら阿呆だなあ、と・・・。
 
 そんな阿呆をよそに、白殿橋の下に流れる沢は、限りなく透明度の高い水を運んでいる。ため息が出るほどに美しい姿だ。
 
 8.5kmのキロポストが現れた。このキロポストには、何故かスコップが引っ掛けてあるのだが、これは確か8年前にも見た記憶があるぞ。
 
 引っ掛けてあるだけのスコップが8年もそこにあるか?とも思ったが、良く見るとそのスコップは、針金で支柱に括り付けてある。この地点において、このスコップはそんなに大事なものなのか・・・?
 そして、キロポストがあるたびに写真に収めていたのだが、なるべく自転車に乗って進むようにしてから、キロポスト毎の到達時間が、やはり押し歩きのときに比べて早くなっている気がする。この調子なら、なかなか良いペースで終点まで辿り着けるんじゃないか?
 
 現在時刻、8:36AM。ゲート地点を出発してからほぼ2時間が経過した。だいぶ標高も上げてきたのか、周囲には遠くの山が見渡せるようになってきた。
 
 あ、ここ覚えてるぞ。確か前回着たときに誰かパンクして修理した場所だよな。うむ、実に懐かしい(笑)。
 
 道が平坦となるこの地点、山側の広葉樹林と、谷側の杉の植林帯の対比が印象的だが、その植林帯が開けた先に、空が一際広く見えている。
 
 こ、これっは素晴らしい!視線の高さも、次第に周囲の山々の稜線と揃いだし、そこから上には快晴の青空が広がっている。薄く広がる雲も、実に良いアクセントだ。出発から2時間15分程が経過したが、ようやくこんな景色が見られる地点まで上がって来た。
 
 現在時刻、8:56AM。10キロ地点を過ぎたころ、左手に分岐する一本の道が現れた。ここが3つめの支線、細久保林道だ。前回ここに来たときは、起点脇にプレハブ小屋が建っていたのだが、既に撤去されていた。
 
 ここから先にどんな道が続いているのか楽しみだが、ここも帰りに立ち寄るとして、先ずは本線を終点まで辿ることを優先しよう。
 
 さあ、まだまだ先は長いぞ!
 
Aへ続く。