@はこちら。
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県道361号線をそのまま進み続け、皆野町と寄居町の境にある釜伏峠にやってきた。
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続いての目的地は、ここ釜山神社だ。
この釜山神社、秩父地方に数多くあるオオカミ信仰の神社のひとつで、狛犬がオオカミを象ったものになっている。この参道入り口にも1組のオオカミ像が見えているが、この釜山神社には、奥の院までに全部で8組のオオカミ像があるのだそうだ。
最近、ニホンオオカミに関する本を読んで秩父のオオカミ信仰に興味が出てきたこともあり、ちょうど今日の第1目的地の栗和田林道の先にこの釜山神社があったので、そのオオカミ像を見に来たのだ。
以前、この釜伏峠に来たときも、ここに神社があることは認識していたのだが、それがオオカミ信仰の神社だったなどとは露ほども思わなかった。というか、その頃はオオカミ信仰というものがあることすら知らなかった。
(ちなみに、オオカミの狛犬をそれと意識して見たのは、去年4月に訪れた小鹿野町の龍頭神社が最初で、今回で2社目となる。)
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それでは早速順を追ってオオカミ像を見て行こう。
参道入り口にあるこのオオカミ像は、実に写実的な姿をしている。台座には「征露紀念」と書かれているので、明治37から同38年のうちに奉納されたものだろう。
この像は、かなり高い位置にあるので、正面からの写真を撮るのが難しく、このアングルとなってしまったが、向かって右手のこの像はちゃんと口を開けて「阿」になっているのが分かる。
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対するこちらの「吽」の像だが、見ると右半身に大きなヒビが入ってしまっている。ウェブで釜山神社を調べたときに見た写真では、このような状態になってはいなかったように思うので、最近になって壊れてしまったのだろうか。
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こちらのものはサイズ的には小振りなものだが、やはり生物としてのオオカミを写実的に捕らえた、躍動感溢れる造形でなかなかの存在感がある。こちらもよく見れば右手の像が微かに口を開き、ちゃんと阿吽になっているのが分かる。
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こちらの像も、台座には「明治丗七(37)年」と書かれている。先程の狛犬と同時期に奉納されたのだろう。
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こちらは先程までの狛犬よりもだいぶ新しいもののようで、台座には「昭和聖旨五十年記念」と書かれている。造形も、前2つの狛犬のようなオオカミとしての写実的な姿というよりは、眷属としての存在感に重きを置いた神獣のような姿をしている。
ちなみにこの像とほぼ同じ姿をした像が、秩父市の三峯神社にも奉納されている。同じ石工の手によるものだろうか。
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この像は奉納年代が不明だが、造形から見てそれなりに古いものだろう。こちらの「阿」の像は後ろ足がレリーフ状になっていて、若干製作途中のように見えなくも無いが、そんなところもまた味わい深い。
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そして対となる「吽」の像だが、前足が損壊してうつ伏せの状態となってしまっている。こちらも写真でこうなっているものは見たことが無かったので、このような状態となってしまったのはきっとつい最近のことなのだろう。何とか補修されて欲しいものだが・・・。
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こちらは恐らく、オオカミの狛犬としては最も新しいと思われるもので、平成14年に愛子様の誕生を記念して奉納されたものらしい。その姿はというと、一応この釜山神社に奉納されているということはオオカミなのだろうが、これはちょっとどう見てもただのワンちゃんにしか・・・。
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そしてそのすぐ奥に、鳥居と社殿があるが、その鳥居の手前に、6対目のオオカミ像がある。
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こちらの像も相当古いものと想われるが、その造形は、動物としてのニホンオオカミを写実的に表したように見える。
ニホンオオカミの骨格の特徴として、眉間の額段が無くてなだらかなことが挙げられるそうだが、それでいうとこのオオカミ像も造形的にはかなり実物に忠実と言えるのではないだろうか。
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鳥居をくぐり、社殿へ。
この釜山神社、宮司さんが高齢のため、現在社務所などはやっていないという話は聞いていたのだが、社殿の中の雪洞には灯りが点され、きちんと祀られていた。
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そして、この社殿に1対の木彫りのオオカミ像がある。7対目となるオオカミ像だが、ここまで見てきたものと比べてだいぶコミカルな造形に見える。
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社殿の脇からは、更に奥へと進む道が続いている。ここだな、最後の1対のオオカミ像がある奥の院へと至る道は。
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登山道というには余りにも穏やかな道を進む。この先をずっと進んでいくと日本水というところに至るらしいが、とりあえず今日はそこまで行くつもりは無い(笑)。
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それにしても今日は本当に寒いな。この空の色からもそれは伝わると思うけど、余りの寒さに手がかじかんで来て、思わずポッケに手を突っ込んで歩いてしまった。山歩きにはあるまじき行為だと思うが、こんな穏やかな区間だから出来ることだよ・・・。
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おおお、だいぶ下っていくみたいだけど、どこまで続くんだこの下りは?
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とはいえ、時間にすれば2分にも満たないうちに下り区間は終わり、再び登りへと転じる地点に鳥居が立っていた。ここが奥の院の入り口か。
そしてその手前には東屋もある。ちょうどいい、戻ってきたらここで昼飯にしよう・・・。
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鳥居を潜ると、道は一気に急峻な斜面を登って行くようになる。
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ってか、これは一体どこを登っていけばいいんだ?右手にチェーンの柵があるので、とりあえずあれに沿って歩いてみるか。
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その急峻な岩場の登りも、2分ほど歩くと穏やかな稜線上の道へと辿り着く。すると・・・。
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これが、標高582mの釜伏山山頂に祭られた、釜山神社の奥の院だ。
なだらかな稜線の上にひっそりと佇むその姿が、厳粛な空気を醸し出して実に良い雰囲気だ。ここ、凄く好きかも。
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そして、ここに鎮座するのが、釜山神社の8対目、最後の1対となるオオカミ像だ。造られた年代的にも、他のオオカミ像の中でも特に古いものなのではないかとは思う。
途中で見てきたオオカミ像の中には、神獣のように造られたものもあったが、このオオカミは、あくまでも自然に生きる動物としての姿を忠実に写し取っているように見える。実に素晴らしい造形だ。
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ちなみにこれは、上野の国立科学博物館の地球館に展示されているニホンオオカミの剥製だ。これを見ると、奥の院のオオカミ像がこの剥製と酷似しているのが分かる。これは想像だが、まだ秩父地方にニホンオオカミが棲息していた時代に、本物のオオカミを見知った石工が、その姿を忠実に再現したものなのではないかと、そんな気すらしてしまう。ニホンオオカミが絶滅、つまり最後の固体が確認されたのが明治38年(1905年)のことなので、時代的にもじゅうぶんあり得る話だとは思うのだが、どうだろう・・・。
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狛犬も相当に素晴らしいものだが、この祠にも実に味わい深い彫刻が施されている。
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祠の向かって左側面に、オオカミの姿が彫られているが、その姿は狛犬のようにかしこまった姿勢ではなく、躍動感溢れる自然の生き物として描かれている。
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対してこちらは向かって右手側面。これは親子だろうか、愛くるしくじゃれあう2頭のオオカミの姿が実に活き活きと描かれている。明治時代頃までは、この地方の山の中においてはごくありふれた光景だったのだろう。
今日は狛犬を目当てにここまで歩いてきたけど、実に良いものを目にすることが出来た。
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奥の院の裏手に回り、裾野に広がる景色を見る。明治の頃までは、この釜伏山の周辺にもニホンオオカミは棲息していたのだろうか。
奥秩父の山では、現在でも時折ニホンオオカミではないかという動物の目撃情報が上がっている。あれだけ山深い地域なら、もしかしたら・・・という期待が沸くのも分かる(実際、俺もそうあって欲しい、とは思う)が、この山頂の真下を、皆野寄居バイパスの美の山トンネルが貫いている現在の釜伏山の環境下では、オオカミの現存はさすがにあり得ない話だろう・・・。
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ともかく、この奥の院は本当に良い場所だった。参道に立ち並ぶオオカミ像が、さながら博物館のような趣なので、それらを見るためだけに歩いても実に楽しい。今日は生憎の曇り空となってしまったが、これから新緑が芽吹く頃、晴れた日にまた訪れてみたい。
参道の入り口からここまで、狛犬を眺めながらのんびり歩いても20分少々と、気軽に歩くことが出来るので、興味があれば是非訪れてみることをお勧めする。
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奥の院を後にして、東屋で昼飯。このシンガポール風ラクサ味、すげー好きなんだよなあ。ちょっと調べたらもう生産が終わるらしく、めっちゃ残念・・・。店頭では全然見ないけど、通販ならまだ買えるっぽいから今のうちに確保しておくかな。
と、ここで食事していたら、釜山神社の社殿方面から一人のおじさんが歩いて来た。まさかこんなところで人に会うとは思わなくてちょっとびっくり。どうやら登山っぽかったけど、日本水まで歩くのかな?
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社殿まで戻って来ると、先程は見かけなかった、地元の方と思われる親子連れが、社殿にお供えをしてお参りをしている最中だった。ちょっと話を聴いてみたい気持ちもあったが、お参りの最中ということもあって、こんにちは、と挨拶するだけで、それ以上話しかけることを躊躇してしまった。
この写真は、その社殿の下にある社務所だが、先にも書いたとおりここの宮司さんが高齢のため、現在では開けていないそうだ。社殿も、もしかして先程のあの方達が管理しているのだろうか。その辺りも含めて話を聞きたかったなー。あー、人見知り発動して躊躇したことをちょっと後悔・・・。
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それじゃあそろそろ引き返すとしようか。釜山神社、本当に良い場所だった。また天気の良い日に再訪しよう。・・・花粉の治まった頃にでも(笑)。
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この釜山神社で見られるオオカミの狛犬、特に年代の古いものは造形的にも味わい深く、実に楽しく見ることが出来た。今年はツーリングの目的地に、オオカミ信仰の神社を選んでみるのも良いかもしれない、なんて思った。今はオオカミ信仰について語るほどの知識は何も無いが、これからそういった知識を蓄えながら各所を巡って、いずれはこのサイト内に纏めてみたいものだ。
さーて、本日の目的は2つとも果たせたぞ。気温は相変わらず寒いけど、せっかくここまで来たんだ、戻りがてら幾つか林道でも走っていくかな。
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Bへ続く。
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