三峯神社 - Page①
 
 埼玉県のオオカミ信仰の総本山とも言える三峯神社。その表参道から妙法ヶ岳山頂の奥宮にかけて、数多くのお犬さま像が点在しています。それらお犬さまのバリエーション豊かな姿の数々を見ていきます。
 
三峯神社 大輪表参道鳥居
 
 国道140号沿いにある大輪表参道鳥居。ここから表参道へ入ります。
 
 鳥居を潜ってすぐに1対のお犬さまが置かれています。
 
 参道の進行方向向かって右手が阿形。しなやかな曲面で構成された、豹のような体形が特徴的です。
 
 正面から。口吻がかなり細めです。
 
 頭部もネコ科の動物のような姿に造形されています。うねるような耳の表現も見事です。
 
 背面。体形はネコ科動物のようですが、ニホンオオカミの特徴のひとつであるあばらの造形はしっかりと成されています。
 
 参道の進行方向向かって右手のこちらが吽形。阿形同様、俊敏そうなスリムな体形が印象的です。
 
 正面から。角度的にたまたまなのか、このアングルの吽形の顔はイヌ科の動物らしさを感じます。
 
 よく見ると、瞳が筋彫りで表現されているのが分かります。
 
 太目な尾は、後脚に沿うように前方に向かって造形されています。お犬さま像としてはスタンダードな造形だと思います。
 
 爪もひとつひとつがはっきりと彫られていますが、脚の内側にノミの痕と思われる筋が残っているのが興味深いです。
 
 台座には、阿形に「奉」、吽形に「納」の文字が彫られ、共通して「高崎開運講」と書かれています。
 
 荒川に架かる登竜橋を渡った正面の斜面の上に、次のお犬さまがいます。かなり高い位置にあるうえに足がかりなどもないため、近づくことはできません。
 
 向かって右側が阿形。手前に石碑が立てられているので、姿を見られる位置が限られます。
 
 向かって左手が吽形。ここからでも細く形づくられた前脚やあばらの造形などが判別できます。
 
 頭部を拡大すると、切れ長の目や、阿形の口の中には細かく彫られた歯も見られます。間近で見てみたいですね・・・。
 
 そのお犬さまの地点からすぐ先に石灯籠がありますが、この脇の斜面の上にもお犬さまが1対置かれています。
 
 見上げる角度でしか見ることができませんが、精悍なオオカミの姿がよく表現されているのが分かります。
 
 頭部をアップで見ると、口の中の歯や、髭や口の周りの皺などが精細に表現されているのが見て取れます。これも近くで見てみたいですね。
 
 参道を登り切った、奧宮遙拜殿前の鳥居。この両脇の石垣の上にお犬さまがいます。
 
 こちらは鳥居に向かって右手の像。左手の像に比べてやや口を開いているように、おえるのでこちらが阿形でしょうか。こちらの像は、ちょうど手前にシャクナゲの木があって、その姿を写真の収めるのが難しかったです。
 
 こちらが鳥居向かって左手の吽形と思われる像。阿形共に、全体的に丸みを帯びたどっしりとした力強い体形として表現されているのが印象的です。
 
三峯神社 三ツ鳥居
 
 三ツ鳥居の前に1対のお犬さまが置かれています。
 
 鳥居に向かって右手のこちらが阿形。実在したオオカミというよりも、眷属としての存在感に重きを置いた神獣のような姿に表現されているのが特徴的です。胴体よりも太く表現された首の造形などもその印象に一役買っていると思います。三峯神社のお犬さまと言えばこちらの像を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
 ちなみに、このお犬さまとほぼ同じ姿をした像が、寄居町の釜山神社の参道に奉納されています。同じ石工の作であったり、何かしら関係があるのでしょうか。
 
 頭部のアップ。石工の想像力に全振りしたと思われるデザインが素敵です。釜山神社のものは口の中が紅く塗られていましたが、こちらは風雨で剥がれてしまったのか、その痕跡は見られませんでした。
 
 このお犬さまの最大の特徴である、胴を覆う段段に形作られたあばらの表現。神獣らしさを強く感じっ瀬ます。
 
 尾はストレートな形状で前方に向かってやや台座からはみ出すように作られています。
 
 鳥居向かって左手のこちらが吽形。
 
 頭部の各パーツも、釜山神社のものとほぼ同じ形状です。
 
 爪もシャープに造形されています。
 
三峯神社 随身門
 
 随身門の前にも1対のお犬さまがいます。
 
 門に向かって左手が吽形、右手が阿形です。背の高い台座の上に置かれています。
 
 阿形の全身。全体的にどっしりとした肉付きの良い体形ですが、それでもあばらの表現があるのが分かります。
 小さめに表現された目が、まるで爬虫類を思わせる異様な迫力を湛えています。
 
 頭部側面。頬にある毛並の表現が印象的です。目と口、耳の中に彩色が施されています。
 
 全身を右側面から。奧宮遙拜殿や三ツ鳥居のお犬さまにもあるような型の筋肉の造形が、力強さをより強く感じさせます。
 
 吽形の全身。阿形同様、重量感のある姿となっています。肉厚な眉弓が表情の迫力を増しています。
 
 頭部側面。正面から見るよりもシャープさが増す印象です。彩色は阿形同様です。
 
 全身を左側面から。現地では気づかなかったのですが、改めて写真を見ると、爪にも彩色が施されているようです。
 
 参拝順路の途中にも、参道を挟むようにお犬さまがいます。
 
 左手に吽形、右手に阿形という配置です。こちらも背の高い台座の上に置かれています。
 
 向かって右手のこちらが阿形。シェパードを思わせるようなスマートな体形が印象的です。
 
 体正面から。胸元に毛並の表現があるのがわかります。
 
 頭部のアップ。眉弓や顎に施された毛並の表現が特徴的です。耳は上に向かってピンと立っています。
 
 お尻の部分に、長めの毛並の造形があります。お犬さまではあまり見たことのない珍しい表現な気がしましたが、同様の造形が茨城県筑西市の三峯神社のお犬さまにも見られました。
 
 そして、こちらの阿形の像には乳首の造形が成されています。阿吽の像に性差を持たせた像はたまに見ることがありますが、いままで見てきたそれらは、どれもオスの性器で表現されていました。このように、メスの特徴で性差を表したものは初めて見ましたが、非常に珍しいのではないでしょうか。
 
 向かって左手の吽形。全体のプロポーションは阿形と同様です。
 
 体を正面から。阿形には乳首で性差の表現がありましたが、こちらの吽形にはオスの特徴の造形はありません。
 
 吽形の頭部。歯を剝き出しにした阿形よりも穏やかな印象です。
 
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