大嶽神社のオイヌサマに会いに行く
2022/04/09 東京都檜原村・大岳山-A
 
@はこちら。
 
 現在時刻12:00ちょうど。
 つづら岩の袂に延びる平坦な道を進む。ここから先はほぼ尾根道となるようなので、これまでのようなキツい登りはもうないだろう・・・。
 
 そりゃあ山なので多少のアップダウンはあるが・・・。
 
 この程度の登りは、先ほどまでの鬼の登りを経験した身にとってはもはやどうということはない!
 
 ここにも、先ほども見た「この先 道悪し」の看板が立っているが。
 
 こんな岩をよじ登っていくような場所なんて楽しくて仕方ないわい!久しぶりに山の中を歩くこの感覚が、絶好の登山日和のこの天気と相まってもうワクワクしっぱなしだ!
 
 と思ったら、その先の岩壁に、鉄製の階段が設置されていた。確かにこの箇所はこの壁を越えていくしかなさそうだが・・・。
 
 この階段、見たところ一応この場所に合わせて造られた物のようには見えるのだが、実際の岩壁の角度に合っていないのか、踏板の角度が微妙にかかと方向に下った斜めの状態になっていて、身体が後ろにそっくり返ってしまいそうでちょっとだけ怖かった・・・。
 
 その先も、緩やかなアップダウンの続く尾根道を歩いていると、タマチャリンさんが道の外を指さした。
 
 12:20。
 おお!あれがこれから向かう大岳山か!ここからはもう大きな高低差はなさそうに見えるが、タマチャリンさんが言うには、あの山頂の形状を見て分かる通り、最後に山頂直下でグンッ!と急激な登りが待っているそうだ・・・!
 
 そして、そのさらに右手に見えるのが御岳山だ。あの山頂に延びるケーブルカーで一気に登って来れば、そこから大岳山の山頂まで気軽に上ってくることもできるらしいが、あまり人が多いところでお手軽に登ってくるよりは、ここまで通ってきたようなコースを登ってくる方が個人的には好きだな。
 
 いよいよ目標地点をこの目に捉え、そこへ接近すべくさらに尾根道を進んでいく。
 
 12:33。
 少し広くなった平場に、テーブルや東屋がある場所に着いた。ここは富士見台だ。木に括り付けられた看板によれば、大怒田山の山頂でもあるらしい。
 
 ちょうどここに着いた時にはタッチの差で誰もいなかったので、無事にテーブルを確保!時間的にもちょうどいいので今日はここで昼飯だ!
 
 さて、本日のナノレカワの昼食はこちら。いつもなら山らーセットを持ってくるところだが、何故今日はこれになったのか、気になる人はタマチャリンさんのブログを参照されたし!
 
 東屋の壁には、ステンシルで標語を書いた看板が張られていた。このシリーズ、山では時折見かけるが、この標語は初めて見た気がするな。
 
 昼食を終え、再び先へと進む。先ほどの場所が大怒田山の山頂ということもあって、道は一旦下りとなるが、ここで下るということは大岳山に向かってまだ登って行かなければならないということ。あまり下らないでくれよ・・・。
 
 その先で登りに転じたところでは、こんな岩肌を進んでいくところも。これはめちゃめちゃ楽しい!山登りの中でも特にワクワクする!
 
 13:23。
 途中に立てられた道標には、大岳山まであと1.7kmとある。先ほど通過してきた、綾滝からつづら岩までの600mは、登っても登ってもいつ辿り着くとも分からないような時間だったが、つづら岩からの尾根道は大岳山までの距離がぐんぐんと縮んでいく!このペースで1.7kmなんてもうあっと言う間だよ!
 
 道の脇に祠が見えてきた。そして、そのすぐ先にある道標に従って、大岳山方面への道を登っていく。
 
 道沿いには丁目石が姿を現した。この丁目石は何丁目だったのか判読できなかったが、この先でも度々見かけることになる。いよいよ大嶽神社が近づいてきていることを実感する・・・!
 
 そして道は、それまでの尾根道から、急峻な斜面に延びる人ひとり分ほどの幅に変わった。うっまり足を滑らせればかなり下まで転げ落ちてしまいそうだ。
 
 その先で、鋭くえぐれた谷に沿って桟橋を掛けた場所に出た。ちょうど吹き溜まりになっているのか、桟橋上には落ち葉が堆積し、その下は岩肌の剥き出しになった深い谷となっていて、落ち葉に足を取られないよう慎重にならざるを得ない・・・。
 
 ただ、タマチャリンさんが言うには、ここを超えればもうすぐ大嶽神社に着くとのことだ。いよいよか・・・!
 
 その言葉通り、ついにこの目に鳥居を捉えたぞ!
 
 13:54。
 登山開始から4時間、大嶽神社の奥宮に到着した!ついに!ついにやってきたぞ!花粉によって大量生産される鼻水と戦いながら、よく頑張った俺!
 
 鳥居のそばに置かれている丁目石には「四十丁」と記されている。
 
 鳥居をくぐり、荒れた石段を登って本殿へと近づいていく・・・。
 
 その本殿の袂には、すでにオイヌサマが見えている!ああ、ついに来たんだ・・・!
 
 それではさっそくオイヌサマの姿を見ていこう。
 (ちなみに、檜原村では一般的に崇められる狼のことを「オイヌサマ」と称しているとのことで、本稿でも「オイヌサマ」表記で統一する。)
 まずは本殿向かって左側の像から。全体的にはシンプルなラインで構成された、狼のシルエットを極限までデフォルメした姿のように見える。この奥宮に奉納されたオイヌサマは、造形的には特に阿吽の違いは無いようだ。ただ、造形に全く違いが無いわけではなく、雌雄の性差が付けられていた。こちらの像は雌となる(以降、こちらを「雌の像」と称す。雄の像については後述)。
 
 雌の像を正面から。太さの均一な筒状の前脚が緩やかなカーブを描いて接地している。指も丸くデフォルメされたシンプルな形状で表現されている。
 
 右側面から。頭部から腰に掛けて、なだらかな曲線で結ばれた背部のシルエットが特徴的だ。円錐状の口吻からは、筋彫りによって表現された口の造形が耳元近くまで伸びている。
 ただ、シンプルな造形とはいえ、各部のディテールはきちんと表現されていて、頭部を正面から見ると、鼻の穴もしっかりと彫られているのが分かる。耳も単なる突起などではなく、エッジの立ったしっかりと耳の機能を意識させる造形だ。
 
 そして、このオイヌサマを実際にこの目で見て気づいたのが、目の上部に、眉弓にあたるアーチ状の造形があったことだ。これは写真で見ていたときには気づかなかったもので、全体的にはシンプルでなだらかな造形の中に、ここまで細やかな表現が成されていたことには正直驚いた。いやあ、やはりここまで来て良かった・・・!
 
 続いて本殿向かって右側の雄の像を見ていこう。先ほど左の像のときに触れたが、こちらの像は股間部分に雄の特徴が造形されている。この写真でもその特徴が分かるだろう(雌の像にはこれが無い)。
 
 少々ブレてしまったが、雄の像を正面から。性差以外には特に両方の像の造形に大きな差は無いが、やはりいちど気づいてしまうと股間の存在感がすごい・・・。
 
 雌の像の顔を正面から。こちらの方が、鼻先がやや細身な印象がある。そして、ごく僅かだが鼻先に反り返った形状をしているように見える。これは雌の像よりも顕著な特徴だ。
 
 眉弓の造形も、こちらの雄の像のほうがよりはっきりと分かるだろう。目の造形も、V字状に彫られた太目なアウトラインが、吊り上がった目の形状ながらどこか柔らかさを感じさせる。
 
 あろうことか、雄の像の真横の写真を撮りそびれてしまっていたので、横方向からの後脚のアップを。形状的には、膝を立てて前方に足先を立てたような造形だ。これを見たとき、素朴でありながら生命感のある造形に思わず唸ってしまった。実に良い・・・!
 そして、短めの尾は、こちら側左側面に向けて地面に沿って造形されている。
 
 ちなみにこちらは雌の像の後部だが、一見尾の造形は無いように思えたが、よく見ると尾の付け根にあたる部分に、尾があったのでは無いかと思われる痕跡のようなものが見られた。これはあくまでも想像だが、もしかしたら、身体から浮くように造形されていたものが折れて失われてしまったのかもしれない。
 
 台座の正面には、「宝暦九年四月吉日」と記されている。西暦で言えば1759年、今から263年(!)も前に奉納されたものだ。何でもこのオイヌサマは、日本で2番目に古い狼像とも言われているそうだが、それだけの長い年月を超えて、今でもこうしてしっかりと形を保っているとは・・・。
 
 ちなみに、本殿の周囲にはいくつかの石碑などもあったのだが、ぼんくらナノレカワはオイヌサマばかりに気が向きすぎて、それらの石碑などを一切写真に収めることなく下山してしまった!後日そのことをタマチャリンさんのブログにコメントすると、タマチャリンさんから写真を送っていただいた。すんませんありがとうございます!
 
 ひとしきりオイヌサマの姿を堪能した。実に素晴らしい像だった!そろそろ山頂に向かう支度を始めていたタマチャリンさんとまあもさんを尻目に、すっかりオイヌサマに見惚れてしまった。やはりここまで来て良かった・・・!
 さあ、せっかくここまで来たので、あと少し登って山頂まで行ってみよう。
 
 14:09。
 山頂に向けて移動を開始。
 
 この道、何だかとても雰囲気が良いな。踏み跡だけの登山道ではなく、しっかりと石を並べて階段や縁石が造られている。こんな登山道ならいつまででも登っていたい・・・。
 
その先で、急峻な岩場を超えていく区間が続く。
 
 以前タマチャリンさんがここを登ったときは、下りてくる人と登る人がここで通過待ちをしてちょっとした渋滞のような状態になっていたそうだが、幸いお昼時を過ぎていたためか、今この区間にほぼ人の姿はなく、スムーズに通過することができた。
 そして、その区間を過ぎると・・・。
 
 14:24。
 着いた!ここが標高1266.4m、大岳山山頂だ!
 
 昼時を過ぎたとはいえ、山頂は多くの人で賑わっていた。あれだけの急峻なコースを超えて、よくこれだけの人が・・・というわけではなく、ここにいるほとんどの人は御岳山のケーブルカー経由で登ってきた人たちだろう。俺たちが登ってきたコースでは、ほとんど人の姿は見なかったし・・・(下る人とは多少すれ違ったけど)。
 
 山頂からの景色をパノラマで撮ってみた(↑写真をタップすると拡大写真を開きます)。さすがに気温も高く遠くの山は霞んでいるが、青く晴れ渡った空の下で見る、山々の稜線が連なる景色は、ここまで登り切った後ではより一層の爽快感を持って胸に飛び込んでくる。
 
 そんな山々を眺めていたら、ふと山の斜面に1本の道筋が見えた。道沿いの斜面に段々の地形が見えていたので、タマチャリンさんと2人で「あれって鉱山ですかね?」なんて話をしていたのだが、帰宅後に地図を確認したらやはり鉱山だったようだ。こんな雄大な景色を前にしても、ついついああいう場所に目が行ってしまうんだよなあ(笑)。
 さあ、少し休憩したら下山を始めるとしよう。日が暮れるまでに下山できるかな?
 
Bへ続く。