生きてる林道はどこにいる!?
2019/11/03-@ 福島県南会津町・林道七ヶ岳線
 
 10月12日に関東甲信越地方を襲った台風19号は、これまでに類を見ない程の巨大な勢力を持って、各地に河川の氾濫や道路の損壊などの甚大な被害をもたらした。特に、ナノレカワの地元埼玉でも、今まで経験したことが無いような規模の被害を受け、連日ニュースでも報じられていたのは記憶に新しい。それは市街地のみならず山間部でも同様で、特に関東甲信越の多くの林道が壊滅的な状況となっている様子が、台風通過後数日経った頃からに徐々に伝わってくるようになってきた。そしてその中には、今年の6月におよそ3年ぶりの再開通を果たし、紅葉の景色を楽しみにしていた中津川林道も・・・。
 そんな各地の状況をいやと言うほど目にし、今年はもう林道ツーリングは無理なんじゃないか、そんな悲観的な気分になったまま10月が過ぎ去った。今年はこのまま各地の冬季閉鎖を待つだけかな・・・そう思っていたとき、ツイッターであるひとつの情報を目にした。
 
 福島県の林道七ヶ岳線が生きている、と。
 
 そのツイートを目にした翌日、早速七ヶ岳線を目指してやって来た!ここは栃木の西那須野塩原IC。ここからあと1時間程走って福島に入る。
 今日は3連休の中日。昨日は雲ひとつ無い青空が広がっていたようだが、今日は朝から薄曇りの空模様となっている。天気予報ではもう少し晴天が期待出来そうな感じではあったはずな気がしたのだが・・・。
 
 自宅を出発してからきっかり3時間で、林道七ヶ岳線に到着!前回のツーリングに引き続きの福島だぜえっ!それにしても、栃木との県境に程近い場所ということもあるが、3時間でここまで来れるって、実は以前の印象ほど遠い場所では無いんだなー。
 
 ここに来るのは、2013年の10月に初めて走って以来2度目となる。走りやすいロングダートなうえ、途中で眺めの良い地点もあり、かなり良い印象の残る林道だった。あのときは時期的に紅葉にはまだ早かったが、今日はこの入り口から既に色付いた木々に囲まれ、この先の景色にも期待が持てそうだ。
 
 情報通り、入り口には規制なども無い。それじゃあ、6年振りとなる七ヶ岳線。早速行ってみよう!
 
 入り口からすぐにある小さな橋を渡ると、道はダートに変わる。ここから林道を抜けるまでフルダートだ!
 
 周囲は紅葉に染まりはじめた木々に囲まれ、柔らかな空気感を伝えてくる。
 
 ときおり雲の切れ間から射す日の光が、紅葉を鮮やかに照らし出す。そんな道をのんびりと走っていけることが嬉しくて仕方が無い。
 
 ただ、こちらの糸沢側は、このように路面に洗掘がある区間がそこそこ長く続いていた。もちろんオフ車での通行に支障のあるようなものでは無いが、念の為気を付けたほうがいいかも。
 
 そんな道を進んでくると、周囲が開け、目の前に送電鉄塔が立つ地点に着いた。おお、ここだ!
 
 ここが七ヶ岳線随一のビュースポットだ!前回訪れたときにここから見た景色がとても印象深く、今回もとても楽しみにしてきたが、目の前に広がる、遥か遠くまで続く山並みはそのほぼ全てを秋色に包み、期待以上の景色で出迎えてくれた。
 ただ、前回ここで写真を撮ったときは、いまいる地点よりもう少し手前側でシャッターを切ったのだが、今回来てみるとその辺りは、斜面の潅木が伸びてきていて、やや視界が遮られてしまっていた。もちろんこの地点からの景色も申し分ないものではあるが、こういう変化を見る度に、やはり林道は生き物なのだと思わされる。
 
 さあ、どんどん進んで行こう。場所によっては、すでに葉を落としきった木々が立ち並んでいるところもあるが、これはこれでいい雰囲気なんだよなあ。
 
 こんな、コンクリート吹き付けの法面が崩れているところも、なんだろう、今日は妙に味わい深く見えてくる。
 
 先程よりも徐々に陽射しは陰ってきてしまったが、周囲を彩る紅葉は、その空の下だからこその落ち着いた色彩を見せていて、このしっとりとした空気感がとても心地良い。
 
 暖色に染まる山の中に、ところどころに葉を落とした白い幹が浮かび上がる。この空模様と相まって、ほんの少しの物寂しさを感じさせるが、それもまたこの季節ならではの良さだと思う。
 
 谷を渡る地点で、なにやら変わった構造物があった。堰堤の天端と道を兼ねているもののように見えるが・・・?
 
 前方から振り返って撮影。前回来たときに見た憶えが全く無いのだが、最近になって造られたものなのだろうか。これだけのものがあれば嫌でも気づくとは思うが・・・。
 
 ふと思ったのだが、ここ、もし大雨が降ったときには、この谷を流れ落ちる水がこの天端に達し、洗い越しのようにこの路上を流れていったりするのだろうか?おおお、何か凄い景色になりそうだぞ、見てみたい!
 ・・・いや、そんな状況の中で、ここに来ること自体が無理だと思うけどね・・・。
 
 その先にも、再び先程と同様の堰堤道があった。
 
 その沢の周囲には、鮮やかな朱色に染まる木々が立ち並んでいる。うわあ、すごく良い雰囲気だなあ、ここ。
 
 11月の福島だというのに、今日は心配したほど寒くも無く、快適な空気の中を走っていくことが出来ている。これで昨日のような快晴だったらどれほど良かっただろうとも思うが、まあそれは言うまい(笑)。
 
 ふと、道の脇にひとつの石碑があることに気づいた。
 
 七ヶ岳線の開通記念碑だ。これも前回来たときはあまり気にしていなかったのか、その存在を忘れていた。石碑によれば、この七ヶ岳線の竣工は昭和63年、着工から13年を要したそうだ。
 
 そして、その開通記念碑を過ぎると路面の洗掘もほぼ姿を消し、非常に走りやすい路面が続くことになる。
 
 あ、この薄の茂る地点は前回も写真を撮ったからよく憶えてるぞ。
 そして、この正面にひとつの青看が写っているのが分かると思う。
 
 その青看で示されたのが、この右手に分岐する林道富貴沢線だ。ここは、前回来たときに先を急ぐ余りスルーしてしまったのだが、実はこの奥でかなり良い景色が見られるのだそうだ。ここのリベンジも今回の目的のひとつだ。
 
 七ヶ岳線との分岐からすぐに舗装路となっていたが、その先の最初のカーブを越えると道はダートへと変わった。おおっ、やったぜ!
 
 ・・・と思ったのも束の間、僅か100mほどでダートは途切れ、その先はずっと舗装になっていた。くっ、ぬか喜びしてしまったではないか(笑)!
 
 七ヶ岳線との分岐からは終始下り勾配となる道を進んでくると、突然前方の視界が開けた区間に入った。おおっ、この辺りが絶景ポイントか!?
 
 道の周囲は橙に染まる景色が広がっている。綺麗だなあ。
 
 前方には、岩肌の露出した稜線も見えてきた。かなり素敵な景色だ!
 そして、このすぐ先に見えているカーブを超えると・・・。
 
 突然幅員が3倍ほどに拡幅された地点に出た。おお、なんだここは?
 なんでもこの富貴沢線、観光目的(?)で舗装されたらしいのだが、マイクロバスなども通ることもあるらしい。もしかするとここは、それらの車両の転回用の地点なのかも?
 しかし、これだけ綺麗に整備された道にも関わらず、他に一切の車もバイクも見ることは無く、ただ静寂だけがこの空間を支配していた。
 
 道は高い木の無い斜面の中を延びているため、常に視界が開けた景色が広がっている。ここ、ダートだった頃に走ってみたかったなあ。俺が前回スルーしてしまった2013年がどうだったのかは分からないが、少なくとも9年前の2010年にはまだフルダートだったという記録が「XRで行こう」に残っている。あんな景色の中を走ってみたかったぜ・・・。
 
 あそこに見えているのは、南会津町の市街地だろうか。素晴らしくいい眺めだ。出来ることなら快晴の中でこの景色を見てみたかった。
 
 こんな開放感のあるストレートも最高だ。あああ、ダートのうちに走ってみたかったよおおおお!
 
 ある程度下っていくと、眺めのいい区間を過ぎて麓へ近づいて来たので、適当なところで引き返すことにした。
 
 七ヶ岳線との接続地点まで戻って来た。ちょうどここに張り紙があったのだが、それによると、この七ヶ岳線でオートバイのオフロードラリーが行われるのだそうだ。こういう催しが行われるということは、常日頃から道の整備もされているだろうし、そうそう通行止めになることもないんじゃないかって気がする。
 
 七ヶ岳線を更に進んでいくと、谷側の斜面が広く伐採された地点に出た。秋色の木々の中に、白い幹が程好いアクセントになっている。
 
 その斜面の向こうには、遠くの山並が水平に延びているのが見える。この広々とした空間に佇んでいることがとても気分がいい。
 
 こうして穏やかな路面が続き、何の規制もなく走れるところを見ると、関東であれだけ猛威を振るった台風19号も、この辺りまでは深刻な被害はもたらさなかったようだ。その台風19号の被害で埼玉近辺の多くの林道が駄目になって以来、正直な話かなり気持ちがしょげていたんだけど、今日この七ヶ岳線を走ることが出来て、だいぶ元気が出た気がする。
 
 七ヶ岳線もそろそろ終盤かな。国道側に向けて緩やかに標高を下げていく。
 
 すると、次第に周囲の紅葉が鮮やかになってきた。おおお!これは綺麗だ!
 
 位置的にはこの辺りがちょうど紅葉のピークだったのだろう。今日一番の素晴らしい発色だ。
 
 今年はあの台風以降、もう林道でこんな紅葉の景色を見るのは無理なんじゃないか、なんて思っていたので、これだけの鮮やかな景色を見ることが出来たことが本当に嬉しい!やっぱり福島まで来て良かった!
 
 その美しい紅葉の区間を過ぎて程なく国道289号に接続して、総延長16kmほぼフルダートの七ヶ岳線を走りきった。6年振りの実走となったが、以前と変わらず素晴らしいダート林道で、しかも今回は紅葉の景色も見ることが出来た。いやあ、楽しかったぜ!
 
 この七ヶ岳線、国道側からもこんな立派な標識で案内されているが、国道に面しているということは、こちら側が起点ということでいいのかな?
 
 さて、次はどの林道へ行こう?ここから国道を隔てた南側に、駒止湿原へと向かう林道があるようなので、そこに行ってみようか。
 
 そう思って入り口までやって来たのだが・・・。
 
 あちゃー、通行止めかあ・・・。通行止めの理由は書かれてはおらず、バリケードも道の半分だけを封じた緩いものだが、こうはっきり書かれちゃあ入るに入れないよなあ。そう思いながらこの場所の写真を撮っていると、この奥から1台の軽自動車が走ってきた。えっ、もしかして通れるの??いやいや、きっと地元の人だろう・・・そう思ってナノレカワはぐっと我慢したさ!クッ!
 
 さて、ここが駄目となったら・・・そうだな、もともと期待はしてなかったので全く下調べもしてこなかったのだが、ここから西に移動した先に、前回このエリアに来たときに通行止めで通れなかった林道があったので、駄目元ではあるが折角なのでそこへ向かってみることにしよう。
 
Aへ続く。