@はこちら。
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10km地点を過ぎ、細久保林道との分岐地点にある切り通しを超えて、更に先へと進む。
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現在の標高は1300m付近だろうか、見える景色もだいぶ空が広がり、高度を感じさせるものになってきた。
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現在時刻、9:02AM。ここで僅かな休憩を取った。この地点でまだ全工程の半分にも満たない。承知の上で来てはいるのだが、本当に長大な林道だ。
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谷を跨いだ先には、これから進む道が見えている。まだまだ先は長ぇぜ・・・。
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遠くに山が見渡せる場所があったので、とりあえず路肩に自転車を停めて撮影。写真では伝わり辛いかもしれないが、ここから見晴らすとかなりの高度感だ。
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またしても斜面から土砂が押し寄せてきているが、この程度じゃもう何とも思わないんだぜ・・・。
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視線の高さのすぐ上に迫ってきた稜線の向こうに、ぼやけた飛行機雲が伸びている。こんなちょっとしたものでも、ただひたすらに道を辿っている身にはいい気分転換になる。
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周囲の景色も、序盤とはだいぶ様変わりをして、かなり開放感を感じるようになってきた。
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12km地点からふと向かいの斜面を見ると、これから進む道の路肩が崩れているのが目に飛び込んできた。おおお、あれは大丈夫なのか?
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と、そんな心配をしながら進んでくると、その崩れた斜面の地点よりも手前で、またしても土砂崩れによって道を遮られた場所があった。
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現在時刻、9:34AM。規模としては先ほどの切り通しの崩落よりも小さいものではあるが、積み上がった岩の手前に横たわる倒木が、自転車を担いだままここを超えることをかなり難しくしている。そして・・・。
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一番厄介なのがこの巨岩だ。周囲の状況から見て、この崩落を通過するには、この岩を超えて行くしかなさそうなのだが、両手両足を使えば何とかよじ登れるものの、自転車を担ぎ上げた状態で、手前の倒木を超えて更にこの巨岩を超えるのは恐らく無理だ・・・。
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自転車で通過出来ない以上、ここから先の区間の往復に掛かる所要時間が大幅に増加することは避けようが無い。これ以上進むべきか、しばらくここで思慮していたが、ここに自転車を置き、歩いてこの先を進むことを決めた。チャリ君、ちょっとここで待っててね。
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というわけで、ここからは一人きりで進んでいく。
ちなみに、さっき見えていた、この先の斜面の崩落のようなものは、本当に表層だけが崩れていたようで、通行には全く支障の無いものだった。
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現在時刻、9:44AM。ようやく13km地点までやってきた。それにしても、一人で歩き始めてからというもの、まるで裸で歩いているような妙な心細さを感じている。さっきまで一緒にいた自転車を置いてきただけで、こんなにも気持ちに変化が起こるものなのか・・・。
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自転車の転がる音も無く、自分が歩く微かな歩行音だけが響く静かな空間に、時折必要以上に自分の手で熊鈴を鳴らしながら進んでいく。
そして、実は自転車を置いて歩き始めてから左足の付け根に、痛みとまでは行かないものの、微妙な違和感を感じ始めていた。久しぶりの自転車の押し歩きで、不自然な体勢で歩いていたことや、慣れない坂道走行が祟ったのかもしれない。今のところ歩行に支障は出ていないが、この状態で終点まで歩いていけるのだろうか・・・。
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眼下に広がる山々は、既に鮮やかな新緑に包まれているが、この辺りは木々の芽吹きにはいささか早いようだ。
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現在時刻、10:00AM。14km付近まで来て、今日初めて路肩に雪の残る地点があった。確かにこの時期のこの標高辺りなら、中津川林道でも毎年雪が残っていたもんなあ。
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その雪を掴み取り、玉を作って関節に押し当ててみる。うん、気持ち違和感が和らいだ気がする。
・・・いやいや、こんなことをしている時点で駄目じゃないのか?
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後から思い返すと、関節の違和感そのものよりも、違和感を抱えたまま歩き続けているということが、徐々に気持ちに影を落とし始めていたのだが、この時は何とかその気持ちを覆い隠して、自分を誤魔化しながら歩いていたように思う。
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現在時刻、10:15AM。路肩に少々広くなったスペースが現れた。ここで一旦休憩を取ることにして、本当にこのままこの先を進むのか、それともここで引き返すのかを考えてみることにした。
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地面に寝転がって、ここまで上り続けてきた身体を休める。草の上に横たわるこの感覚、久しぶりだなあ。
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そのまま10分くらいうたた寝をしていたのだが、キョーン・・・という、恐らくは鹿の鳴き声で目が覚めた。さて、この後はどうしようかねえ・・・。
ここから終点まで、残る距離は恐らくあと10km程。単純に時間的なことだけを考えれば、歩いての往復も不可能ではないと思うが、このまま足に不安を抱えてこの先を進んでいくことにはどうしても不安が残る。
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結局、今日はここで引き返すことに決めた。そもそもが、今日は帰路を全て自転車に頼るつもりの計画だったので、ここから徒歩での往復ということ自体がもう、今日のペース配分から考えて想定外ではあったのだが、それでも引き返す踏ん切りが付かないままズルズルとここまで来てしまった。しかし、これ以上進んでから何かあって引き返すことにでもなれば、その距離に比例して帰路が大変なことになっていくことは明白だ。折角ここまで来て、という想いを拭うのは正直辛いものがあったが、崩落に阻まれ、電波も届かず、ほぼ誰も来ることが無いであろうこんな場所で、単独行での無理は禁物だ。いずれまた体勢を立て直して再び挑戦するとしよう。
・・・ってかさ、何でここまでメット持ってきてんだよ、自転車のとこに置いてくりゃ良かったよ・・・。
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引き返すことには決めたものの、だったらあとちょっとだけ進んでみようと思い、荷物を置いたまま先へと歩き出した。良くないよねえ、こういうの・・・。
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歩き出してすぐ、次のカーブに差し掛かった地点に、15kmのキロポストがあった。終点まで残りはあと9km程か・・・うん、このまま大人しく引き返そう。10:42AM、撤収。
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遠くには、この先の道が尾根を越えてまだまだ続いているのが見えている。悔しいが、あの先へは改めて出直すとしよう。
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荷物を片付けて、来た道を引き返す。途中、ふと足元に亀裂が走っているのに気がついた。結構長く続いてるけど、これ、ヤバイんじゃねぇか?このまま崩れたら、路盤をごっそり持っていかれるぞ・・・。
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途中の斜面から露出していた、印象的な岩肌。ここだけ地質が違っているのかな?
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ここでは、過去の崩落によって引き剥がされたであろうガードレールが、斜面に垂れ下がったまま無残な姿を晒していた。
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そりゃあ、こんな削りっぱなしの斜面だし、当然冬場は深い雪に覆われて、春にはその雪融け水で洗われるとなれば、いつ崩れたって何もおかしなことは無いよなあ。
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現在時刻、11:26AM。チャリ君、ただいまー。さあ、ここから一緒に下って行くよ。
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11:36AM、下り始めて程なく、細久保林道の起点に到着。天目山林道本線は終点まで辿れなかったが、せめて分岐する支線はしっかりと終点を確認してこよう。
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序盤こそ路面は一面草に覆われ、よくあるそこらの行き止まり林道のような風情だったものの・・・。
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少し先へと進むと、広い幅員とフラットな路面の、かなり上質な道が待っていた。さすが国有林林道クオリティといったところだ。奥秩父林道や、このすぐ近くの秩父林道でもそうだったが、この近辺の国有林林道では、路面の轍も無くフラットなまま綺麗に保たれているものが多い。日常的な車両の通行が無いことが影響しているのだろうか。
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ここは終点までの距離はそんなに長くは無いはず。恐らく1kmを超えることは無いだろうと思う。
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結構歩いて来た感じだけど、そろそろ終点に着く頃かな?っていうか、着いてくれ・・・。
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そんなことを考え始めた頃、その先のカーブを曲がった地点で、遂に終点となった。歩いた感覚的に、起点からここまで600m程だったろうか。細久保林道、無事に全線踏破だ。
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この山深い道の行き止まりから見る景色は、何とも感慨深い。恐らく、ここからの景色を見ることはもう一生無いんじゃないかと思う(笑)。しっかりと目に焼き付けて帰ろう。
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細久保林道を引き返して、天目山林道へと戻って来た。広い青空が目に眩しいぜ。
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さあ、ここからしばらくはひたすら重力任せで下っていくぞ!
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自分の足で稼いだ標高を自転車で下るのは、ひたすら林道を上り続けた帰り道ならではの楽しみだけど、そこにこんな直線コースがあったりするともう最高!
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これだけ沢との高低差のある路肩にガードレールが設置されていないのも、一般車両の通行を考慮していない国有林林道ならではって感じがしていいね。
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そんな感じでところどころで寄り道しながら下ってくると、カーブを曲がった先にいきなり大量の岩が。うわっ!びっくりしたぁ・・・。
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・・・って、さっきの切り通しの土砂崩れだけど、分かっていても驚くくらいのインパクトがあるよ、この光景は・・・。
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さっきはそのまま通過してしまったけど、ここは見た目ほど通るのが難しくないし、この先ももう何があるかは分かっているので気持ちにも余裕がある。せっかくだからチャリ君を置いて撮影して行こう(笑)。
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少し引いたところから見た、切り通しを塞ぐ崩落の全景。自転車と比較して、その規模が伝わるんじゃないかと思う。この天目山林道、現役で管理されている林道なので、近いうちに復旧工事の手が入るだろうとは思うが、途中で見てきた全ての土砂崩れを片付けるのは相当大変だろうな・・・。
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ここでも、ほんの少しだけパノラマにしてみた(↑クリックすると別ウインドウで拡大写真が開きます)。
両側の高い岸壁と、出口の崩落によって三方を塞がれたこの光景。実際にここに立つと、その圧迫感は決して不快なものではなく、妙に落ち着いた気分になり、この特異な光景を、とても美しいものと感じていた。ここを離れるのが何だか名残惜しくなってしまい、自転車を岩の上に置き去りにしたまま、しばらくこの光景を眺めて過ごした。
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さて、そろそろ行こうか。この崩落が片付くのは、いったいいつになるだろう・・・。
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ちょうど急斜面で木々が途切れた地点で、この先のカーブで折り返してきた道の続きが見下ろせたので撮ってみた。序盤の区間がどれだけ急勾配なのか良く分かるでしょ?
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現在時刻、12:22PM。だいぶ起点に近づいて来た。あとは支線を片付ければ、今日の残りのミッションは完了だ。
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Bへ続く。
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