天目山林道リベンジ! - 本線編 -
2018/05/27 埼玉県秩父市・天目山林道-A
 
@はこちら。
 
 現在時刻、9:54。去年の最奥到達地点である15kmのキロポストを通過した。終点は徐々に近づきつつあるはずだが、ひたすら上りを続けていると、未だその実感は沸いてこない。
 
 路肩に立つカーブミラーは、その表面がすっかり褪せてしまい、まるで使い物にならなくなっている。元々このパーツが安物だったのか、それともここがそれほどに過酷な場所なのか、それは分からない。
 
 15km地点から7分程で、15.5kmを通過。そして、このキロポストを越えて程なく・・・。
 
 現在時刻、10:04。やったぞ!遂に峠に到着した!出発から約3時間半、ひたすら自転車を漕ぎ続けて上って来たこの時間が長かったような短かったような・・・。
 ちなみにこの場所、9年前に始めて訪れたときには知らなかったが、「大クビレ」と呼ばれているのだそうだ。
 
 ここからは大平山へと至る登山道が続いている。帰ってきてから改めて調べて知ったのだが、その大平山山頂まではここからあとほんの数分で着く距離らしい。事前に知っていれば、帰りにでも立ち寄ってみても良かったな。
 
 そして、この大クビレからは、9年前には存在していなかった作業道が延びていた。あ、さっき見えた作業道はここからの続きなんだな。
 まあ、俺は行かないけどね!この先が気になったそこの作業道マニアのあなた!よろしく頼みましたよ(笑)!
 
 そして、休憩もそこそこに先へと進もう。何故なら、ここから先の区間はほぼ下りとなるはずだ。つまりそれ自体がもう休憩みたいなものだからな(笑)!
 
 重力に任せて軽快に下って行くと、あまりの気持ち良さに大クビレまでの行程とは全く異なる時間の流れを感じる。
 
 もっとも、今こうして快適に下るということは、その分帰りに大クビレまでの上りが待っているということなんだけどね(笑)。まあ、今はとにかく終点に到達することだけを考えよう。
 
 そのまましばらく下り続けて、ふと周囲の景色が開ける場所に出た。大クビレから少し下って現在の標高は1、500m前後だろうか、前方に見えている稜線との高低差も僅かで、この写真だけ見るとそれほど高い場所にいるようには見えないかも知れない(笑)。
 
 現在時刻、10:17。まだ真新しさの残るガードレールの立つ地点に着いた。
 
 実はここ、今では何事も無かったかのように綺麗に復旧しているが、9年前に来たときに、崩落によって路盤が流失していた場所だ。ただその時は、山側に人が通るには問題ない程度の僅かな路盤が残っていたので、構わず進んでいったのだが、ここを境に自転車の通行が困難な程に路面が荒れ始め、その先に再び現れた崩落によってそれ以上の進行を断念していた。
 今回はこの先にもそのような箇所は全く見られず、前回引き返すきっかけになった崩落の場所がどこだったのかにも気づくことなく進んでいった。
 
 現在時刻、10:20。流れ込みが注ぐであろう路肩の淵に、雪が残っていた。今日の全工程のなかでこの1箇所だけではあったが、言っても秩父の市街地に程近いこの場所で、この時期までこれだけの雪が残っていることに驚いた。4月の頭にここを往復したヨッキさんが「残雪がキツかった」とツイートしていた程だし、今年の積雪は余程凄かったのだろう。
 
 現在時刻、10:22。沢水の流れる微かな音が響く谷を通過。ここには大久保谷という名が付いている。道を横断する排水溝の中から蛙の鳴き声が聞こえてきたのでその姿を探してみたが、結局見つけることは出来なかった。
 
 現在時刻、10:24。快適な下り走行でうっかり見落としそうになったが、視界の片隅に入ってきたモノに気づいて急ブレーキ。
 
 おおお!天目山林道の銘板!遂に!遂に見つけたぞ!!
 ここにあるのは、昭和60年度の新設工事区間の起点を示すものだが、9年前に来たときは、崩落で引き換えした地点までには銘板が存在しなかったため、今回終点を目指すに当たって、この銘板を見ることも目的のひとつだった。いまこうしてこの目で見ることが叶い、めっちゃ興奮しております(笑)!
 
 そして、この銘板を見つけたということは、つまり今いるこの場所は、既に初めて通る区間に突入したということだ!おおお!来たぞ来たぞ!
 
 現在時刻、10:28。沢に沿って倒木が折り重なった場所があった。あまりに印象的な光景に、少しの間ここで足を停めてしまった。
 
 そこからすぐ先の地点で、2つ目の銘板を見つけた。
 
 こちらは昭和61年度、先程の銘板の翌年のものだ。
 
 うおっ、なんかヤバそうな岩が法面に寄り掛かっているぞ。
 
 こんなものが路上に倒れて来たりでもしたら、また片付けるのも大変そうだが、現状は意外とこれで安定しているようだ。ただ、ちょっと大きな地震でもあったらどうなるかは分からないけど・・・。
 
 現在時刻、10:31。ここでも視界の開けた地点が。太陽に照らされ、空気に霞む山々の連なりが実に美しい。
 
 路肩に自転車を停め、その景色に見惚れていると、ふと手前の稜線と奥の山肌が重なる視線の先に、その山肌に付けられた作業道らしき道筋があることに気づいた。うはは、すげえな。あんなところにまで作業道を造るなんて。
 
 ・・・って、ん?ちょっと待って、あの線形には見覚えがあるぞ?
 
 あ、あ、あれって・・・。
 
大ドッケダンジョンじゃねぇか!!
 
 嘗て、その存在に打ち震え、一度はそこを踏破しようと目論んだ、あの大ドッケダンジョンが、今こうしてふいに目の前にその姿を現したことに、大きな衝撃を受けた。
 (「大ドッケダンジョンって何?」って人は、是非こちらを参照していただきたい。)
 
 そういえば、今の今まですっかり忘れていたのだが、以前大ドッケダンジョンについてのページを公開した後で、山旅DIARYの管理人である仮面林道ライダーさんからこちらのBBSに、この天目山林道から見たあの道の写真を載せて頂いていたことがあったっけなあ。俺はもう、あの大ドッケダンジョンには踏み込まないと決めてしまったのだが、それでも今こうして、嘗て恋焦がれたあの道の姿を、やはり恋焦がれ、ようやくここまで訪れたこの天目山林道の路上から己の肉眼で見ているということに、何とも言えない不思議な気持ちにさせられた。
 
 そんな、胸がムズ痒くなるような驚きを感じつつ、更に進んでいくと、少々広くなった路肩に枯れた大木を積み上げた、印象的なカーブに着いた。
 
 ここで写真を撮ろうとしていると、ちょうど太陽の光を遮る位置に雲が漂ってきてしまった。どうせなら明るい日差しの下で撮りたいと思い、少しの間ここで待機していたのだが、生憎ほぼ無風の空に浮かぶ雲は、その僅かな身を移動させるにもかなりの時間を要すると見えて、とりあえず写真はそこそこに先を急ぐことにした。
 
 今いるこの場所は、相変わらず雲が影を落としているが、谷を跨いでその向こうに並ぶ山肌には日が射しているのが見えている。頭上の雲も、まだ天気を崩すような心配はいらないだろう。
 
 ここから見た遠くの斜面には、これから進む道の続きが見えている。終点まではまだもう少し掛かるようだ。
 
 ふと、斜面の中にコンクリートブロックで大掛かりに擁壁を組んである場所があった。下の方には僅かな流れ込みが見えるが、それによる侵食を抑えるためのものだろうか。
 
 その地点の路肩に、1台のパワーショベルが停めてあった。コレ、ここまで自走してきたのか、凄いな・・・。
 
 路肩から見える大ドッケダンジョンは、先程よりも近づいているように見える。
 
 カーブで切通しを越える地点で、その向こうに広がる空が印象的だったので思わず1枚。
 
 その切通しを越えたところから、路面に生える下草が多くなっている。さすがにここまでの距離となると、関係者の車両ですらそう頻繁にはやって来ないということを物語っているようだ。
 
 現在時刻、10:46。この切通しの間は、全工程の中でも珍しく路面がぬかるんでいた。
 
 その土の上に、偶蹄目の爪痕が残っていた。姿は見えなかったがさっきも鹿かカモシカの気配を感じたし、今日は起点近くではたくさんの猿や雉を見かけた。林道での野生動物って、見ないときは全く目にしないけど、見るときは立て続けに見掛けるのは何なんだろう(笑)?
 
 その切通しのすぐ先で、3つ目の林道銘板を見つけた。
 
 こちらは昭和63年度、ひとつ前のものから2年後のものだ。この後にもうひとつ、平成2年度のものを見つけ、全部で4つの銘板を確認することが出来た。こんな場所まで再び訪れることが、またあるかどうかも分からないから、しっかりと写真に残しておかないと。
 
 そこから5分ほどで、またしても前方の路肩に視界の開ける場所が見えてきた。あのカーブを超えた先では、かなりの景色が望めそうだ。恐らくは終点までの距離も、もうそれほど残ってはいないはずだ。気合い入れて行ってみよう!
Bへ続く。