武甲山のオオカミ
2023/05/27 埼玉県横瀬町・武甲山〜子持山〜大持山登山-@
 
 少し前に、タマチャリンさんがこちらのBBSで、「今日は武甲山登山をしようと思ってたけど天気のせいで断念した」という書き込みをされていた。武甲山と言えば、山頂にはオオカミ信仰の神社である武甲山御嶽神社があり、俺もいずれ訪れなければと思っていたこともあり、それならばご一緒しませんか、ということになり、タマチャリンさんまあもさん、ナノレカワのいつもの3名による登山と相成った。
 
 当日は朝8時に武甲山御嶽神社一ノ鳥居駐車場で待ち合わせ。8時少し前に到着するとタマチャリンさんはすでに到着していたが、それでも駐車場は満車で、駐車場から少し下った地点に停めていた。俺も駐車場の少し下の、ちょっとした空きスペースに停車して、後から来たまあもさんもその後ろに停めておいたところ、ちょうどこの日、ストリートビューカーがここを撮影したらしく、俺のBAJAとまあもさんのCRF(あけみちゃん)がバッチリ写り込んでいた!(上の画像はそのスクショ。)
 
 と、そんなこともありつつ、まずは一ノ鳥居の前にいる2対のお犬さまからチェックしていこう。
 ちょうどこの鳥居の前の地点が、林道二子線の生川側の起点となっていて、ここには過去、まだ二子線がバイクで走れた頃に何度か訪れていたのだが、ここに神社の鳥居がある認識はあったものの、その頃はオオカミ信仰などというものがあることなど露ほども知らなかった。この一ノ鳥居は来ようと思えばいつでも来れたものの、どうせ来るなら登山で山頂の神社も併せてと思っていたので、ようやくの対面となる。
 
 それではまず1対目のお犬さまから。こちらは鳥居向かって左手の阿形。全体的に骨ばった造形が印象的で、ニホンオオカミの特徴として語られる痩身体形がよく表現されている。そして、正面から見たときがより特徴的なのだが、頭部の造形が、左右の幅がだいぶ狭く表現されているのが分かると思う。
 
 そのせいもあるのか、目が正面ではなく外側を向いた造形となっていて、まるでジュラ紀の獣脚類恐竜を思わせるような顔つきとなっている。口の周りの毛並みのような表現も精細で、恐らく実在したニホンオオカミとは大きくかけ離れたであろう造形が、神獣としての存在感を感じさせてとても素晴らしい。
 
 そしてこちらが、鳥居向かって右手の吽形。こちらも阿形と同様の造形となっている。正面をじっと見据えた鋭い目は知性すら感じさせるほどで、こちらに対して何かを訴えかけているような錯覚を憶える。
 
 閉じた口から大きくはみ出した狼歯は、シャープな造形と相まってヒロイックな印象を与えている。耳は阿吽とも頭部の後方へ沿うような表現だ。
 
 台座には「昭和二年十月吉日」と記されていた。西暦で言えば1927年。ということは、あと4年で奉納100周年ということになる。その年になったらまたここを訪れてみようかな。
 
 続いて2対目のお犬さま。こちらは鳥居向かって右手の阿形。
 
 口を開けながらも、大き目に造形された牙が上顎、下顎それぞれに接しているのが印象的だ。
 
 そしてこちらが鳥居向かって左手の吽形。
 
 口を閉じることで、シンプル目な造形と相まって阿形と比べても、よりシャープな印象の造形となっている。阿形、吽形共に、吊り上がった切れ長の目元も印象的だ。
 
 そして、この2対目のお犬さまの最大の特徴と言えるのが、この前脚の造形だ。四角柱に形づくられたその表面に、筋肉を表したものだろうか、縦に真っ直ぐ延びる筋彫りが施されている。非常に珍しい表現で、神獣としての威厳を醸し出すことに一役買っている。
 これらのお犬さまたちも、後日「大神-オオカミ-の貌」のページに詳細を纏めたいと思う。
 
 鳥居の脇にはまといリスも鎮座していた。それではそろそろ出発しますか!
 
 本日のコースは、俺は何も考えていなかったのだが、せっかく上るなら武甲山〜子持山〜大持山の周回コースにしようということになった。タマチャリンさんは以前このコースを僅か4時間ほどで周ったことがあるらしいが、今日はどれくらいかかるだろうか。
 
 鳥居から少し歩くと小さな橋を渡るが、そこには「この橋より登山道です 車での進入はできません」と書かれていた。もっとも、ハイカーが多すぎて、この地点まででも車で来ることは出来ないと思う・・・。
 
 その橋を渡ると、道は一気に斜度を上げる。この脇に立つ建物と比較しても、どれだけ急勾配か分かると思う。ちなみにこの建物はカフェらしいが、時間が早かったからか、まだ開いている様子はなかった。
 
 道はしばらく沢沿いを進む。堰堤を流れ落ちる水の筋が良い雰囲気だ。
 
 道の脇に、生け簀とそれを管理していたであろう小屋があった。
 
 まあもさんによると、ここはイワナの養殖場だったらしいが、現在はもう養殖は行われてはいない様子で、生け簀の中にも魚影はなく、小さなオタマジャクシだけが無数に泳いでいた。
 
 ・・・いや、なんか1匹だけいるぞ!?でも、見た感じイワナではなくフナか何かっぽいな・・・どこからか紛れ込んだのかな。
 
 最初の橋から10分ほどで、登山道が車道と交差する地点に出た。って、あれ?ここ見覚えがあるぞ・・・?
 
 ああ、そうだ!ここって作業道生川線の起点だ!以前一度だけBAJAで来たことがあったっけ。そうか、ここからの区間で作業道と登山道が重複してるのか。
 
 ここから先も、作業道らしく結構な勾配で駆け上がっているが、以前BAJAで来た時に、この急勾配に怯んで途中で引き返したことがあった。それ以来訪れることも無かったが、現在の登山ブームでは、もうここにバイクで来ることはできないなあ・・・。
 
 急坂にヒーヒー喘ぎながら上ってくると、やがて路面が未舗装になった。
 
 そこから程なく、道が二手に分かれる地点に出た。登山道は直進し、作業道は左手にカーブし橋で沢を渡るようだ。
 
 ただ、本来であればこの橋の下を水が流れるはずが、多量の土砂や岩石で詰まってしまい、橋の上を水が流れ、実質的な洗い越しとなっていた。
 せっかくなので、この橋を渡ってみよう。
 
 橋を渡りカーブを越えてすぐ、路上にチェーンゲートが渡されているが・・・おおっ!?
 
 おおおっ!出た!社営林作業道生川線の標識!
 以前、この標識を見たくてBAJAでこの道を上がってきたのだが、結局これを見ることなく引き返してしまい、この標識のことはずっと心の中に引っ掛かったままになっていた。まさか今になってこうして目にすることができるとは・・・!思わぬ出会いに感動してしまったが、登山はまだまだ始まったばかりだ。
 
 この地点から振り返ると、登山道と分岐する直前の路盤が崩れているのが分かると思う。現状はここまで車両で進むことはできなくなっているが、もうこの先の作業道区間を利用するつもりもないんだろうな。きっとこの奥は、今はもう熊さんたちの楽園と化していることだろう・・・。
 
 ここから先は完全な登山道となる。
 
 眩しい陽が作り出す木漏れ日が綺麗だ・・・。
 
 途中、「武甲山御嶽神社」の標注が立っていた。その袂の丁目石はいつの間にか二十丁目となっていた。山頂の御嶽神社は五十二丁目となるらしい。気張って行こう。
 
 歩きながら、この先に大杉という木が立っているということを話していたのだが、もしかしてこれかな?
 
 ・・・いや、これは違うようだ。雷に打たれたのか、幹は半分に割れ、上部は焼け焦げていて、根元には石仏が置かれていた。
 
 その先、少し開けた場所に本当の大杉が立っていた。おお、これはまさに「大杉」と言うべき杉だ。
 
 いや、実際すごいなこの杉は・・・。思わず見惚れてしまい、ここで少しの休憩を取った。
 
 再び歩き出す。丁目石は四十丁目を示している。すでに山頂まで半分以上の道のりを上ってきた。
 
 道の周囲は、整然と並んだ杉に囲まれている。きちんと枝打ちされているのか、木々の間を縫って降り注ぐ陽に照らされた景色がなかなかに美しいが、ここは花粉の時期に訪れることは出来ないな・・・。
 
 そういえば、ここを歩いていて気になったのが、道の中に点在する岩の表面が、不自然に抉れたり溝のように来れたりしているものが多く見られたことだ。武甲山を構成する石灰岩は、柔らかく雨水で溶ける性質があるようなので、長い年月の間に樹上から滴り落ちる雨水などによって浸食されたのだろうか。
 
 途中、登山道から少し反れた斜面に、苔生したズリ捨て場のような場所があった。まあもさんとタマチャリンさんがそこへ向かって歩き出したが、俺はここまでの登りで結構ヒーヒー言ってたので、ここから見るだけに留めておいた(笑)。
 
 見上げると、稜線が近づいてきたのか、木々の向こうに明るい空が見えてきた。
 
 丁目石は四十八丁目。山頂まではあと少しだ。景色が明るくなると丁目石も映えるね(笑)。
 
 おおっ、建物が見えてきたぞ・・・!
 
Aへ続く。