新たなる旧タイプ林道標識発見!その名は”林道城山線”!
2015/05/30-@ 埼玉県皆野町・林道城山線〜林道城峰奈良尾線・他
 
 今からひと月ほど前、TKさんからこちらのBBSに、一つの報告がもたらされた。
 それは、新たな旧タイプ林道標識の発見、という驚くべきものだった。
 
 『旧タイプ林道標識』とナノレカワが呼んでいる標識とは、埼玉県内では比較的ポピュラーな、国道標識と同型であるオニギリ型の林道標識に酷似しつつも、それらよりも古い時代に製作されたもので、現時点で埼玉県内に22路線(現存しないものも含む)が確認されている。更には、このタイプはナノレカワが把握している限りにおいて、全国でも埼玉県内でしか確認されておらず、現在では非常にレアな存在となっている。
 2013年に新たに発見された上野山線の時点で、もうこれ以上は現存する旧タイプ標識が見つかることは無いだろう、と思っていた(そもそもあの状態の旧タイプ標識が発見されたこと自体が奇跡的だった)のだが、まさか今になって未知の旧タイプが見つかるとは、これはもう衝撃以外の何物でも無かった。
 その報告を受けて、今すぐにでもその旧タイプの捕獲に向かいたい衝動に駆られたが、前回は大ドッケダンジョンに向かってしまったこともあって、本日ようやくその旧タイプ標識の元へ向かうこととなった。
 
 ここは県道270号線の路上・・・だったかな?忘れちゃった(笑)。このあと県37〜県284と走り継いで目的地へと向かう。
 
 所変わってここは県道284号線。道の脇を流れる沢が、陽を浴びてきらきらと輝きとても綺麗だが、そうか、ここはこれでも県道か・・・。
 
 そのまま県道を上ってくると皆野町の上日野沢地区に入る。ここから分岐するのが林道城峰1号線だ。この城峰1号線の道沿いに、目的の旧タイプ標識が立っているとのことだ。
 ここで、写真にも写っている、おそらく夫婦の自転車乗りの方に、城峰神社への行き方を聞かれた。城峰神社へは、このまま城峰1号線を上って行けばいいのだが、久しぶりに訪れたこともあってそのことをすっかり忘れてしまっていて、俺の持っている版のツーリングマップルにも城峰神社は書かれておらず、ここで3人でしばらく「ウーン・・・」となってしまった(笑)。
 
 起点から進み始めてすぐに、分岐する道の脇に古ぼけた青い林道標識が立っている。
 
 「林道城峰線」と書かれたこの標識。この城峰1号線の峠に至る道の途中にいくつか点在していて、存在自体は以前から知っていたが、この道が城峰1号線となる前の旧名だと思い、あまり気に留めることも無かった。
 
 この建つ標識は、たまたま分岐地点に有る為に、この分岐する道が「城峰線」の起点のようにも見えるが、この道は集落を抜けて再び先程の県道に戻る道だし、この城峰1号線の更に先にもこの「城峰線」の標識は立っているのでそれは無いはずだ。
 ・・・はい、さっさと先へ進みますね(笑)。
 
 昨日の雨が嘘のように晴れ渡った空の下を進んで行く。初夏の空気が清々しく、梅雨に入る前のこの時期って、こういう山の中を走るのには何気に一番良い時期だよなあ、なんてことを考えながらのんびりと走るが、陽射しが強く光と影のコントラストが強すぎて写真が上手く撮れない・・・。
 
 そんな陽射しの中を、起点から1km程進んでくると、TKさんの報告にあったと思わしきヘアピンカーブが現れた。おお、ここか、と思い周囲を見回すと・・・。
 (↑写真にカーソルを合わせて下さい。)
 
うおっ・・・。
 
い、いたっ・・・!
 
これが、新たなる旧タイプ林道標識!
 
林道城山線だっ!!
 
 旧タイプ林道標識として23例目の発見となる、この城山線の標識。色々とツッコミたいことはあるのだが(笑)、まず、この標識の立つ場所。道の分岐地点などではなく、単なるカーブの手前、しかも路肩のちょっと奥まった杉林の中にひっそりと立っている。当時の何かしらの管理の都合上によるのだとは思うが、こんな道、どう見たって当時からただの一本道だとしか思えないのだが、ここを起点とすることにどんな理由があったのだろう。こんなの普通に走ってたらまず気付かないって!TKさん、よくこんなの見つけたよなあ。
 それに、この標識に書かれた「城山線」という路線名。古くは平将門の伝説が残るという城峰山(正しくは「城峯」山らしい)へと向かう道が、何故素直に「城峰線」では無いのか。先程も見た、これよりも新しい年代の青い「城峰線」の標識が同じ道沿いに存在することは、そのことに何か関係しているのか。
 そういった謎について、現時点では一切の答えを持たないが、いずれそういったことが何か一つでも解明されたときは改めて報告したいと思う。
 
 その表面は、面積のほぼ全てを錆に覆われ、全ての旧タイプ標識の中でも上野山線に次ぐ程の風化の進行具合となっている。その風合いから、恐らくは旧タイプ標識が製造され始めた最初期(昭和30年代中頃と思われる)のものだと思うが、それでも部分的に本来の色である緑色の塗料を残している。
 
 それにしても、こんな状態でありながらもよくぞ今の時代まで残っていてくれたものだ。もしかしたらこの路線の管理者にもすっかり忘れ去られているのかもしれないな(笑)。それが本当かどうかはともかく、道から少し奥まった場所に立っているというそのことも、今まで撤去されることなく残っていたことの理由なのかもしれない。
 これからもこの城山線の標識は、ずっとこの場所に残されてほしいと切に願う。これは林道界における”重要文化財”なのだから!いやマジで!
 
 城山線の標識の立つ場所を、カーブの外側から眺める。標識の錆びた色が、またいい具合に杉林にカモフラージュされてるんだ。忍者かよ。
 
 城山線の標識の、道を挟んだ向かい側には、先程も見たものと同じ「城峰線」の標識も立っている・・・、いや、最早「立っている」とは言えないな・・・。
 
 そのすぐ脇に立つ、結構古そうな保安林の看板にも、この道は「城峰線」と書かれている。こんなところからも城山線の旧タイプ標識がどれだけ昔のものかが伝わってくるようだ。
 
 そして、繰り返すが、今回城山線の旧タイプ標識が見つかったのが、道の分岐地点などではなく、単なるカーブの途中であったということを考えると、もしかすると他にも、こいうった場所で未だ誰にも気付かれることなく、ひっそりと立ち尽くしている旧タイプ標識がどこかにいるのかもしれない・・・。
 
 ひとしきり旧タイプ標識の姿を堪能した。ここで撮った写真は後程旧タイプ林道標識のページにたっぷり纏めるとして(笑)、更にこの先へと進むとしよう。
 
 それにしても、旧タイプが新たに見つかるって、やっぱりテンション上がるなあ。写真を撮ったりしながらかなり長いことあの場に留まっていたけど、その間にさっきの自転車乗りの方に追い越されちゃったよ(笑)。
 
 で、今日はこの城峰1号線自体は、以前も走っているし特に触れることなく終わろうと思っていたんだけど、こんな景色を見ちゃうとどうしてもシャッターを切られずには居られなかったワケで。息苦しい程に木々の緑が溶け込んだ空気をかき分けて進んで行くと、その空気が自分の身体の隅々にまで沁み込んでいく。
 
 やっぱりこれも林道を走る醍醐味だよなあ。路面こそ舗装だけど、そんなことが関係無いくらい素晴らしい景色だ。
 
 更に高度を上げて行くと、路肩に視界の開ける地点が現れた。
 
 広々とした盆地の向こうに、武甲山が青白くそびえている。この辺りの林道を走っているとよく目にする光景だが、秩父が地元と言う訳でもないのに、この景色を見ると何だか気持ちが落ち着く。まあ、埼玉という大きな括りで見れば地元と言ってもいいかも知れないけど(笑)。
 
 城峰1号線の起点から5km程上ってきたところで、左手に神社への分岐が現れた。ああ、思い出した!城峰神社ってここのことだ!このあと再びこの道を下っていくときに、さっきの自転車乗りの夫婦とすれ違ったので、ちゃんとこの先に神社があることを伝えておいたよ(笑)。
 
 この神社への分岐地点にも、この「城峰線」の色褪せた標識が残っている。この道が城峰1号線となった今でもこの標識を残しているのには、何かしらの理由があるのだろうか?
 
 この先をあと数百m進むと、林道上武秩父線に突き当って城峰1号線は終わるのだが、そこまで行っても結局、旧タイプの城山線についての手掛かりのようなものは何一つ見つけることは出来なかった。
 
 城峰1号線を引き返し、せっかくここまで来たので途中で分岐する林道城峰奈良尾線を走って行こう。
 
 この城峰奈良尾線、西側の奈良尾線へと抜ける総延長4.1kmが未だフルダートで残る貴重な林道だが、幅員もそれほど広くは無く、周囲も草木に覆われる場所が多く、かなり狭苦しい印象だ。ここなどは道のすぐ脇にコンクリート吹き付けの法面がそびえているので、尚更そういう印象が強い。
 
 路面の中央には雑草が生い茂り、道の両脇からも草木が迫り出している。全般的に見通しも良くないので、仮に対向車がいても気づきにくい箇所が殆んどだ。とりあえず今日は1台のバイクともすれ違うことは無かったが・・・。
 
 なんてことを言っている矢先、うっかりコケそうになって思わず停車。
 
 ここ、写真では分かり辛いと思うが、路面の中央に生える草の真ん中で、結構深めな溝が掘れてしまっている。それに気付かずに轍を横断しようとしたところ、うっかり溝に嵌ってバランスを崩したというわけだ。こんな罠が至る所に仕込まれているので、ここに行く人はホント注意してね・・・。
 
 でも、こういう岩盤が剥き出しの路面はかなり好き!
 
 周囲は鬱蒼としながらも、時折見える青空はとても清々しい。
 
 ・・・でも、大部分の場所はやっぱりこういう雰囲気なんだけど(笑)。周囲に押し寄せる木々の葉の圧にむせてしまいそうだ。
 
 それでもやはり、ダート林道は良い。ガタガタ道を走るだけのことが、何でこんなにも楽しいんだろう。
 
 城峰奈良尾線も終盤に差し掛かり、この林道で一番視界の開ける場所に出た。とはいえ、それほど大した気色が見られるわけでもなく、終始草木に覆われ鬱蒼とした林道ではあるが、それでも延長4.1km全線フルダートの貴重な林道であることには違いない。この様子を見る限り、ここが舗装化される心配はしばらくは無いと思うが(笑)、この先で接続する奈良尾線も年々舗装の距離が延びているので、まだ訪れたことの無い人は今のうちに走っておくといいかもしれない。
 
Aへ続く。